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50話 生きてるだけでイレギュラー

「・・・へえ、『騎士団対抗戦』ねぇ。その大掛かりな戦いごっこに向けて、団長はこれから仲間集めと訓練に励むわけだ。」


奇跡的に鉢合わせた第一騎士団長から逃げ切った俺は、その後奇跡的に鉢合わせた第三騎士団長と共に街道を進み、総会側に上手く丸め込まれてしまったことやら、騎士団対抗戦についての説明やらを一通り聞き終えたところだった。


「そうなんだけど・・・仲間集めの方が、どうにも上手くいかなくって・・・。」


団長は眉を下げるが、彼女が騎士団員の募集を手際よく行えるとは、俺ははなから思っていなかった。というのも、彼女が人を「選ぶ」ときの基準は、容易に見極められるものではないからだ。仮に「強い人を連れて来い」と言われたとして、世間一般の価値観では猛々しい大男のような者が選抜されるような場合であっても、彼女が指名する人物はやせ細った少年であったり、優しさ以外なにも褒めるところのないような少女であったりするのだろう。


「・・・いや、大丈夫だ。偉そうなことを言えた口じゃあないんだろうが、多分あんたのやり方は間違っちゃいない。一人も集まらなかったとしても、気にすることなんてないだろうよ。」


「失礼なっ・・・!いくら下手とは言っても、私だってそれなりに頑張ってるんだから・・・。あの中で、ちゃんと集めた人たちが待ってるから!」


彼女はそう言って、門に囲まれた広大な敷地、その中心に大きく構えられた屋敷を指さす。どうやらここが、第三騎士団本部にして、団長が拠点としている場所らしい。敷地内は殺風景ではあるものの、大勢の騎士たちが鍛錬を積む場所としては全く差支えないだろう。門から屋敷へと伸びる石畳、その付近に点々と植え付けられた花々を眺めながら、俺は団長の横について歩く。


「・・・そうか。早とちりして悪かったな。今は何人集まったんだ?」


「そっ、それはぁ・・・。」


俺が期待の意味を込めて聞くと、急に声が小さくなった彼女は、尻込みしながら玄関の扉を開けた。




「ーーで、この見覚えのある面子以外は、誰も連れてこられなかったんだな?」


「・・・うぅぅ、おっしゃる通りです・・・。」


両開きの木製扉の奥で待ち受けていたのは、ロビーにあるソファー付近でくつろいでいたミニっ子、雨宮、王子の三人だった。団長が集めた騎士団員というのは、まさに彼らのことであり、第三騎士団長が街に出向いて探した結果は、釣りで言うところのボウズとなっていたようだ。


「・・・まあ、それに関してはどうにでもなるだろうし、全く問題はない。・・・差し当たり一番の問題点は、王都の第三騎士団長様が指名手配犯の俺を、こんなところに匿っていることなんじゃないか?」


「・・・それは・・・。」


団長の話によれば、俺との関係性が表沙汰になるのは立場上危険だと、そう総会に嗜められた彼女は、それについては納得していたがために、渋々俺という人物の隠蔽を了承したらしい。奇妙な二つ名をつけられた俺が総会から命を狙われていることについては、どうやら伝えられていないようであるが、彼女の性格を考えれば容易に頷ける話ではある。


そして、俺が彼女の元に辿り着くことは、おそらく総会側は想像もしていなかったのだろう。事実、俺に送り込まれた刺客、特に桃髪蒼眼の第一騎士団長は、小賢しい小蝿を一匹殺してしまうのには十分過ぎるほどの投資だったように思う。


「生きてるだけでイレギュラーとは、俺も上り詰めたものだよ、全く。・・・それじゃ、俺は大人しく自宅に帰るとするかな。」


俺はそう言って踵を返し、入ってきた玄関へと歩き始める。お人好し四人組の健康的な笑顔を拝めただけでも、今日は大金星だ。と、そう思っていた俺の肩を、後ろから伸びてきた手は力強く掴んだ。


「待ってくれ!!・・・その、・・・なんだ。・・・ご飯だけでも、食べていかないか!?」


能天気な台詞を吐いて引き留めんとする王子の必死な表情は、俺が感じていた責任感が馬鹿らしく思えるほどには、愉快で痛快なものだった。






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