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お子様ランチとひな祭りとドワーフとエルフの三兄妹


(にい)ちゃん。僕 お腹すいた……」


「シンラ、ほら、兄ちゃんの分も食べな。」


「なら、兄ちゃん。私の分を半分こして食べようよ。私 今日あんまりお腹すいてないんだ。」


その日 町外れにある少し寂れた雰囲気の武器・防具屋の住居部分の一角で、この家のドワーフ族3兄妹の9才の長男コウメイ、長女モネ7才、次男シンラ5才の3人は、冒険者の依頼で1週間家を空ける。

父親が置いていってくれた1週間分のわずかなお金で買った。朝ごはん用の小さなパン1個を3人で分け合いながら食べていた。



「兄ちゃん。テーブルと部屋の掃き掃除終わったよ………ねぇ、兄ちゃん。(とう)ちゃん、あと何回寝たら帰ってくるの?」


「そうだなぁ。シンラがあと4回 今日みたいにお手伝い頑張って良い子にして眠ったら帰って来るぞ。」


「本当に!僕 兄ちゃんや姉ちゃんの言う事ちゃんと聞いて、良い子で待ってる。あ~ぁ、早く父ちゃん帰ってこないかなぁ~。楽しみ!」


シンラがコウメイの横で父親の帰りを望む頃。庭では長女のモネが、少ない貴重な水を使い、洗濯物を洗っていた。


「モネ、一人で大変だろう。俺も手伝うよ。かしてごらん。」


「兄ちゃん、私一人で大丈夫だよ。

それに兄ちゃん、昨日も朝早くから町まで1人でパン買って来てくれたり。毎日の井戸の水汲みで疲れてるでしょう。少しはゆっくり休んでいいよ。」


「なにいってるんだ。(とう)ちゃんがギルドの仕事で家をあけてる間、長男の俺が家長がわりなんだから、モネは気にせずに甘えて良いんだよ。」


「兄ちゃん。………………どうして父ちゃんの店には、お客さん来ないんだろうね。

武器や防具を作る腕は、ドワーフ1上手いのに…………そんなにドワーフ族の父ちゃんとエルフ族の(かあ)ちゃんが結婚した事は、許されない事なのかなぁ……

……だから母ちゃんのお祖父ちゃんも母ちゃんを連れていっちゃたのかなぁ。」


「モネ……そんな事ないよ。母ちゃんもよく言ってただろう。

父ちゃんと母ちゃんは、種族を越えて大恋愛のすえ結ばれた。赤い糸で結ばれた運命の相手なんだったて。

それに母ちゃんが連れていかれる時、何年かけても絶対に俺達の所に帰ってくるて言っただろう。

だから父ちゃんも鍛冶の腕をかわれて、もっと良い場所への移転の誘いが来ても、この場所で母ちゃんの帰りを待ってるじゃないか。

俺達も貧しくたって、父ちゃんと力を合わせて頑張ろう。

俺も、もっともっと皆が楽できるように頑張るからな、モネ。

それに母ちゃんの口ぐせ『辛い時ほど笑顔でいれば、必ず幸せはやってくる』だろう?」


「…うん……ごめんね兄ちゃん、弱音はいて。私も頑張る。

そうだ、兄ちゃん。洗濯物が終わったら、久しぶりに3人で壁際の小川に蟹取り行こうよ。

一晩中水につけて、近くに生えてる野草と焼けば、少しはお腹の足しにはなるよ。」


少し元気になった様子のモネの提案で、街外れにある。

街を囲む壁の近くを流れる小川に、子供でも簡単に取れる。小さな蟹を取りに行く事にした3人は、さっそく準備をし。人影少ない歩きなれた道を歩いて行く。


そして、いつものように小川を目指し歩いていると。

3人の足が、まるで何かに導かれるように、独りでに見た事ない小道を歩きだし。突然現れた一軒の建物に吸い込まれていった。



◆◆◆◆◆



カランコ~ン♪


「「「いらしゃいませ(ニャ。)」」」


突然声をかけられたコウメイ達は、ハッと我にかえり店内を見渡し慌てて店から出ようとすると


「心配しなくても大丈夫だよ。今日はひな祭りだからね。

君達子供達は、無料でご飯が食べれるように、今日限定でご馳走してるんだよ。」


黒髪黒目の小麦色のバンダナとエプロン姿の小柄な少年が話しかけてきて。甘い顔立ちの少年と猫族の少年に手を引かれるままに、初めて見る立派なテーブルの席に座らされる。


そしてその場に猫族の少年だけが残り。他の2人は、店の奥に消えていった。


「はじめましてだニャ。僕はこの店の看板息子 猫族のシイ5才だニャ。気軽にシイて呼んでニャ。

さっきまで一緒にいたのが、黒髪の方がこの店の亭主 弓弦だニャ。もう1人が副店長の刀弥だニャ。2人とも良い人だから、緊張しなくても大丈夫だニャ。」


「お、俺達は……俺がコウメイ9才、妹がモネ7才、弟がシンラ5才のドワーフとエルフ族の子供になる。俺達、本当に金いっせんも持ってないけど、大丈夫なのか?」


まだ警戒心をといてない妹や弟を守るようにコウメイがシイに聞く。


「大丈夫ニャ。今日はひな祭りだから、弓弦が来店してくれたお子様達には、皆タダでお子様ランチを提供すると決めたのニャ。

だから、3人ともゆったりした気持ちで、食事を楽しむニャ。」


シイの説明を聞きながら弟のシンラや妹のモネが徐々に警戒心をとくなか。

先ほどの刀弥と言う少年が、木のコップ、水差し、おしぼりを持って戻って来て、コウメイ達の前に置いてくれる。


「そのコップや水差しの水も無料ニャから飲むといいニャ。水差しの水が無くったら、言えばおかわりも無料でくるニャ。

それからその白いおしぼりは、ご飯前に両手を拭くと気持ちがいいニャよ。」


刀弥が立ち去った後、シイが教えてくれる。

そして徐々に打ち解けた4人が話していると弓弦と刀弥がお盆いっぱいに料理をのせ。コウメイ達が座るテーブルやって来た。


「お待たせしました。ひな祭りスペシャルお子様ランチだよ。

ご飯が2種類の

・お内裏様の和風鶏そぼろオムライス

・お雛様のチキンライスのオムライス


メインが

・ミニハンバーグ

・唐揚げ

・海老フライ

・タコさんウィンナー

・プライドポテト

・ナポリタン

・ポテトサラダ

・ミニサラダ、付ミニトマト

・焼きコーン

・ミニグラタン


グラタンは、お皿もとっても熱いから、火傷しないように気を付けてね。


スープは

・コーンポタージュ


デザートが

・フルーツ(苺・オレンジ・林檎・キウイ・バナナ)

・カラメルプリン

・プチシュークリーム


ジュースが

・オレンジジュースになるよ。

おかわりもあるから、遠慮しないでお腹いっぱい食べて帰ってね。

ではでは、お腹がすいてるのにたくさん喋ってごめんね。どうぞ、食べて大丈夫だよ。」


料理の説明をしながらコウメイ達やシイの分の4人分の料理をテーブルに並べてくれ。

弓弦達はペコリと頭を下げると、微笑みながら店の奥に戻って行く。


「うわー!兄ちゃん すごいよ。美味しそう♪」


「兄ちゃん 本当にすごいね。私 こんな美味しそうな料理初めて見た。」


「本当だな。けど、こんな高価な料理が本当に無料なのか?」


「コウメイ大丈夫ニャ。安心して食べるニャ。シイはお腹ペコペコだから食べるニャよ。いただきますニャ。」


3人を安心させるために早速食べ始めたシイの姿につられ。

お腹ペコペコの3人は、久しぶりのまともな食事を口にする。

するとそのあまりの美味しさに、なぜか涙がポロポロとこぼれてきてしまい。涙が止まらないまま一口一口と料理を口にしていく。

そうしていると弓弦達が新しいおかわりを持って来てくれ。コウメイ達の隣に座り。3人の背中を優しく撫でてくれる。


そして何故だか、弓弦が作ってくれた料理を一口食べ進むごとにコウメイ達3人の心とお腹がじんわりと暖かくなっていき。

知らず知らずのうちに今までの自分達家族に起きた出来事をポツリポツリ話していた。



◆◆◆◆◆



おかわりを繰り返し。デザートまでしっかり食べ、パンパンのお腹と悩みや不安を弓弦達にぶちまけ。

軽くなった心で夢見心地の3人は、帰りぎわに弓弦達から貰った。

今日の夜用の中身のぎっしり詰まったお弁当や明日の朝用にとふあふあのパンや日持ちする焼き菓子等のたくさんのお土産を手に家路への道を歩いていた。


「兄ちゃん 美味しかったね。お土産もいっぱいくれて優しい人達だったね。」


「本当だね。父ちゃんと母ちゃんの事を話しても馬鹿にしなかったし。良い両親だねて誉めてくれたもん。モネすごく嬉しかった!

それに明日から、朝10時から1時までお店で働いたら、朝昼はお店の賄い料理と夜は今日みたいにお弁当持たせてもらえるから助かるね。

あと、安くてごめんねて言ってたけど、お給料も貰えるんだもん。夢みたい。」


「本当だな…………。」


「あれ?兄ちゃん、どうしたの?何か心配事?」


「いや、何もないよ。明日から何を着ていけば失礼にあたらないか考えてたんだ。」


「そうだよね。シイもよく見たらすごく高価な服着てたもんね。悩むね。」


兄妹を誤魔化したコウメイだったが、実は帰りぎわコウメイだけ呼び止め、弓弦がこんな事を話しかけたのだ。


「コウメイ、大丈夫だよ。

君が心を痛めている原因のお母さんの件は、もうすぐしたら君達家族のもとに無事帰ってくるよ。

それにお父さんも不慣れな危ない冒険者の真似事をせずとも、お店一本で食べていけるようになるよ。

だから君は、兄妹や家族を守るために無理して早く大人にならなくても大丈夫なんだよ。

だって君は、まだ9才になったばかりの子供なんだから、僕達大人にたくさん甘えて良いんだよ。

何か困ったことがあったら僕達に相談しにおいで、きっと力になってあげるから。」







◆◆◆◆◆




それから3か月後。

弓弦の言葉通り。祖父に連れ戻されたエルフ族の母親が、家族のもとへ無事に戻って来た。


そしてドワーフ族の父親の経営する武器・防具店も、町の上位冒険者が使ってくれた事で、高性能が冒険者内でしれわたり。

町外れながらも、確実に固定客をつかみ。店が起動にのり。

父親が危険な冒険者の真似事をせずとも、家族5人毎日笑って過ごせる生活を手にいれる。


そしてコウメイ達もいまだ朝倉亭に通っては、簡単な作業をお手伝いし。

弓弦達から文字の読み方、書き方、計算を習い。

美味しい賄いやお菓子に武器・防具店のお店で忙しい両親の為に晩ごはんのおかずにと2~3品持たせてくれ。

知らず知らずのうちに、毎日の生活の中で、将来の可能性を広げていった。



ある時コウメイは不思議に思い。

母親によく古いしきたりにきびしい里のエルフの人達が、家に帰してくれたねと聞くと。

母親も毎日家に帰るため協力者の妹達の力を借り。里の人達の行動を探っていたところ。

ある日 村の者達が里で一番偉い大婆様に呼ばれ。

屋敷に出掛けて行くと、帰って来ると人が変わったかのように古い疑問だらけのエルフ上位の考えのしきたりを捨て。

母親が家族のもとに帰る事を許したとの事。


他にも母親の用に、エルフ以外種族の家族や愛する者から引き離され。エルフの里に連れ帰されたエルフ族の者達も、皆家族から笑顔で見送られながら、愛する者や家族が待つ家に帰されたらしい。


その話を聞いて、コウメイはきっと弓弦達が力を貸してくれたんだと確信しながら、明日もまた朝倉亭で弓弦達の手伝いを頑張る事を心の中で誓うのであった。




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