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第22話ー全てをお互いに話す時・上

 彼女達が乗った飛行機が、フランスに向けて、出発するのを見届けた後、僕は、一人で物思いに耽った。

 前世の自分が生前にしたこと、そして、前世の自分が戦死した後に、彼女達が経験したこと。


 自分や彼女達の親、それに土方伯爵がよく許したものだ、と自分でも思うが、あの会合の結論が出た後、自分が提案して、彼女達も皆が同調したことから、自分と彼女達だけは、「北白川」の広間に残って話し合ったのだ。

 前世での事を。

(後で聞いた話だと、自分や彼女達の親、土方伯爵までが、「北白川」の中に居て、誰かの叫び声が上がったら、すぐに駆けつけられるように、待機していたそうだが。)

 そして、まず、自分が話し、彼女達も、澪、鈴、愛、ジャンヌの順で話していった。


「ええっ、本当に私が初めての相手だったの。確かに私は馴染みの芸者で、お互いに割り切った関係だったと言えばそうだけど」

 愛が声を潜めて言った。

 澪と鈴も呆然としている。

 ちなみに、ジャンヌは、前世での事もあり、平気な顔をしている。

 僕は、あらためて、そのことを認めた。


「本当に嘘で、別の相手が最初だったとは」

「嘘はついていなかったけど、うーん」

 あの会合の結論で、前世の事は白紙、という協定が結ばれていてよかった。

 澪、鈴の口ぶりからすると、本当に僕は刺されていても、おかしくなかったようだ。


「ところで、本当の結婚の経緯は、どうだったの。あなたの認識としては」

 愛が尋ねた。

 澪、鈴にとって、最大の関心事がそこだろう。

 本当は、お互いに一番に聞きたかったのだろうが、牽制しあって、却って口に出せなかったようだ。


「海軍兵学校で4年間を過ごしている間、鈴に、僕は中々会えなかった。たまたま帰郷しても、すれ違ってばかりだったからね。手紙のやり取りは何とかできていたけれど。それで、鈴には、他にいい人が出来たのだろうと僕が考えているところに、澪に会ったんだ」

「私はあなたをずっと待っていたのよ。本当に、用事があって、会えなかっただけ」

 鈴が懸命に弁解するが、4年間、手紙のやり取りだけで、中々会えない相手が、ずっと自分を待っていると思う方がおかしい、と僕は言いたい。


「澪が、僕に好意的な目を向けてるのに気づいてね。満更でもなかったら、放っていたら、柴五郎提督が、勝手に僕と澪の縁談を進めてくれた」

「ほほう」

 愛とジャンヌが、目を合わせて不穏なやり取りを目でしながら、口を合わせて言った。


「それで、柴提督から、澪との縁談を勧められてね。鈴は、他にいい人が出来たのだろう、と僕は考えていたから、澪との縁談を受け入れた。それで、一応、けじめをつけようと、鈴に僕が会いにいったら、鈴が取り乱して、まあ、そういうわけだ」

 本当から言えば、鈴を僕は抱くべきでは無かっただろう。

 だけど、鈴のあの時の剣幕は。

 ちなみに、鈴はいつの間にか、僕から目をそらして、明後日の方角を向いている。


「それで、鈴を抱いて別れた後、私と結婚したと。ジャンヌとの関係は」

 澪が気を取り直して聞いた。

 僕とジャンヌは、お互いに一瞬だけ、目で会話した。

 ジャンヌの恥部を明かすことになるからだ。


「ジャンヌは、マルセイユの街娼で、外出許可が出た夜にマルセイユで歩いていた僕は、たまたま彼女に袖を引かれた。そして、お互いに惹かれあったんだ」

「あの頃、お金もそう無いのに、外出許可のたびに、あなたは、私の所に入り浸っていたわね」

 僕の言葉に、ジャンヌはそう言った。


 ちなみに他の3人は、毒気を抜かれたような顔をして、沈黙してしまっている。

 澪が辛うじて呟くのが、僕の耳に届いた。

「夫が街娼に惚れ込んでしまうなんて。妻として何といえばいいのか」

 僕も何といえばいいのか。

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