第17話ー炎上
僕が教頭先生との面談を終えて、自宅に帰宅したら、まだ昼前だった。
朝から続けざまに事件が起こっていたので、夕方になったような気さえしていた。
両親は、まだ仕事に行っていて、自宅には誰もいなかった。
教頭先生の話がどうにも気になっていた僕は、早速、ネットの現状を確認することにした。
取りあえず、「浦賀女学校」、「入学式」でネット検索を掛けてみる。
その検索結果を見た僕は、自分の血の気が引く音が自分で聞こえる気がした。
これは、いわゆる炎上、祭り状態に突入しつつある。
例えば、動画検索によると、僕とジャンヌが寄り添っている眼前で、鈴と澪、愛がキャットファイトをやっている動画等がネットで流れている。
他にも、4人が僕に声を掛け、修羅場が発生した瞬間の動画等、より取り見取り状態だ。
他にヒットするサイトを調べると、僕だけでは無く、澪や鈴、愛、ジャンヌの実名まで暴露されている。
さすがに個人情報的にヤバいのでは、という指摘がされているが、真実を隠蔽されない為とか、偽の被害者を出さない為とか、暴露者にとって、都合のいい反論がまき散らされている。
鬼畜家庭教師、教え子の女子小学生4人全員を毒牙に掛ける、というタイトルでのまとめサイト等まで、既にできている。
これは、今日中に、僕の携帯電話番号からメールアドレス等、僕にアクセスできる個人情報を、全てを破棄、変更しないとえらいことになるのは間違いなさそうだ。
一応、僕個人が知る限り、友人等は口の堅いのが揃っていると思いたいが、スパイ、裏切り者は、親友等最も信頼できる者に限られるというのは、古今東西の大原則だ。
更に、通信会社の従業員等が、僕の個人情報をこっそり流さない保証はない。
実際に通信会社が、政府とツーカーの仲で、個人情報を大量に政府に横流ししているのは、公知の事実と言ってよい話だ。
これは急がないといけない、と考えている僕の所に、まず、ジャンヌから、次に、愛から、と相次いで電話が入った。
それどころではない気がしなくもなかったが、よく考えてみたら、ジャンヌや愛も同様に生まれ変わりのようなのだから、会って話せない代わりに、きちんと電話で話し合うべきだろう。
僕は、そう考えて、ジャンヌや愛と電話で、できる限り手短に話し合った。
「先生、私、思い出したの。あのマルセイユのベッド、幾度も肌を重ねたのを、先生は覚えている」
「覚えているとも。僕の子を産んでいたのだね」
「そう。そして、私、ジャンヌは、その子孫の一人よ」
ジャンヌが電話越しに泣いているのが分かった。
「済まない。大変な苦労を掛けたようだな」
「ううん。私の我が儘からだし」
その後、手短に話すつもりが、結局、30分程もジャンヌと話し合った。
「先生、「北白川」の名前の由来を、私は思い出したの。北白川宮殿下が、私が子どもを産んだことを岸家に伝えるわけにいかないから、その代わりにということで、名前を下さったの」
「そういうことだったのか」
愛は、親の目を掠め、何とか私に電話を掛けてきたようだった。
「先生、また逢えて、嬉しい?」
「嬉しいとも」
「良かった。また、連絡する」
それだけ言うと、愛は電話を切った。
後は、澪と鈴が問題だが、この2人は、おそらく浦賀女学校や家族との対話に追われているだろう。
どうやって、彼女達を救い出すべきだろうか。
ともかく誤解(?)を解かねば。
そう悩んでいた僕の所に、今夜、「北白川」に来るようにとの連絡があった。
「北白川」で、僕、澪、鈴、愛、ジャンヌとそれぞれの家族が集い、今後の事について話し合うという。
総指揮は、土方伯爵が執るらしい。
これで何とか打開策を考えるしかないのか、僕は腹を括った。
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