ブロローグ:魔法使い
蒸し暑い太陽の光が僕の身体を射貫く。
薬の素材を集める為に、朝から森にて、フラフラと歩いたら、いつの間にか、荒れ果てた地面を造り直す作業に入っていた。
神々から与えられた固有技能を行使すると、精神力が減っていく。
最近、壊れた物を見かけると『直したい』という衝動に駆られてしまう悪癖が悩みの種だ。
せっかく鬱小説で荒稼ぎして買った、精神力を充満させるマナポージョンもどんとん減っていく。
それでも、しばらく歩き回った結果、円筒型の魔除けランタンが空中に配置された、やや広い草原を見つけた。
その魔除けランタンは厄介な怪物、いゆわる魔物と呼ばれる彼らを追い払ってくれる。
少しデカい岩に座って休んで、その後、山頂まで延々と続く階段に足を向けた。
しばらくして辿り着いた頂上には素晴らしい景色が待っていた。
広大な樹海を見下ろせ、遥か向こう地平線までも視認できた。
長いため息を吐く。
僕が異世界に放り出されてから二週間経った。その間に色んな出来事が起こりすぎて、少しだけ都市から離れたかったのだ。
でも、ここまできたら、あとは帰るだけだ。
ただ、今日は身体が疲れてしまったので、ここで休めよう。
●
やや広い草原に歩き戻り、野宿の準備を始めた。
まず小石を囲むように並べて、集めた落ち葉に火を付ける。
その後、異次元リュックから骨付き肉と簡易料理道具と野菜を取り出す。
燃え盛る炎の側に骨付き肉を吊るして置く。
焼き上がるまでの間に野菜などを切って、炒める。
腹が鳴る。
あぁ、早く食いたい。
そうだ。背中を負っていた異次元リュックの中身を確認しながら待つことにしよう。すぐに寝れるように寝袋を出しておこう。それと磁石で長剣の斬れ味を回復しよう。
我ながらやる事が多いなぁ。
辺りが暗くなり、だんだん寒くなってきた。
そろそろ焼いた肉を食える頃かな?
漂う匂いが鼻を刺激し,口から唾が流れ堕ちる。
よし、もういいかな。
熱くなった肉付き骨を慎重に持ち上げて、豪快に喰らう。
おお、予想はしたけど、おいしい。
ふと、空を見上げると、無数の輝く星が見えた。
たまたま流星群を拝める事もできた。
気のせいか、一粒の流星が僕の所に落ちてきているような…。
不意に欠伸をした後、眠気に襲われた。
取り出しておいた寝袋に潜り、瞼を瞑った。
あっさり、深い眠りに落ちた。