おお、神様よ
「貧しい国に、水を与えてください、食べ物を恵んでください、寄付を募っています」
ある貧しい国からやってきたシスターは、とても裕福な国を訪れ、募金活動をしていた。
その声を聞いて止まる者は少なく、募金箱にいれるお金もつり銭のようなもの。
それでも
「ありがとうございます。寄付をしていただき、ありがとうございます。募金はICカードでも行なえます。ぜひ、募金をお願いします」
感謝の言葉を送る。
現場活動も忘れないシスターさん。
貧しい国を援助するため、この国へ。こんな自分を招待してくれた、とある会社に入って
「あー、マジでやってらんねぇーわ。シスターごっことか、マジキツイっての」
「お似合いでしたよ。キャムさん」
「伊賀!私はこんな事をするために来たわけじゃないのよ!!」
お偉いさんのいる部屋でタバコを吸い、ご馳走のレアステーキを食いながら
「日本観光をするためよ!旨い飯、平穏な治安、平和ボケした馬鹿共の国で遊ぶため!!」
「ああ、偽善者団体の一員の1人がこんな面を見せるなんて、悲しい世の中ですねぇ~」
「お前がそこに金にやってんでしょ」
募金額など、鼻息で吹き飛ぶような額だ。本当の金ってのは、伊賀が持っているメタリックなスーツケースごと持って来てくれるのだ。
「はい、いつも通り。1億円と武器の試作品です」
「ん~~。これこそ、募金って奴よね」
「献金と言います」
1億円あれば、どれだけの事だろう。1人の一生で稼げる金額かどうか。
そんなケースを持ち歩きながら、日本を観光するキャム。……もちろん、その観光費などはスーツケースから取り出されているものではない。
貧しい国の人達が、必死に貧しさと戦いながら集めたお金から出すのだ。
◇ ◇
水を買って欲しいお金、食べ物を買って欲しいお金。
貧しい国の人々に分け与えるため。
ジャガッ
それらのためだと言っていたお金は、銃となり、弾となっていた。
貧しい国の人々に与えるのは、怒りと憎しみ。
蟷螂の卵を模したかのように、人々達が争いを続けて、最後の数人が生き残るまで続けること。
銃で人を撃て。物を奪え、金を奪え。怒りと憎しみで世界と戦え。
パァンパァンッ
貧しい国の銃撃は止まない。彼等はそれしか知らずに、生きているからだ。
「やがて彼等がテロリスト、スパイになるわけか、伊賀」
「大事に育てるというのは、中々できないですよ。テロリストの場合、才能が必要です。スパイの場合、揺るがない忠誠心が必要です。ダーリヤさん」
この国に金を与えている、裕福な国達の人間が視察に来ていた。
貧しい国が豊かになる事を望んでいるわけじゃない。貧しい国が、支援国にとって有益になる事を望んでいるのだ。例えば、敵国に侵入する優秀なテロリスト。情報を盗むスパイ。
「平和になったら困るじゃないですか。侵略し放題ですよ」
「それは一理あるな。巨大帝国になったとしても、内部から崩れることは歴史からよく分かる事だ」
「ある程度、敵というのは残しておくんですよ。肉食動物は、獲物を全て狩りません」
「人間が肉食動物なら可愛いものだな」
今日も今日とて、貧しい国は貧しい国だ。
銃を配られ、人を撃つ。その人の物を奪う日常だ。
自分の弱みを見せるな。自分に牙を向ける奴は殺せ。脅せ。屈するな。
爆弾を覚えろ。薬物の味を覚えろ。女の味を知れ。殺す快楽を纏え。命を軽くみろ。
年に数万の命を散らし。数百万人が身体に銃弾を浴びる。
できるだけ、人が死なない銃を作れ、渡せ。生き残った者達がまた銃を手に、誰かを撃ってくれるんだから。