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豚の生姜焼きと元聖騎士の指南役



その日 町の自警団やギルド等で指南役をしている。

高い身長にがっしりとした筋肉質の体格で、見映え美しい32才の人格者でもあるルクホワは、指南役の仕事を終え。町外れの家への道を歩いていた。


実はルクホワ、王都でも有名な花形の元聖騎士になり。

ある事件で、昔からの友人でもあり、同僚の王族の三男を任務中にかばい。大怪我をおい、右足に軽い麻痺が残ってしまい。

聖騎士を辞した後、兄弟の中で一番仲の良い五男の兄の薦めで、兄が領主をしているドレッグ町で指南役をしているだ。


しかし、あまり豪華絢爛で華やいだ暮らしや人間関係が苦手なルクホワは、兄が用意してくれた。町中にある貴族街の豪邸を自分には不釣り合いだと辞退し。

兄とルクホワの間で度重なる話し合いをした後、なんとか折り合いがついた。

町外れにある。兄がこれ以上は容認できないと言われたギリギリのラインの少し裕福な商人家族が暮らす規模の庭付き、2階建ての一軒家にメイドやお手伝いなどをおかず。

聖騎士時代の任務中に出会った。拾い子で養子の犬族のココタと2人で暮らしている。



◆◆◆◆◆



「ココタ ただいま~。今 帰ったよ。」


「ルクホワだ、お帰り~!今日はいつもより早かったんだね♪」


いつもより少し早く帰って来たルクホワに、ココタが嬉しそうに駆け寄り。ルクホワの周りをうろちょろついてまわる。


「アッハハー♪こらこら、ココタ。そんなについてまわらなくても、今日はずっとココタと一緒に居られるよ。

それより、今日も勉強楽しかったかい?」


「うん!今日はねぇ、シイやコウメイ達と弓弦が書いてくれた絵本を読んだんだよ。

すごく面白かったし。ルクホワがいつも言ってる、約束を守る事の大切さが少し解った気がしたんだぁ。

それにね。ルクホワが帰ってくるまでの間、弓弦達から習った文字の練習もしたんだよ!今なら僕、ルクホワの名前の綴りも間違えないで書けるようになったんだから!スゴい?ルクホワ。

あっ!それからね。弓弦や刀弥達が、良かったら今日も一緒に晩ごはん食べませんか?て、誘ってくれたんだよ!

ねぇねぇルクホワ、今日も弓弦達の所にご飯食べに行っても良いでしょう?」


今朝仕事に出掛けたきり会えなかったルクホワに会えた喜びで、ふわふわの自慢の尻尾をブンブン動かし。

ルクホワに聞かれた事の他に、今日あった事や弓弦達からの晩ご飯のお誘いの話等、矢継ぎ早にルクホワに話し。体全身を使って、ココタはルクホワへの愛情を伝えようとする。



◆◆◆


実はココタ。ルクホワが指南役の仕事をしている間、家でおとなしく留守番をしていたのだが。

ある日 暇をもてあまし1人で家の近所の探検に出かけ迷子になり。泣いてる所を朝倉亭に住む1つ年上の猫族シイに助けられ。それが縁で友達になり。

ルクホワとココタが住む家が、シイ達が住む店舗兼自宅の一軒隣との事もあり。今では無二の親友で、毎日ルクホワが仕事に行くのを見送ると朝倉亭に通い。

コウメイ達と一緒にお店手伝いや勉強などを弓弦達から教わりながら、お昼ご飯をご馳走になっているのだ。


◆◆◆



そうして今日も、ココタのお願いに基本ノーとは言えないルクホワは、ココタ楽しみの夜ご飯を食べに朝倉亭へと足を運ぶ。



◆◆◆◆◆



カランコ~ン♪


「シイ、来たよ~♪」


元気よく店に飛び込んだココタは、出迎えてくれたシイに飛び付く。


「ココタさっきぶりだニャ。お風呂できてるから早く3人で入りに行こうニャよ♪」


ルクホワとココタが弓弦達の好意で、無料で朝倉亭で夜ご飯を食べ始めた時から、いつしか日課にもなっている。

初めて目にして体験した時には、貴族のルクホワですら驚いた。弓弦宅の豪華で、広々した立派な造りの浴槽に並々貯められた使い放題の温かいお湯

シャワーなる高機能な筒から、温かいお湯が雨のように降り注ぐシャワー

貴族邸でもなかなかお目にかかれないような良い香りがする高価な石鹸

シイが教えてくれるまで使い方すら解らなかった体を洗う液になるボディーソープや頭を洗う専用のシャンプーやリンス

そんな一つ一つにココタと2人驚きながら、今では洗い終わりに潤いが有りながらもサッパリする弓弦宅のお風呂の気持ちよさにハマリ。

今日もまたルクホワは、わんぱく盛りのココタとシイをお風呂に入れてあげるのであった。



そうして、わんぱく坊主2人のパワーにルクホワが若干の若さの衰えを感じつつ。

お風呂上がりの3人は、最近やっと見慣れてきたスエットなるシンプルでいて、動きやすいデザインのパジャマがわりの服をココタやシイを手助けしながら着せ。生活魔法で髪を乾かしたりし。

いつも食事をごちそうになる。厨房横の畳と堀炬燵なる、何故か自然と体がくつろぐ空間に3人で座り。

何時ものように待っていると、お客さんの注文の品を作り終えた弓弦が、お盆いっぱいに料理をのせてやって来る。


「ルクホワ、こんにちわ。いつもシイをお風呂に入れてくれてありがとう。大変だったでしょう?

ココタもシイもお風呂気持ちよかった?」


「楽しかったニャ!今日は、この弓弦に習ったタオルをお湯につけて、空気を含ませ真ん丸にしたニャ。タオル風船を作って遊んだんだニャン!スゴく面白かったニャよ♪ねぇ、ココタ。」


「うん!タオル風船、お湯の中に沈めて手で潰すとね。指の間を空気の気泡がすり抜けていって楽しかったよ!

それにね。僕もシイも、ちゃんと100まで数えきれたんだよ。」


シイとココタの二人が楽しそうに弓弦の問いかけに答える。


「2人とも100まで数えきれたの!スゴいね。頑張ったね。

あっ、そうだ。ルクホワ これ、今回は自信作なんだ。一口飲んでみてよ。」


子供達と話しながらも、沢山の料理をテーブルいっぱいにどんどん並べていた弓弦は、何やら意味ありげに微笑み。

ルクホワの前に、白い泡と黄色い気泡が泡立つグラスをどこか自慢気に置く。


「今日はビールなのか?どれどれ…………うん!かすかに柑橘系の匂いがしてコレなら良いと思うよ。

味の方も、ビール特有の苦みが抑えられていて、柑橘のさわやかな風味がきいてるから美味しいと思うよ。

これだったらビールが苦手な女性のお客さんや、お酒が得意ではないお客さんでも楽しんで飲めると思うし、きっと喜んでくれるだろうね。」


弓弦が出してくれたグラスの中身を飲み。ルクホワが味の感想を教えてくれる。


「本当に!良かった。今回はビールに柚子茶を少し加えて、ビールの苦みを抑えられないかと考えてみたんだ。

それじゃあ、この柚子ビールはお店の新商品決定だね。さっそく明日からメニューに加えるよ。

ルクホワ、いつも試飲(しいん)に付き合ってくれてありがとう。僕や刀弥じゃ、すぐに酔っぱらってしまって仕事にならなくなるから、本当に助かるよ。」


お酒に弱い弓弦と刀弥の変わりに、アルコールに強いルクホワにお店に出す新しいカクテル等の試飲を頼んでいる弓弦は、改めてお礼の言葉を伝える。


「ねぇ、弓弦。お腹空いたニャ。今日の晩ご飯はニャにニャ

?」


「うん、うん。僕もお腹空いたよぉ。」


ここ最近のシイとココタの癖で、必ず出された料理名を弓弦から聞くまでは、食べ始めない変な癖に苦笑いしながら


「シイもココタも待たせて、ごめんね。

今日の晩ご飯は、ココタとルクホワの好きな

・豚のしょうが焼き

・ポテトサラダ

・千切りキャベツ

・プチトマト


シイの大好きな鯛の切り身の新鮮なのが手に入ったからココタやルクホワも食べれるように

・カルパッチョ風

にしてあるよ。


後はお店の余り物で悪いんだけど、いろいろ持って来たからお腹いっぱい食べてね。

それと今日の豚のしょうが焼きは、前にココタやルクホワが食べて美味しいと言ってくれた。タレにすりおろした林檎や玉葱が入っているから美味しいはずだよ。」


料理の説明をしくれた弓弦は、刀弥に呼ばれ。また仕事のため厨房の方に戻って行く。

そんなちょっと忙しそうな弓弦を見送った3人は、さっそくお箸を持ち。思い思いの料理を食べ始める。


「やったー!豚のしょうが焼きだ。僕これ大好き♪

タレに甘味があって、豚肉の脂身も美味し。お野菜はあんまり好きじゃないけど、豚のしょうが焼きなら、添えてある千切りキャベツもタレと絡めてモリモリ食べれちゃうんだ!

それにお米とも良く合って、何杯でも食べれちゃうよ。」


「やったー!鯛の切り身ニャ♪シイの大好きな鯛の切り身が食べれるニャン!!」


「う~ん、本当に美味しいな。

豚のしょうが焼きもタレや玉葱と良く合っていて美味しいし。

付け合わせの千切りキャベツが、しょうが焼きのタレや熱でしんなりしながらも、シャキシャキした歯ごたえが残り。

そこにマヨネーズとしょうが焼きのタレが絡まり、キャベツだけでご飯が何杯も食べれる美味しさだ。」


口々に美味しい美味しいと言葉にし。3人仲良くご飯をお代わりしながら、晩ご飯を美味しそうに食べ進めていく。



◆◆◆◆◆



途中、食べ終えた食器を流しに持って来た3人に、弓弦がデザートを渡したりと時間が過ぎていくなか。

その後、店じまいをした弓弦と刀弥が静かな様子の3人を見に行く。

お腹いっぱいになった3人は、堀炬燵に足を入れたまま、仲良く眠り込んでいた。


そんな3人のいつもの様子に、弓弦と刀弥の2人はお互いに顔を見合わせ。微笑みながら、寝ぼけまなこの3人を起こし。

いつものようにシイを自分の部屋のベットに寝かせ。

ルクホワとココタの2人を、もはや2人の部屋と言ってもいいほどの客室のベッドに寝かせてあげるのであった。


こうして、朝倉亭の何気ない1日が、今日もまた無事終わり行く。



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