66話 りんごジュースでゆうしょう
「・・・んで、晴れて無罪放免となったお前は今から、第三騎士団で飯を食うわけだ。もしよければその時か、その後にでも思い出話をしようじゃないか。」
「それは良いけど・・・名前。」
「ああ、お前じゃなくてミニっ子の方が良かったか?・・・いやしかし、ミニっ子はもう『ミニっ子』につけてしまったから───」
「──フラガリア!あたしの名前!・・・あと、ミニっ子とかミニガキとか言うけど、あたしはこれでも十四だぞ!」
「そうか。・・・十四はまだミニガキのような気もするが、これは失礼した。これからは『リアちゃん』と呼ばせてもらうことにしよう。」
「ちゃん付けするな!・・・・・・リアでいい。」
「・・・そうか。」
──────────
───と、いう風に支部の玄関をくぐり、吸血鬼の少女フラガリア=エリッドウェーを包んでいた暗雲が一通り去ったところで、時間は少し前に巻き戻る。
場所は王城付近の屋外パーティー会場、有権者との会合などそういった雰囲気のことに利用される第一騎士の所有地だ。夜の静寂を豪華絢爛に塗りつぶし、第一、第二、そして第三騎士団も含めた人々の、賑やかな声と声が交わり合っている。
「これも・・・・・・これも、おうじのめしと、いいしょうぶ。りんごジュースでゆうしょう。」
「ほんとだね、メモちゃん。・・・王子さん聞きました?あれだけ安い食材で第一の三ツ星シェフといい勝負なんて、中々やるじゃないですか。」
「ははは、メモ君に喜んでもらえるように、頑張った甲斐があったみたいだね。・・・そういえば団長は、・・・いたいた。凄く綺麗な女性と話しているみたいだ。・・・アメミヤ君も混ざって、三人で一枚焼いてきたらどうだい?その写真を見たら、彼もきっと喜んで───ぐふッ!!」
「・・・妙な事言ってると殴りますよ。」
「既に殴ったじゃないか・・・。まあでも確かに、彼は人を見た目で決めないからね。」
「無頓着っていうか、自分には関係ないと思ってるだけですよ。・・・ああいう人は、放っておけばいいんです。」
「でもれーこ、はやくかえってこいって───」
「──言ってない。」
陽気も陽気、騎士団対抗戦前の交流会は毎年、このような喧噪の中に囲まれるのだ。ただその活気の正体は、闘争心であったり、緊張であったりするわけで、つまり各々が胸に隠しているものを少しだけ顕在化させる場所が、この騎士団対抗戦前合同交流会なのである。第三騎士団の一行も例にもれず、実は先ほどの会話も、昂る神経を沈めきれなかったことの現れだったのかもしれない。
「ミア第一騎士団長!」
「・・・アイリス第三騎士団長。初めての交流会は、楽しめていますか?貴方はいろんな意味で規格外ですから、このような催し物は珍しいでしょう。」
「はい!・・・それで、なんですが・・・。」
この二人の会話は、周りの認識としては才色兼備の剣姫たちによる楽し気な会話、というものになっているのだが、遠くから見惚れている者すらもいる中で、第三騎士団長は額に汗を浮かばせながら言った。
「この間は連れがご無礼を働き、・・・ええっと、ごめんなさい!」
「ッ!!・・・けほっ、けほっ!」
「大丈夫ですか!?・・・その、あ、これ飲んでください!」
彼女が慌てて差し出したものを第一騎士団長ミアが流し込んで、再び麗しき剣姫たちの会話が立て直される。
「あの一件の男性の方でしたら、もう既に話を聞きました。貴方が謝ることはもうありませんよ。・・・・・・」
言い終えて、ミア団長は足元の芝生に目を落とす。確かアイリス団長は、あの男が仇名付きとして、主に自分に追われていることを知らないはずだ。奴も彼女に話を通してはいないようだし、ややこしい事になるよりかは、穏便に事を済ませた方が良いのだろう。
と、そこまでは正常な判断をしていた、はずなのではあるが。
「・・・・・・ミアさん?お顔が少し・・・赤いような?」




