ブロローグ (3)
小さな村に辿り着いた僕らはあちこちに歩き回った。
その道中、爽やかな男が手当たり次第に村人に話しかていた。
彼が情報収集してくれるのは有り難い。ただ、メモが無いので、どんな内容なのかは分からない。
しばらくは手振りでやっていくしかない。
周りを見ると、村人が顔を歪めて距離を取っていた。
僕らのような見知らない人を恐れているんだろうな。
爽やかな男が戻ってきた。
僕に対して手招いているので、疑問を抱かず付いていく。
爽やかな男は小さな包囲物を指差し、近くの馬車に包囲物を運んでいく。
僕も包囲物を持ち上げて運んでいく。
馬車に置いたら、爽やかな男が両腕で丸を表す。
なるほど。そうやって動けばいいのか。
●
爽やかな男を追って、重たい物を運んだり、料理を配った。
夜は馬小屋で泊まる。
朝は爽やかな男が持ってくれた簡素な料理を食べる。
そんな日々を過ごしたら、爽やかな男が金を持ってくるようになった。
その金で美味しい料理を頂いたり、日常生活に必要な物を揃えた。
小さな村に居る、老齢の僧侶に寄付したら、分厚い書冊を押し付けられた。
僕は分厚い書冊を読み漁り、文字を覚えた。
爽やかな男に分厚い書冊を見せたら、メモで意志疎通できるようになった。
どうやら僕と爽やかな男は分厚い書冊を見通すだけで文字を覚えられるらしい。
小さな村に辿り着いてから約7日後。
村の外の仕事に出かけていた爽やかな男が一人の美少女を連れて戻ってきた。
●
突然の出来事だったらしく、小さな村全体が大きな騒ぎになっていた。
爽やかな男は僕を置いて、美少女と一緒に空き家に消えていった。
しばらくすると、彼が戻ってきたので、質問責めした。
曰く、『美少女が魔物に囲まれていて、困っていたので助けた。そうしたら、騎士団の団長になってほしいと頼まれたので、一度は断った。だけど押しが強すぎて結局団長として勤めを果たす事になった』
爽やかな男に見せられたメモで何となく察した。
ああ、主人公は僕じゃなくて、爽やかな男だったのか。
しかも、美少女ハーレムを造るんだろうな、この人は。
僕は全てを諦めたような思いで、爽やかな男に励ましの言葉を送った。
ついでに一つの約束を交わした。
【僕は魔法学園に行って、宮廷魔法師を目指す。いつか強くなってお前と戦いたい】
【上等だ。どうぜ強くなるなら、お互い世界最強を目指そうぜ!】
爽やかな男に決闘を申し込む未来が目に浮かぶ。
いつか実現してやる。
それが僕の新しい目標だ。
翌日の朝、僕は爽やかな男と美少女の旅立ちを見送った。