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27話 どうせ何処かに基準がある

ミニっ子に追加のお留守番を言い渡し、俺は結界をすり抜けて外に出る。


(上位錬成で強引に骨をつなげようと思ったが・・・なんだぁ?この猛烈な忌避感は。)


魔法自体に拒まれているような感覚が襲い、どうにも魔法を使う気が起きない。こいつは魔法を発動させている精霊の仕業なのだということは、感覚的に理解できている。が、その理由に見当がつかない。魔法を使って人を殺すことも出来るのだから、今更安全のためと言われても納得できないだろう。まさか俺の身を案じているわけでもあるまいが、とにかく、生き物の肉体に使おうという気は全く起きない現状だ。木材と死んだ皮膚ができるのだから、その理屈なら骨も行けると思ったんだが・・・


「魔法ってのは、つくづく不可解なものだ。・・・あぁ構わないさ、どうせ何処かに基準がある。それに俺は今、どうにも負ける気がしないからな・・・。」


誰に対してでもない悪態をつき、俺は肩を掴んで首を鳴らしながら階段に足をかける。段差を降りるたびに折れた骨を軋ませるにしても、麻酔もなしに人体実験を行うにしても、痛みの大きさは同じようなものだ。・・・そう落胆したところで、階段の中腹に目立つように置いてある包帯とポーションが目に留まった。


「おいおい、これで最後だってのにな。・・・っはは、毎度やってくれるよ、あんたって奴は・・・!」


即座に処置を施し、ワイシャツのボタンを留めることもせずに階段を駆け下りる。ステップ走法も躊躇なく使って足を速めたつもりだったが、靄が立ち込める王宮の廊下はここまで長かったということに、今になってようやく気付いた。結界のために体力の大半を費やしていたはずの団長は想像以上に速く、そしてその消耗した団長にコテンパンにやられた俺は、俺の想像以上に遅かったというわけだ。正直言って、情けない限りだ。


──衝撃音が鳴り響く。窓からは見世物のように、中庭で激しく衝突する化け物が見えた。あの風圧なら団長が再び瘴気を吸うことはないと予想できるが、空元気もいいところの俺が参上したところで英雄の登場とは程遠く、猛獣バトルに小鹿を放り込むようなものだろう。直線の廊下に目を向けると、それはさらに長さを増していく。華美な装飾が施された廊下に舌打ちした俺は、いかにも高価そうな陶器を睨みつけた。


「・・・王宮の装飾品か・・・情けない限りだが、芸術品が傷つくのはあまり見たくないってな・・・!」───




───「くぅっ!・・・アメミヤちゃん、やっぱり強い・・・!!」


「・・・その程度ですか。第三騎士団長という肩書も聞いて呆れます。もうそろそろ、とどめをささないとみたいですね!!」


「っやば───」



──痛烈な音を響かせて、窓ガラスが砕け散る。窓枠に足をかけた俺は、割れたての陶器の破片を放り捨て、少し背の高い木の中に飛び込んだ。


「よっ──。・・・っと、体もしっかり動くし、こいつは行けるな」


おあつらえ向きの枝に手をかけて、そのまま着地する。


「あっ!!・・・やっときた───きゃあっ!!」


「団長!!・・・悪い、遅くなった。こっから先はガチで任せてくれて良いから、そのままじっとしてな。・・・・・・ってなわけだから雨宮、選手交代だ。さっさとやられて戻ってこい」


入れ違いの形で戦闘不能になった団長を背に庇い、赤く光る雨宮の瞳を睨む。吹き飛ばされた靄が重なり合って日の光を遮断し、瘴気の結界に飲まれているようだ。辺りには二人の闘った痕跡が、綺麗に整えられたはずの庭園にこれでもかと刻まれていた。砕け散る石像や大理石の柱を見る限り、およそか弱い女子同士のの引っ掻き合いとは程遠い、壮絶な闘いが起こっていたことが分かる。しかし、雨宮や滅茶苦茶になった中庭の何処にも、剣によってできるはずの傷跡は存在していなかった。


「団長、あんたはつくづく、そういう奴だよ。・・・さて、ここからが正念場だ。」


「・・・なに?今の動き。まるで、あそこに枝があるって元々分かってたみたいな──」


「──よく見てる、なッ!!」


「しまっ──!・・・・・・って、一瞬触れただけじゃ発動しないんだ。」


威嚇歩で音を立てずに近寄り、雨宮の腕を掴むのを試みたが、彼女は即座に飛び退き、大きく距離を取った。


「実は数秒必要なんだ、不便だよな。」


「ふーん・・・・・・。それならっ!!───」


余裕の表情を持ち直した雨宮は、目つきを刃物のように尖らせて突っ込んでくる。瞬きをする間に数メートルもの距離を詰めた彼女は、目にも止まらぬ速度でライダーキックを打ち込み、



「──見えてんだよ・・・!」


「なんでっ、うわぁっ!!!」


紙一重で躱した俺に足を掴まれ、背中から芝生の上に叩きつけられた。

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