さらなる深みへ
「えっと、どうして急に言葉が?」
先程まで舞い上がっていたがそれはそれだ、落ち着こう、彼女にクールでカッコイイところをぜひ見せたいものだ
…まぁ手遅れだろうけど
いくつか疑問がある
ひとつは言葉が通じるようになったこと、それもどうやら双方向に伝わっている
一度死んだから?
なにか特別な力?
彼女の努力の成果?
まぁ特別な力だろうが、ゲームの世界だしな
そしてゲームの世界というのは
死んで、生き返った理由にもなる
リスポーンだ
正直この体が死んで、生き返ったとして同じなわけがないだろうが
スワンプマンやらテセウスやらが頭をよぎる
少なくとも現実的に構成された体ではなく、ゲームの世界、この世界のルールによって構成された体ではあるだろうな
まぁ現実的に構成された体ということについて知識はないのだが…
例とするなら細胞かドットか的な感じだろうか
…あぁ、いいや、この話やめ!
「んと、【魔法をかける】をヤッタノ」
「…うん?なんて?」
「【魔法をかける】」
「あ、聴き取れない……えんちゃんとって聞こえるんだけど」
「ウーン?」
言語を完全に翻訳してくれる特殊な力という訳では無さそうだ
えんちゃんと、エンチャントの意味は魔法をかける、だったかな
…魔法か、確かになんでもできそうなイメージはある
現実的ではないがゲームの中なら有り得るだろう
ぜひ仕組みとかを知りたくなるものだが
「…えと、じゃあ次
キミは、死んでなかったかい?」
もうひとつ
先に少し触れたが、リスポーン、彼女は死んでしまったはずだが、今こうして生きている事だ
つまり、生き返る方法があるということになる
それはゲームならではのプレイヤー特権だ
気力が持つかは別としてゾンビ戦法が可能になったり、デスルーラ、死んで拠点に帰る方法をとったりと戦略から探索まで幅広く応用が利く
心臓を矢で撃ち抜かれても発狂しなかったから気力も通常よりも保てるのかもしれない
「ウン、しんだよ、ヨウガンにおちテ」
どうしてそこで笑顔なのか
ニカッといい笑顔だ
ほっぺたを抓りたくなるほどには
「フニっ!?ふぁにぃー??」
…かわいい
「生き返れるのか?」
「いきかえる……アレ、さわったデショ?」
アレと指さされたのは壁際に浮いている…「コクヨウセキだよ」黒曜石らしい
淡く光ってるけど?
触ったというか触らされたというか
「アソコでとうろくすれば、ソウイウモンだよ」
「…そう、なんだ」
そういうもんと言われたらそうなんだろう
ゲームで言うセーブ地点…か?
「あとあと」
「ウン」
「砦に似たような女の子達がいたわけだけど」
「あー…ァー…」
そして彼女の正体、並びに砦にいた女の子もどきとの関係だ
見た目がおなじなのだ、何かしらあるだろうに
彼女はウンウンと唸り
くねくねしている
「…!」
人差し指を立てる
何故かうっすらドヤ顔なのだが、自信満々とも言うか?
「………なーいしょっ」
キラリンっ というような効果音が出るんじゃないかと言うほどにいい笑顔をしながら彼女はそう言い放った
「ふぐっ…」
かわいい
そんな言い方されてしまったら問い詰める気も失せてしまう
問うことはまたそのうちにでもいいだろう
「…ねェ、ついてキテ」
彼女はそういうと移動し始めた
顔に影がさしたことから大事な話だろう
少し移動し、部屋の隅の排水溝の網目のような床の場所に来た
何かある、そうやって疑いかけると、この場に網目の床があることに疑問を覚えた
水場でもないのに、少し考えれば気がつけただろう
彼女は網目の床を開ける、その先にはハシゴがあり下に行けるようだ
彼女について行くと少しだけ広い部屋に出た
地下の地下にまだ部屋があるとは、アリの巣構造もいいところだ
そしてその部屋にピリッと感じるものがある
「…ゲート」
「…?うン、ゲート」
黒曜石が縁どり、枠となって、その中を紫の気味の悪い渦が張っている
どこかに繋がるだろうゲートだと感覚的に分かる
「いコ」
彼女に手を引っ張られてそのゲートに近づく
生理的に無理と言いたいところだ…が
同時に少しだけ好奇心が湧く
肯定も否定もしないまま、ゲートを睨むだけで自分は彼女に引っ張られていく
嫌な汗をかきながらも自分と彼女はそのゲートに入っていった
本当は半壊ゲートで修復するための素材探しとか続けれるとかも考えましたが…
ここで完結です