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エピローグ・上

 前話の後書きにも書きましたが、前話から6年程が経っています。

 彼女達が、フランスに旅立つのを見送ってから、6年が気が付けば経っていた。

 その間に1年交替で、延べ3年間、僕は国連平和維持隊任務に、表向きは自発的に志願させられていた。

 全く軍隊と言うのは性質が悪い。

 上官の命令を公然と拒否できるわけがないし、上官の示唆は受け入れねばならない。

 それなのに、いざとなったら、部下が自発的に志願した、ということで、上官は免罪されるのだ。


 お前は、土方伯爵の遠縁だろう、その縁を使えば何とでもなるだろうに、と言われそうだが、僕がそういうのが嫌いだし、土方伯爵も、鍾愛していた孫娘の鈴が傷物にされたということで、内心では僕を嫌っている。

 僕が世渡り上手なら、最初から海軍兵学校に入校して、海兵隊士官のエリートコースを目指していた。

 そうすれば、土方伯爵の覚えも目出度くて、ひょっとしたら、鈴の婿にという話が、現世で持ちあがっていたかもしれない(その場合、今度は、澪が陰で泣くことになったろうが。)。

 でも、僕は世渡り下手で、自分の信念を貫く性格で。


 まあ、そういうことだ。


 そして、国連平和維持隊任務の間に、何があったのか、正直に言って僕は語りたくない。

 僕は何とか生き延びた。

 彼女達からもらった御守り4個の御蔭だろう。

 共に戦った戦友が何人も戦死した。

 そして、僕も何人の敵(?)を殺したことか。


 戦場では、敵か、味方しかいない。

 味方でなければ、敵なのだ。

 そう思って撃たないと、自分が死ぬ羽目になる。

 実際、思わず射撃を躊躇ったために戦死した戦友を複数、僕は覚えている。


 更に皮肉なことに、国連平和維持隊に志願して、生き延びることで、僕は周囲の評価を高めた。

 今、僕は大尉に昇進し、予備役士官養成課程出身の同期の中では、実力だけでもトップで少佐昇進間違い無し、土方伯爵の縁があるので、最終階級は将官で終わるのでは、と周囲に見られている。

 本当に何とも言えない状況だ。


 今、僕は、国連平和維持隊任務を終え、久しぶりに日本に帰還し、横須賀にいた。

 国連平和維持隊任務は基本的に1年限りで交替と決まっている(そして、しばらくしたら、上官から国連平和維持隊任務への志願の有無を聞かれる仕組みだ。)。

 おそらく、4回目が僕には待っている。


 海兵隊士官としての御礼奉公を避けるために貯蓄した、例の600万円の貯金は、僕個人で言えば、結局、意味が無かったと言える。

 そのお金は、そっくりそのまま、彼女達4人の留学費用に、事実上は転用されてしまったからだ。


 あの会合の後、土方伯爵と細目を詰めた際に、土方伯爵は、僕に言った。

「澪や鈴はともかく、愛やジャンヌに対しては、親として、先祖として何もしなかったのをどう考える」

 土方伯爵が言わんとすることが、僕には分かった。


「彼女達4人の留学費用に協力しろ、というのですね」

「そのとおりだ」

 土方伯爵は、人の悪い笑みを浮かべながら、僕に言った。

「でも、お金が僕にはそうありませんよ」

 僕は切り返した。


「安心しろ。600万円はお前に返してやる。それを転用すればいい」

 土方伯爵は、そう言った。

 僕は、土方伯爵の言いたいことが分かったが、それを阻止する手段は僕には無い。

「分かりました」

 あの時、僕は、そう言うしかなかった。


 僕は、日本国内で命ぜられた職務を思い起こした。

「新しい女性兵士の訓練を行えか」

 海兵隊が女性兵士を受け入れ、その女性兵士が前線任務に就く様になって、どれ位が経つだろう。

 女性兵士が前線任務に就くのは、第一次世界大戦のロシア帝国陸軍以来、世界的に広まり、今や当然になっているとはいえ、前世の記憶の影響もあるのか、僕には違和感がある。

「どんな女性兵士かな」

 僕はそう考え、現場に向かった。 

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