少年の・・・4
説明は全体的に話しに織り込みたかったんですがここで一度挟もうかと思いました。ちょっと面倒な場面ですがご了承下さい。説明入ります。
あの後一通りからかわれ食事が終わってからみんなで湖の砂浜で空を見上げて語りあった。
空にある海の層。夜には太陽の光を通さず月が微かに見えた。珍しい。月なんていつ振りに見えただろうか。見上げた空に月が歪んで見える。なんでも本物は真ん丸らしい。確か昔に学者の人が歪みを計測して数年かけて形を見つけたらしい。その時に学者がこの形を見つけた時に子供の頃にテストで○印を貰ったのを思い出した。正解だって誰かに認められたみいで嬉しいよと言った事が教科書に書かれていたのを覚えている。
それからこの星の空にある海はこの星の遠心力と重力によって星の周りを高速で常に回り続けていると言う話しは有名だ。1番この説が有力である。実際に海の中の調査もされていてはいるが穏やかに見える表面とは別に中はとんでも無い速度で水が流れている。だからそれを未だ超えられない人類はまずはこの空にある海の層を超える事が最重要だと学者は言う。それが実現できれば耐久問題を解消させ海の大量にある水を島々に下ろし食料難にある島をもっと豊かな場所に出来る筈だと力説されている。
反発などもある。それだと取った海の水はいつか無くなるのではないか。無くなった場合どんな弊害が起きるのか。リスクマネジメントがなされていない。それならば現状海の下にある雲を方向性を持たせて雨の降る場所の指定化を目指した方が幾分も有用である。などなど。
確かに空の1番上にある海の下に雲がありそこから雨が降ってくる。そしてジュエル結晶体が浮かせている島々に雨が降り注ぐ。島々に降り注がない雨はこの星の中心。つまりはジュエル源集底と言われる場所に振り星が発している熱により蒸発。また雲となる。これが誰もが知っているこの星の在り方だ。
各島々は特大のジュエル結晶体で空に浮いている。ジュエルはあらゆる物の前提条件になり得る物とされているエネルギーだ。空に浮かぶ前提条件をジュエルが古く、それもこの星が誕生した時から島を支え続けている。
ひと昔前、ジュエルが枯渇状態にあった国では表起されていた特大のジュエルの採取に手を当てたらしい。結果は数年後。浮遊エネルギーを失ったその島は星の中心に落ちていった。
それから各島々の特大ジュエル結晶体には厳重な警備が成されるようになったのは有名な話しだ。
ジュエル源集底とは星の中心でありジュエルの結晶体が数多く存在する場所だと言う。ジュエルはガラス体の物が殆どだ。形は殆どが結晶に似ている。色は黒紫色でこの星の殆どのエネルギーの源だ。この島に来た時に乗った飛行艇の燃料も、今先程までいた食事所のキッチンの火を灯すのも、建物の灯りも、水を運ぶ機械を動かすのもだ。全てがジュエルによって生活が成り立っていると言っても過言ではない。
ジュエル源集底はそのジュエルが発生する場所だとされている。詳しくは空の海と同じように調査に弊害があるために全ては研究しきれていない。ジュエル源集底は熱量が異常なのだ。今現実この星の鉱物に頼ってで言えば1番深いとされている最下層にはたどり着けないらしい。たまに本当に遠くから見える。飛行艇からの窓越し。それも空層圏最下層の7層から稀に赤い流動体が見えるそうだ。マントルと言われる炎の塊だ。人類はそれを超えなければ1番底にはたどり着けないだとか。まぁ、平たく言えば海も、ジュエル源集底も詳しくは調査が進んでいないとの事だ。
現状では近くまで行けるらしい。そこでは大量のジュエルが発見されている。しかし、持ち運びには至っていない。大き過ぎるのだ。硬度も現状の技術では歯がたたないらしく採取出来ても数cmの結晶体が限界。それ以上は機材や人間が持たないそうだ。熱による弊害だ。時間が経てば経つ程困難になる。しかし、採取されたジュエルのエネルギー量は同じサイズの島々で採取される結晶体に比べると破格の量のエネルギーが内包されているのだとか。それとそのエネルギーが結晶体の外に漏れ出す程強い物である事が発見された。そしてジュエル結晶体と同じ原子から出来ているのがわかった。故に島々、つまりは俺たちがいつも使っているジュエルはジュエル源集底にある物と同じだと言う事がわかる。正し俺たちが使う結晶体は外に漏れ出す程強力な物ではない。
故にこの仮説が有力だ。世界中に存在するジュエル結晶体はジュエル源集底にある結晶体が漏れ出すエネルギーを降った雨が蒸気化しそれに混ざり雲になって雨に乗せて地上に降り注いでいる物である。とされている。
仮説ではあるが有力な説で殆どの人がそれを信じているし事実なのだろう。
余談ではあるが雨、つまりは雲に近ければ近いほどにエネルギー量が多い結晶体がとれる。この国。フーガ国で言う天層圏。1番上に存在するフーガ城、天層圏特層が1番結晶体のエネルギー量が多い結晶体がとれる。
次には有力権力者。貴族と言われる人々が住む1層が続き2層目、3層、4層と住民が住む場所へと量が減っていく。さほど2、3、4層は量は変わりが見られないがそこが生活区域である住民にとっては差別が生まれない良い環境になっている。
そこから下。そこは住民進入禁止区域だ。一部の許可が降りた人間にしか入れない。生物の、いや、人の脅威がいるのだ。
人類が誕生したとされる一万年余り。その最古の時代から変わらずにいる脅威。人はそれにエダンと名付けた。
エダンは形を持たない。しかし何かしらの形に姿を似せる者である。生物ではあるようだが生命維持の方法がジュエル採取による肉体維持となっている。というのもエダンはジュエル結晶体が集合した生物である。故に他に存在するジュエルを取り込むのだ。そして人類は体内にジュエルを内包しついるようなものだ。雨に乗ってジュエルは発現するのだが、空気中にも勿論存在する。故に人類は常にジュエルを体内に摂り続けている状態なのだ。それも何年もだ。
エダンはそれを餌にする。生物はジュエルを体内に摂り続けているという生活をするかぎりは餌となり得るのだ。エダンは雲からは滅多に発生しない。その前に四散して雨になるからだ。ではどこから発生するのか。それはジュエル源集底からと言われている。溢れ出たジュエル結晶体が最下層にて生物化をする場合が殆どでありだからこそこの国でいう5以下、5〜7層は住民進入禁止となっている。
稀に雲の中で発生したり。採取されなかった生活層にて生物化したエダンが島に降りるなどの報告があがる。
それに対処するのがエスロットと強素体を持つ人類だ。
強素体とは人に発現する症状でその発現させる素体の事をいう。空気中のジュエル採取により強靭的な力を持つ者が稀に生まれるのだ。種類は様々でありその症状が強い者に至っては空を飛ぶ者さえいる。ジュエルが全ての前提条件になり得るのを考えれば島を浮かせている力だ。人だって浮かせられるのだろう。火を体の至る所から出す人はこの前テレビに出ていたな。訓練施設では滅多にテレビが見れないから覚えている。
対してエスロット。エスロットとは3m程の人形搭載式兵装だ。これが生まれたのは凡そ80年前とされている。その頃の人類は一言で言えば差別社会が殆どであった。
強素体を持った人類は最初期からいたとされている。そしてそれを持つ者と持たざる者は長い期間互いの違いが目立ちに目立ち、遂には支配や征服などがされた時代が確かにあったのだ。そんな長い暗い時期を脱す為に作られたのがエスロットだった。エスロットの初期型は最初、戦争の為に作られた。強素体を持つ者、持たざる者が互いに連合国を作り世界を二分した戦争が始まったのだ。大量のジュエルが使われた機体は強素体を持つ人間に遅れを取る事は無かった。そして最も特徴的であったのが強素体を持つ人間には乗れない点だった。
エスロットはジュエルを大量に使う兵装だ。それ故にジュエルは加工され混じり合い。ある特徴を持った。強素体に拒絶反応を示した。混ざり合い別質に昇華したのだ。
戦争時にエスロットを奪う事は当然あり得た。しかしそれに乗っていざ操作しようとした強素体を持った人間は・・・死んだ。
体が破裂したのだ。今現状はこのような事はあり得なくなった。と言うか普通はあり得ないのだ。精々吐血するぐらいらしい。しかし戦争時中にはあえて大量のジュエルを内蔵部に押し込め、奪われた時に拒絶反応を出す様に工夫をし、奪われた際には内部に閉じ込める仕掛けまでしたらしい。奪った者を殺す為に。
訓練施設の教材には実際の写真が載せられていた。搭乗者は居なかった。ただある程度の処理はされていたのだろうが内部、人が乗る筈のスペースの大量の血が妙に生々しさがあった。そして人はこれほどの血を体に流しているのだと教えんばかりに機体の至る所から流れる血に恐怖した。
凄惨だと思った。だが今から50年前に戦争は終結。和平へと世界は舵を取り出した。何よりも問題になったのはジュエルの消費量だった。保持数は両連合共にあったのだ。しかし湯水のように使うジュエルは確かに保持数を減らしていったのだ。限界まで戦った両連合は互いに互いを尊重し合う場所を探し始めた。いや、探すしか無かったとも言える。わからなかったのだ。強素体を持つ人間はエスロットの底が。エスロット側は強素体を持つ人間の底が。互いに牽制を再び始めればいつかまた、戦争は起きる。しかし・・・この脅威に次は・・・そんな事を誰しもが思った。強素体は多彩な攻撃を。エスロットは無数の数を。読めない多種多様な攻撃に頭を悩ませ、人間より遥かに短時間に生まれ出る兵器に互いが互いを恐怖した。そして両国は思ったのだ。ならば奪われる前にと。奪われるならば全て失うのだ。だから失う前に最低限は守れる者を守ろう。そう思ったのだ。
そして、戦争は終結した。それから連合は解体。変わりに全世界から代表を招いた世界会合が開かれるようになった。
恨み嫉みは確かに未だにある。しかし今はそれが薄らいでいる途中だ。
互いが尊重しあえる世界は確かに今出来つつある。
そんな中で出来た訓練施設だった。その中で生活してきた俺たちはその差別を知らない。いや、きっと本当の意味では知ってはいけないのだと思う。
だから俺たちは今笑えているんだと思う。水辺ではしゃぎだした誰かを追いかけて笑う。水をかけられて怒る奴を笑った。
きっとそれで良いんだと、良かったんだと言える日はきっと近い筈だ。
「空、綺麗だね」
誰かが言ったその言葉にみんなで空を見上げた。月の光が透き通る水面が妙にキラキラしている。本当の綺麗だ。
そんな時だった。周りをオレンジ色の街灯が当たりを照らしたのは。