111
「もしもし」
「ああ、お前かよ。どうした?うっるせぇな何所いんだよ?」
「聞いてわかんないのか?パチンコだよパチンコ。フィーバーしちゃってさぁー。幸せの御すそわけってとこだよ」
「はぁそりゃよかったね。俺やったこと無いからわかんないけど。いくらぐらい勝ってんの?」
「77777円ぐらいだろやっぱり」
「何がやっぱりだよ。適当ぶっこいてんじゃねーよ」
「まぁそれだけ勝ってるってこったよ。つーかよ、聞けよお前。ちょっと前にどっかのおっさんから間違い電話だかなんだかがかかって来たんだけど、なってねぇのよその態度が。普通、なにかしらの謝辞をいって切るもんじゃない? なのにそのおっさんたら無言でいきなりブチッと切りやがるわけよ。それで俺も腹立ってさ、てめぇ謝るまで延々とリダイヤルしてやっからなとか燃えちゃって。まぁ10回ぐらいでこっちが根負けして止めたんだけど」
「んーまぁ言ってることは正しいとはおもうけど、10回ってやりすぎだよ。相手だってそんだけされたら謝る気なんてゼロになる、っつーか氷点下だわ。 逆にいやがらせしたくなるだろうよ」
「まぁなやりすぎたってことは認めるよ。で、落ち着こうと煙草吸おうとして口にくわえた時、ふと別のことが浮かんできたわけ。このセブンスターのパッケージの星は全部で一体いくつあんだよ? ってキレそうになっちゃってさ。知ってるか?」
「煙草のパッケージに八つ当たりしてんなよ。でも、確かにいくつあるんだろうな、わかんないわ。あの、本気でうるさいから切るぞ。さらなる幸運を祈ってるよ。おごれよ今度」」
携帯を切った瞬間にパソコンの電源を入れ、立ち上がりの遅さに苛立ちながら「早くしろ」と呟いてるのに気がついた。
何であいつは僕が適当に書いた内容を経験したように話したんだ? ハッキング?
テキストを保存しているフォルダをクリックし、一通り見てみた。特に変わった所もないし、何か弄くられたというようなところもない。セキュリーソフトにも何者かがパソコンに侵入しようとしたという形跡は残っていない。
訳が分からない。
あいつがパソコンに詳しいなんて今まで聞いたこともない。実はその世界では名だたるハッカーだったりするのか?
家に不法侵入した?
いや、俺はもしかしていわゆる予知なんてものをやっちまったのか?
可能性としては、家に勝手に上がりこんでパソコンを覗いたという方がまともだ。
が、そもそも僕がああいうものを書いているなんてこと知るのは不可能だ。
誰にも言ってないんだから。
物を取ろうと侵入してきたと仮定しても、疲れたなちょいと一服しながらネットするか。なんていう馬鹿げた行動をするとも思えないし、いくらあいつが抜けてると言っても、穴の開いたバケツを片手にこれ全然溜まんないな、なんていうほど底なしだとは思えない。実はそうなのかもしれないが。
大体、奴は家に来た事がないし、高価なものなんてそもそもありゃしないのだ。
「予知」だと? 嘘だろ?
コンポからslipknotの「THE HERITIC ANTHEM」が爆音で響きだし、比喩でも何でもなく椅子から転げ落ちた。
休日は寝すぎるので時間がもったいないとタイマーを掛けていたのを完全に忘れていた。
サビではこう叫んでいた。
「お前が555なら俺は666」
なるほどね。どうやら666=僕に対して555が反撃を開始したようだ。