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紅い世界  作者: ファイル
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目が覚めたら真っ赤な世界だった



喉の痛さで目が覚めた

ぶわっと吹き出している汗

じんわりと現実に引き戻されていく


全身が水分を欲している

感覚はしなびたキノコのようだ

周りからチリチリと音が聞こえてきた


サウナの中のようなモワッとした空気、鼻で息をするのも熱い



体を起こして目を開ける


「…赤い、世界だ」

その声は掠れ、自分のモノとは思えなかった




視界の端に体力ゲージのようなものが映り込んでいる


…げーむ?


とにかく今は現状確認といこう


体は…うん、水がほしいが至って健康体だろう

寝汗が気持ち悪いくらいだ



立ち上がり周りを見渡す


赤い地面、赤い空、というより赤黒い、洞窟のような薄暗い雰囲気だ

溶岩が空から垂れ流されて

白いタコが浮いているのが見える


…うん、夢か


「起きて!?現実の自分っ!?」


なんで目が覚めたら地獄絵図なんだよ!太陽どこだよ!ここどこだ!


「ぴょっ」


後ろから謎の可愛らしい音が聞こえた


後ろをむくと黒く長い髪をいじりながらこちらの様子を伺う女の子が居た


服はボロボロでワンピースのように丈が長い

…裸足なのもあり、目に見えるのはボロワンピースだけだが

髪はボサボサという訳でもない、目もしっかりとコチラを見据えていた


どこかバランスの不釣り合いな存在と思った



「イナブア」


女の子が声をあげた


「…は?」

なんて言った?


そして女の子は俺の後ろを指さす


「ハレア、ンケキ」


振り向くと先程ちらりと見えていた白いタコ…

トウフからクラゲのようにうねうねとしたものがいくつも生えているのだ


その生き物と、目が合った



ギュピェエっ!



突然穴が、口が開き炎の玉を吐き出してきた、カッと開かれた両目が少し怖い


グイグイと腕が引っ張られる

見れば女の子が腕を引っ張っていた


「チッコ テキ!ルゲニ!」


眉をひそめ急げと言わんばかりの目をしている


まぁ、つまりはあの炎の玉が危険なのだろう


引っ張られるままに女の子について行く



どうしてこんなことになったのか思い出そうとした、直前まで何をしていたのか思い出そうとした

その直後、後ろが爆発した


ずガーンっ!



「ひっ!?」


後ろを振り向くと先程の炎の玉が着弾したであろう場所が抉られ、燃え盛っていた


やっばぁ…




現実的ではないことがおきており、実は夢なんじゃないかと自分を疑い始める、いや、疑ってはいた


しかし肌がヒリヒリとやけるような暑さはいくら夢でもやりすぎだ




女の子に引っ張られていると地面が青…紺、とにかく青系統の色の場所が近づいてきた


女の子は黙々と腕を引っ張り続けている、背丈は自分より低いくらい、少し歩きづらい



自分たちの周りは赤い地面に至る所で炎が上がっている


地獄絵図だ、しかし青い土地は木々のようなものが見える、加えて炎が青く幻想的な雰囲気を醸し出している



その土地に足を踏み入れる…と、直ぐに穴蔵へと引っ張られた


地中にあり、穴蔵というよりは動物の巣に近いが



階段状の一本道を進むと少し広い空間に出た

視界は暗いが不思議と確保出来ている



腕を離され、女の子はそのまま地面に寝転ぶ


「アー!タレカツ!シタレケツミモトヒ、タッカヨテッイ」


相変わらず聞き取れない言葉だ



その場で突っ立っていると女の子が体を起こし不思議そうに首を傾げている


可愛い、じゃなくて

「ここはどこなんだ?」


すると女の子は眉をしかめた



「…君の名前は?」


「ノルテッイニナ?イナンカワ…イナテエコキ?」



あぁ、これは伝わっていないな

そう確信するのに時間はかからなかった





言語が伝わらない、それならそれでいい、助けてもらった感謝の言葉が伝わらないのは歯痒いことだが


女の子に習い地面に胡座をかく

ジェスチャーで伝えようと考えた


しかしそれよりも喉がかわいて仕方がなかった

溶岩、炎、走行

見た目的にも気分的にも体の水分が出ていく一方だ



女の子はじっと自分を見たままだ、何か伝えようと、何もしないまま手だけがわちゃわちゃ動いている、その動きから何かを読み取ろうとしてくれているのか


ごめん、この動き、言葉にするならどっちつかずだ…



自然とため息が漏れる、不思議と緊張により入っていた肩の力がが抜けていくようだ


…緊張していたのか


そのことを自覚しないほどに緊迫していた、ということだろう




気が緩んだからか唾液が出てきた、飲み込むと喉に痛みが走り、ゴクリと鳴った


「タッカワ!ネンブイス!」


女の子は閃いた、というような顔をして


どこからか派手派手しい青いキノコを取り出した



その行為に自分は思考がフリーズ仕掛けた、その派手なキノコを何を思って出したのか、そうも思ったが


明らかに何も無い空間から出てきたのだ


…!


視界の端にゲージが映っているのを思い出した


減った様子はない


ゲーム、の中に入り込んだと仮定した方がいいだろう

いわゆる異世界転移だ、その手の本や話は自分は知っている方だろう


転移なら元の自分はこの肉体、死んだわけでは無さそうか?


…異世界転移どうこうの考察はいい



女の子が青いキノコをこちらに差し出してくれているが、ゲームなら先程の事象にも多少の道理が通る



いわゆるあれだろう


「…ステータスオープン!」


そう口に出すと視界が切り替わり、自分の姿と空のマス目が沢山ある、という情報が浮かび上がった


レベルや体力、スキルといった期待したことは出てこなかったが



これはあれだろう、いわゆる「持ち物」なのだろう?


…この画面見たことある気がするな


…具体的にはあの有名なマイ○クラ○ト



自分が詳細をひねり出そうとした直後、口に何か柔らかいものが押し込められた


「んぐ!?」


「ヨイサナベタクヤハ!」


持ち物、は消え去り視界には少し怒った様子の女の子が青いキノコを押し付けていた


たべる!食べるから!自分で食べれるから!



もっきゅもっきゅと歯ごたえのいいキノコを噛み締める


食感は弾力すらある歯ごたえも食べ応えもあるキノコだ


驚いたのは肉汁のようにキノコから水分が溢れてきたことだ


そのおかげで喉の乾きが潤った

と、同時に満腹だ…なぜ



女の子はキノコを食べ終わるのを見ると満足したように微笑み立ち上がった


おもむろに見た事のあるピッケルを取り出しながら


そしてそのままどこかに行ってしまった




先程のこと、今見た事を含めて確信する

ここはマイ○クラ○○の世界なんだと


詳しい訳では無いが親戚のちびっ子がプレイするところを見せてくれたことがある


しかしその世界では緑豊かな土地だったはずだが?



さらに言うならばこの世界は見た目が例の四角いブロックではない、壁は曲線を描いているし、先程のキノコもドットという訳でもない

むしろ大きさなら配管工の方がイメージが湧きやすい




…しかしこの穴蔵の壁際に重力を無視して鎮座している謎の黒い塊が浮いているのだ


認めよう、やはりここは○○ン○○フトの世界なんだということを

アンチ重力なんて有名な事だ



宙に浮いている黒い塊は少しだけ紫色の光を放出しているように見える

恐る恐ると触ってみる…が特に反応はなかった


穴蔵を見渡す、奥に続く穴はあるようだが行っていいかは考えものだ

赤い植物がちらりと見えるぐらいだろうか


他に見るものもないため、穴蔵の外に出ようとした時に女の子が帰ってきた


「ア、テッマ、テッワサレコ」


ぐいと出してきたのは黄色の粉だ


「えっと、ありがとう?」


相変わらず言葉が分からない

くれたのだろうか


「…ウユジフ、ッン」


女の子は粉を持たせたまま自分の腕を引っ張り、黒い塊に押し付けさせた


黒い塊が紫色に淡く光ると、体がぽかぽかと暖かくなるのを感じた


「トア、レコ、ルゲア」


バラバラと異空間、持ち物から取り出す女の子

ピッケル、シャベル、剣、斧

どれも木製だが真っ赤な色をしている、こうまで赤いと血濡れをイメージする程だ


「シイナンワタツハバトコセウド、ヨイイテシニウユジ……ネヨダブウョジイダモデンシ?」


あぁっ、聞き取れない、わかんないから!


「ヨイイテッカツニキスモココ、ネアャジ」


女の子は一方的に喋り倒すと穴蔵から出ていってしまった



「…あ、ありがとう」


出ていった入口に向けて、自分はただ呟くだけだった





この世界に来てから何回か睡眠をとった


本来日にちの経過を伝えるようなところだが、太陽がなければ水分を取ると同時に空腹も収まる

眠気もあまりやってこない環境では日数を数えることが出来なかった



あれから女の子は戻ってこない

こんな環境で一人で手探りで探す状況は心が疲弊していた、女の子とは会話は成立しないが、そこにいるだけでいいからそばにいて欲しいと願っている


ただただ人肌恋しいのだ



辺りを探索してみた、白紙の淡く光る本を地図代わりに使って自作する


洞穴の近くにはこの赤い世界では珍しい青い森が小規模に広がっていた


青い木に青い土、青い炎と何から何まで神秘的な青さで統一されている


ここには他の生物が近寄ってこないため、最悪生き長らえることは出来るだろう

死なないために生きるだけを生きていると呼べるのか疑問を浮かべるほどに生きながら死ぬ事になるが


…あぁ、ダメだ、碌な思考回路をしていない、どうにもまいっている



赤い土地は例のシロトウフを初めとする危険な生き物が多い


赤いスライム、骸骨、これらは自分に攻撃してくる


二足歩行の豚…腐った豚は金の剣を持っているが攻撃はしてこない、ふごふごと鳴くだけだ



最後に貰った道具でこの世界に干渉すると不自然なようにアイテムが手に入る


まぁゲームの世界だから驚きはしないが、斧で木を切ると切った部分が消え去り持ち物に加わる、そして切った幹の上は重力に逆らい浮かび続けている



骸骨からは矢を受けた、当たりどころが悪く心臓を射抜かれたが、死ぬことは無かった


視界に写るゲージが無くならない限り死なないのだろう、ゲームらしいと言えばそうだが心臓には悪い、外見的にも、外聞的にも



木を切り、葉っぱから苗木を取り、植えてから穴蔵に戻ってきた


…そろそろ心が限界だ


ここに来る前の記憶も段々とモヤがかかるように薄れ始めている


自分が、心が死んでいく感覚



…あの、女の子を探しに出かけるべきだ



最低限、安全が確認できているこの洞穴と青い土地から離れることを決心した

異言語の表現の仕方は止め方と逆の読み方で表現してます、読みにくいことこの上ないですね

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