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54話 気づかなくちゃならないようだ

それからは聞きたい放題、食事の場で彼を囃し立てながら、ありとあらゆる情報を引き出せるだけ引き出した。流石総会と言うべきか、その慎重さは予想通り凄まじいものであり、フッと湧いて出たような俺の加入申請については、忍者の彼がゆっくりと掛け合ってみるらしい。


「・・・直接お頭さんの顔でも拝みたかったんだが、まあ今日のところは大人しく引き下がるとしよう。」


「我が主君については、幹部の私ですら御顔を拝見したことはない。が、貴殿の聡明さは責任をもって報告しておこう。」


「・・・助かるよ。ちなみに、俺の罪状については全く変更する必要がないから、差し支えなければそこも伝えておいてくれないか?俺はこの身に宿す邪悪が制御できなくなれば、喜んでこの命を差し出す覚悟だ。保身のために総会の荷物を増やすような真似はしたくない。」


「・・・!!貴殿の覚悟、しかと受け止めた・・・!俺もこうしてはおれぬようだな、ではさらば!」


俺の言葉によって火が付いた様子で、そいつは透明化しながら飛び去っていった。数秒後、人の気配がなくなった辺りは風もやみ、沈み始めた日の光が照らすのみの抜け殻となる。俺は少し歩いてようやく、達成感と疲労感の混合した息を吐く。


「この身に宿す邪悪が制御できなくなる、ね。・・・制御なんかしたことないのに、よく言えたもんだな、俺は。・・・だがあいつも、早めに気づかなくちゃならないようだ。」


落ち着きを持ったように見えて、意外と感傷的な人物は多い。そういった奴が燃やす正義が虚偽だということは無いが、感情的に動くと空回りしやすいというのは、おそらく事実だ。俺のような卑怯者からまんまと入れ知恵されてしまったところを見る限り、奴が同じような手法で総会に上手く使われている可能性は非常に高いだろう。いやまったく、本質を見失う落とし穴というのが、人間には多すぎるのだ。


馬鹿の視野は当然狭いが、それを見下す馬鹿じゃない奴の視界も曇っている。現実も常識も正義すらも、絶望と紙一重だ。と、俺は相変わらず入り組んだ暗闇の路地裏で思いつつ、それでも綺麗な空を見上げた。


「・・・いやしかし、初日から大金星じゃあないか。この調子であと一ヶ月弱、せいぜい好きにやってやるさ。」───



──────



──────────



「訓練やめ!!・・・・・・皆さん、お疲れさまでした。」


少女の号令と同時に、甲冑を着た兵士たちは統率の取れた動きで集合する。


「今日はね!ミアだんちょが、きしだんたいこうせんのメンバーを発表するよ!!」


壇上に立つもう一人の少女が声を張ると、その場の一同は活気づいて歓声を上げる。ルーン式のメガホンを構え、第一騎士団長ミアは一歩前へ出た。



「こほん。・・・今回の騎士団対抗戦も前回同様、五人一組のチームに分かれたトーナメント形式です。」



兵士たちは騒然とする。



「ルーン武器を使った一対一の模擬戦を行い、相手を場外もしくは戦闘不能にすれば一勝、先に五勝したチームの勝利となります。」



分かり切ったルールを再度説かれ、真剣に聞く者もいれば、選抜の時を待ち望んでそわそわし出す者もいた。だが、次に彼女が放った一言によって、その空気は凍り付くこととなる。



「なお、敗北さえしなければ闘い続けることが出来るので、最後の一人が全員倒して逆転勝利、というようなこともあります。」



漂う緊張感の原因は、その場にいた皆の脳裏に刻まれた、一人の少女の姿だ。



「持久力がカギとなるチーム戦に、一人規格外な猛者がいたこと・・・去年の対抗戦を見ていたあなたがたは、忘れてはいないでしょう。」


勝利した兵士は、他の兵士が闘う間に身体を休めるのが定石だ。だがあの少女は、そのような作戦は陳腐な小細工だと言わんばかりに単騎で連戦、そして連勝していたのである。圧倒的な実力と、無限の持久力。畏怖をこめて付けられた二つ名は『一騎当千の単独騎士団』、たった一人でチーム戦に出場して実績を残すことなど、誰一人として想像できなかったのだ。


「ですが今回は、去年のような大惨事が起こらないためにも、『五人揃わない限り出場不可』という追加ルールが課せられました。一人相手に負け続ける醜態を見せては、民衆は何処に信頼を置けばいいか分からなくなってしまいますからね。」


この言葉で、兵士の大半は胸を撫で下ろした。


「・・・大まかなルール説明は以上です。ではこれから、人々の模範となる実力を持った、選抜騎士を発表します。」


再び歓声が上がり、兵士たちは勝利への希望を抱える。


しかし、ミア団長含む一部の実力者たちは理解し、そして闘志を熱く燃やしていたのである。



人々を護るために一人で騎士団を創り上げてしまう程の彼女は、このようなルールに折れる玉ではない。

さらに四人の仲間を引き連れて、彼女は必ずやってくるのだ、と。

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