鰈の唐揚げ 葱ソースと白魔法師と翼族のシンワ
「ふぅ~。1ヶ月ぶりの家は、やはり落ち着きますね。
やはり今度からはいくら顔馴染みの頼みとは言え、長期のギルド依頼は断ることにしましょう。
……しかし、ホッとしたら何だかお腹がすいてきましたね。」
長期のギルド依頼を終え。町外れにある自身の持ち家でくつろぐ。背中に生えた翼が美しい。
翼族で治療を得意とする白魔法師のシンワは、お腹が減ったのを感じ。ギルドで久しぶりにあった仲の良い冒険者仲間のアルサが教えくれた。朝倉亭という安くてボリューム、サービス共に満点だと言う食堂へと行くことにした。
◆◆◆◆◆
「えっと、確かこの辺りに細道があるらしいのですが………………あぁ、ありました、ありました。この道を真っ直ぐに進めば良いのですね。」
独り言を呟きながら、幸先良く朝倉亭へと導かれたシンワは、細道奥の朝倉亭に来店する。
カランコローン♪
「「いらしゃいませ(ニャ)」」
「初めてのお客様ですね。それにアルサからのご紹介ですか。
ようこそお越しいただきまして、ありがとうございます。シンワさん。それでは、こちらのシイがお席へとご案内致します。」
何も話していないのにキャラメル色した髪色のミステリアスな雰囲気の少年に、自身の名前やアルサからの紹介だと言い当てられたシンワが、少し警戒しながら驚いていると。
少年から案内を頼まれた猫族の男の子が元気良く返事をし。シンワを席へと案内してくれる。
そんな普通に考えればきみの悪い出来事に、いつもなら直ぐにでも店を後にするシンワなのだが。
今回だけは何故か、少し不思議な安心感に包まれる店内を見渡し、案内された席についてしまう。
すると先ほど席へと案内してくれた猫族の少年が、氷水の入った木のコップやおしぼり、メニュー表なる物を持って戻って来る。
そして小さい体ながらも、お盆からデーブルの上へとコップやおしぼり等を置いてくれ。
何やら一仕事終えたように額の汗を拭うふりをすると、シンワの隣の席にちょこんと座り。
朝倉亭の亭主やシイを含め2人しかいない従業員やメニューの事など簡単な説明をしてくれる。
そうして、少しシイと打ち解けた様子の2人が仲良くおしゃべりしていると。先ほどのキャラメル色した髪色の少年改めて刀弥が水差しを持って、シンワ達の元へとやって来て
「おしゃべり中の所すいません。
シンワさんは、お肉、お魚、魚介、お野菜、卵料理のなかで、どの料理が一番お好きですか?」
質問される。突然の質問に驚きながらも、故郷でよく食べていた魚料理が好きなシンワは『魚料理が好きですね。』と答える。
するとシンワの答えを聞いた刀弥は
「魚料理ですね。了解しました。
本日のお魚料理では、肉厚の鰈が入荷しましたので、お魚料理なら鰈を使った料理をお薦めしております。
それから、実は最近新たに始めたサービスなのですが、朝倉亭を初めてご利用されるお客様に限り。最初の1食分のお食事を無料でお召し上がり頂けるようになりました事を皆様にお伝えいたしております。
それでは、長々と申し訳ありませんでした。
こちらのメニュー表から、お好きな組み合わせの定食をお選び頂き。お決まりになりましたらデーブル上のベルを鳴らし、お呼び下さいませ。」
説明すると頭を下げ、猫族の少年シイを連れて奥に消えていく。
刀弥やシイがいなくなり。改めてメニュー表を見たシンワは、見慣れた文字が並んではいるのだが、聞いた事もない料理名ばかりなのに困惑し。なのに何故かその料理が頭に浮かんできて。
驚くやら困惑するやらでドキドキしながらも、何とか自分の好きな料理を選び。定食を決めていき、デーブル上のベルを鳴らして注文する。
◆◆◆◆◆
しばらくシイが説明してくれた無料の美味しい水を飲んだり。店内に流れる心地好いボリュームの音楽を聞いていると。
黒髪黒目のちまっとした、シイが教えてくれた弓弦と言う人物と刀弥がお盆いっぱいに料理を運んで来てくれる。
「こんにちわ。今日は朝倉亭をご利用頂きまして、ありがとうでございます。
お待たせしました。本日 日替わり定食の
主菜の
・鰈の唐揚げ 葱ソース
小鉢 3種類
・はんぺんの明太マヨ焼き
・五種類の茸とクリームチーズのホイル焼き
・焼き肉サラダ
漬物
・きゅうりの甘酢漬け
汁物
・鶏ささ身と豆苗のスープ
ご飯とスープは、大盛りになってます。
ご飯もスープもおかわり自由の無料ですので、おかわりの際はお気軽にお声かけ下さいね。
それから別注文の
・ビールジョッキ 一杯
・鯖とキノコのチヂミ風
デザート
・イチゴのムース
は、食後にお持ちしますね。
ではでは、長々と失礼しました。ごゆっくりお召し上がり下さい。」
注文の確認をしながら料理を並べ。一度頭をペコリ下げ、弓弦達は店の奥へとまた帰って行った。
弓弦達を見送ったシンワは、さっそく目の前に置かれた。色とりどりで、白い湯気あげるホカホカの美味しそうな料理を前にして、歓喜の声をあげながら食べ始める。
「お~ぉ!!この鰈と言う魚は初めて食べますが、身は肉厚で、カラリと揚がっていてボリュームがあり。葱ソースがさっぱりとして美味しいですね。
それに『はんぺんの明太焼き』もフアフアのはんぺんにたっぷりのって焼かられた明太マヨネーズが香ばしくてビールと合います。
気になって注文してしまった『鯖とキノコのチヂミ風』も、一口大に切られた鯖の身を崩さないようにカリふわと香ばしく焼き上げ。
そこにキムチや舞茸を加え一緒に焼き。溶き卵で上手にまとめてチヂミ風に作られていて、食べやすいですし。
ほんのり香る醤油の味や食べやすい大きさに切られたキムチや舞茸が口の中で合わさり。ご飯にもビールにも合う1品ですね。
食べていてビールがどんどん進みますね。」
シンワが大好きな魚料理を楽しんでいると、先ほどの猫族のシイが何か袋を持ち。シンワのデーブルへとやってくる。
「どうかニャ?朝倉亭の魚料理は、他の店と違って生臭さや塩辛くなく美味しいニャ。朝倉亭の魚料理を食べると他の店では、物足りなくてクセになるニャ。」
自信満々に朝倉亭の魚料理の素晴らしさを話ながら、袋に入った何かをシンワに渡してくる。
「そうニャン!コレ、コレ、同じ魚好きの僕からのプレゼントニャ。僕の好きな鮭お握り、ツナマヨお握り、おかかお握り、焼き明太子お握り、エビマヨお握りの5種類が入ったお握り弁当ニャ。明日の朝にでも朝ごはんがわりに食べてにニャ。」
さんざんその美味しさを力説して、その後しばらく2人で、魚料理の話をして盛り上がっていると。
ご飯と汁物のお代わりを持ってやって来た刀弥に見つかり。シイは連れられ(連行)奥に帰って行った。
◆◆◆◆◆
その後、止まらぬ食欲にご飯と汁物を各1回づつ、またお代わりし。デザートまで心ゆくまで食べきったシンワは、お腹いっぱいになった心地好良いお腹と共に自宅に帰り。
お気に入りのソファーの上で、夢見心地のままアルサに朝倉亭を紹介してもらって本当に良かったと、しみじみ思い。
明日から町で食事するさいは、朝倉亭を利用しょうと心に決め。
ついついお腹いっぱいなため、うたた寝をしてしまうのであった。
こうして朝倉亭に新たな常連客が増え。シンワの何気無い1日が過ぎていく。