56話 きちんと見つけだせる
「撒いたか。・・・にしても毎日飽きもせず、器用に見つけてくれやがるよ。」
総会の幹部である忍者と会ってからというもの、俺は総会の反応を待ちながら街を飛び回り、何も知らない第一騎士団長に追われる日々を過ごしていた。
「・・・っと。よおミニガキ、迷子か?」
「うえっ、だ、だれだお前は!!」
強気に出る少年、しかしその目には疲労感と少しの涙が残っている。第一騎士団長の貴重な時間を独占してしまっている詫びとして、俺はこのような奴らを見つけては手を貸すという、騎士も同然の慈善活動に手を染めていたのである。
「誰でもいいだろ?・・・お前に、大好きな人とはぐれた時の必殺技を教えてやろう。」
「ひっさつわざ・・・?」
「まず一つ、落ち着け。・・・・・・落ち着いたら、思い出す。大事な人の顔が見えなくなったのは、いつからだった?」
少年はゆっくりと深呼吸し、そして口を開いた。
「さっき、あっちのふんすいで遊んでたときに、草むらに鳥がいて、それで追いかけてきて、そしたらお母さんが・・・おかあさんが見えなくなって・・・おかあさんを探して走ってたら、もっと遠くにきちゃって、それで、そこで転んだら血が出てきて・・・ぅう・・・!!」
「そういう時の必殺技だろ?ほら、もう一度深呼吸だ。・・・そんでお前、街を護る騎士団長の何がスゴイか、分かるか?」
「・・・すごい強くて、わるものをやっつけるところ?」
「それもあるが、本当にすごいのはそこじゃないかもしれないな。」
俺は先ほどまでの逃走劇を思い返しながら、半ば愚痴のようにこぼした。
「・・・あいつらは、きちんと見つけだせるのさ。・・・空の上の太陽も、迷子のお前も、しめーてはいはんの俺も、な?───」
「──見つけ、ました・・・!!」
「ほらな、見つかった。・・・最後の必殺技は、広いところに行くでもして、見つけてもらう準備をすることだ。それが済んだら、おやつでもつまんでいればいい。」
少年の目を見て言い終えた瞬間、即座に駆け出してその場を離れ、犯罪者に戻った俺は捨て台詞に声を張る。
「そいつ、向こうの噴水広場で探してる母親のもとに連れてっちゃくれないか。すりむいてる膝には、これでも塗っておけばいい。いくら俺にぞっこんだからといって、迷子のガキ放っておくわけはないよな、ミアだんちょ?」
「っ──!!」
団長の方に振り向いてポーションを放り、彼女が動揺しつつも受け取ったことを確認してから走り去る。
いくつか角を曲がり、ミア第一騎士団長の射程圏内を離れた辺りで、俺はようやく安堵のため息をついた。
「お前、デマ掴ませやがったな。取られた罰金の分、どう落とし前つけてくれるんだ、アア!?」
「わ・・・、悪いことしようとしてる人の手助け、するわけないでしょ・・・?」
場所は団子屋の路地裏、ごついあんちゃんと細身の男、ガラの悪い二人組に詰められているのはご存じ、俺が世話になっていた情報通の少女である。あるだけの勇気を振り絞ったと思われる彼女の足は、震えて今にも崩れ落ちそうだ。
「おい、あんま調子乗んなって、なァ。」
男は冷ややかな威嚇と共に、少女の肩を掴んで握り締め、壁面に叩きつける。
「痛っ──!!」
「どうせ生きて帰れるとか思ってんだろ?・・・もうキレたから、お前殺すわ。」
「──いやぁ・・・!助けて、誰かぁ・・・!!」
細身の男が取り出したアーミーナイフ、恐怖に身体中を震わせた彼女は、こらえていた絶望の涙を頬に伝わせる。その刃はゆっくりと彼女の首筋に近寄っていき、弾むように唸るのどぼとけの手前まできたところで、ピタリと止まった。
「あ?」
「どうした・・・?って、なんだ、これ・・・。」
「動け・・・ねえ・・・・・・!!!」
時間が止まったかのように、二人の身体は全く動かない。
「ぇ・・・・・・え?」
少女はその瞬間、影の中に異質な黒を見る。
「──さて。・・・俺が地獄の道連れにするのは、お前達で良かったか?」
それは紛れもなく、かつて自分の塩辛い団子を美味しそうに食べていた、目つきの鋭い重罪人の姿だった。




