豚バラカレーと魔獣使いの黒エルフのライラック
その日 魔獣使いで黒エルフ族のライラックと相棒で魔獣のセルリアンは、仕事を終えギルドからの帰り道町外れの道を歩いていた。
するといつもはライラックの隣をぴったりと歩く。真面目なセルリアンが、何かに導かれるようにフラフラと小道に入っていく。
慌ててライラックが追いかけながら名前を呼ぶも、セルリアンはライラックの声が聞こえていないかのように、どんどん歩く速度を早め。最後の方は駆け足になり。
小道の奥に突然現れた。ある一軒の見た事もない建物に入っていってしまう。
「あぁ、どうしょう。見た事ないお店なのに!
セルリアンにもしもの事があったら!これはまずい!急いで謝らなくちゃ!」
最悪の事態も考えながら、真っ青な顔をしたライラックがセルリアンに送れる事、数分後。その建物に入店するのであった。
◆◆◆◆◆
カランコロ~ン♪
「いらっしゃいませ。……あっ!ライラックさんですね。
セルリアンがラベンダー色した瞳の男性と教えてくれていたので解りました。
セルリアンならあちらのテーブルで、お待ちしてますよ。ご案内しますね。」
この辺りでは珍しい黒髪黒目の小麦色したバンダナとエプロン姿の小柄な少年が、セルリアンとまるで話したかのごとくライラックに話しかけ。セルリアンがいるらしいテーブルへと案内してくれる。
今だライラックはドキドキしながら、セルリアンがいる席へと案内してもらう。
するとその席は、床より3段高くなった床にふかふかの気持ち良さそうなカーペットが敷いてあり。
真ん中にローテーブルが置かられ。席の壁際には、沢山のふかふかなクッションがつまれていた。
そしてそのふかふかのクッションの上に、ライラックが必死に追いかけ。一時はどうなる事かと顔を真っ青にさせた犯人のセルリアンが優雅に寝そべり。
両脇に猫族の少年と甘い顔立ちの少年2人を侍らせ。
背中を気持ち良さそうに撫でてもらいながら、片目でライラックをチラッと見て、まるで待ちくたびれたかのように大きなアクビをする。
そんなセルリアンの様子にムカッとくるやら、呆れるやらでライラックが立ち尽くしてあると、先ほどの少年が
「セルリアン、ライラックさん 来ましたよ。」
声をかける。するたセルリアンがむくりと起き上がり。
クッションに座ると、何やらムニャムニャと話始め。
しばらく2人で話していたかと思うと少年が『解りました。少々お待ち下さい。』と言い残し。甘い顔立ちの少年と共に店の奥へと歩いて行ってしまった。
訳が解らないまま、その場に残されたライラックが立ち尽くしていると、今だセルリアンを嬉しそうに撫でている猫族の少年が
「ライラックのお兄ちゃん、靴を脱いで隣に座るニャ。」
声をかけてくれる。訳が解らないライラックであったが、少年に言われるままに靴を脱ぎ。少年が渡してくれた、ふかふかの座布団に座る。
「はじめまして。僕 朝倉亭の看板息子 猫族のシイだニャン♪。
さっきまで僕とセルリアンと一緒にいたのが、この店の副店長の刀弥になるニャよ。それからライラックさんを案内したのが亭主の弓弦になるニャン。
次にこの店は、選ばれた人しか訪れずれられない。
ボリューム満点!サービス満点!安くて旨いと、幸運なお客さん達の間で人気の朝倉亭と言う不思議な食堂なんだニャ。
だから魔獣のセルリアンとも、この店の中なら誰でも普通にお話ができるニャし。
魔獣さんや使い魔さん達も人と同じ料理が普通に食べれるニャよ。
だからセルリアンもライラックさんも導かれて朝倉亭にたどり着けて、本当にラッキーだったニャ。
それに今日は、セルリアンが僕と刀弥のお願いを聞いてくれて、背中を10分間撫でさせてくれたニャから、ライラックさんもセルリアンも無料でご飯が食べられるニャよ。
さっきセルリアンが、弓弦にライラックさんの故郷料理で、好物のスパイスのきいたスープみたいな料理の説明してたニャから、もうすぐ弓弦達が持って来るばずだニャ!
楽しみに待ってるニャ♪」
教えてくれ。2人でセルリアンの毛並みを整え始める。
そうしてその後、刀弥が氷水入りの木のコップ、水差し、おしぼり、セルリアン用の水入り深皿を持ってきてくれ。
猫族のシイと共にライラックやセルリアン達にメニュー表を見せながら、朝倉亭の細かな仕組みを2人に解りやすく説明してくれる。
◆◆◆◆◆
しばらくするとお店の奥から刀弥を呼ぶ声が聞こえ。ほどなくして、お盆いっぱいに料理をのせた刀弥と弓弦が戻ってくる。
「お待たせしました。一応ご注文に近いと思う
メインの
・豚バラカレー
汁物メインの付属料理の
・らっきょうと福神漬け
ミニメイン2つ
・一口ポテトコロッケ3つとハムカツ2枚
・青物野菜のミニサラダ
・マッシュポテト
卵料理1つ
・温泉卵
小鉢3つ
・トマトの香草焼き
・小松菜と人参のごま和え
・イカ団子の一口揚げ
お漬物が
・2色パプリカのマリネ
汁物がキャベツとベーコンのコンソメスープ
ご飯もスープもおかわり自由なので、おかわりのさいは呼んで下さいね。
デザート
・黄桃のクランブルパイ
デザートは、食後にお持ちします。
それからこちらがシイ達を楽しませてくれたお礼のラッシーになります。ではでは、長々と失礼しました。ごゆっくり どうぞ。」
刀弥やシイを連れ、ペコリと頭を下げた弓弦達は、店の奥へと戻って行く。
「すごい!故郷で食べてたレカスープより、たくさんのスパイスを使っているのか、スパイシーで奥深い香りする。
なぁ、セルリアンもそう思わないか?」
「ガウガウ、ガウガウガウ」
「解った、解った。俺もお腹ペコペコだから、さっそく食おうぜ。」
お互いに気になるホカホカの白米にかかった豚バラカレーを白米ごとスプーンですくい口に頬張る。
すると豚バラの旨味や煮くずれて旨味をまとったじゃが芋、人参、玉葱等の具材達の美味しさが口中に広がり。
更に辛さの奥にあるフルーティーな甘味や複雑に配合されたスパイスの風味や隠し味などの旨味も加わり。
ライラックとセルリアンは、美味しさが凝縮された豚バラカレーに夢中になる。
そうして、モグモグと無言で豚バラカレーを食べているとおかわりを持って来たシイから温泉卵を加えて食べたら、濃厚な黄身と合わさり。カレーがまろやかになって美味しいとの情報や
ミニメインのポテトコロッケやハムカツをトッピングして食べても豪華にパワーアップして美味しいと話を聞いた2人は、お腹いっぱいになるまでおかわりを繰り返し。
デザートまでしっかり食べ尽くして、朝倉亭を満喫するのであった。
◆◆◆◆◆
「はぁ~久しぶりの満腹でお腹が苦しいなぁ、セルリアン。」
お互いにパンパンのお腹をかかえ。満面の笑みで、幸せそうに町外れにある。セルリアンと一緒住んでいる持ち家への家路の道を歩いていた。
「ガウ、ガウガウ、ガウガウガウガウ」
「そうだなぁ。俺達の事を普通に接してくれてくれたし。
タダなのに、あんなにお代わりしても、嫌な顔や態度ひとつせずに、逆におかわりを進めてくるなんて、本当に良い店だよな。
シイが言うようにボリューム満点、サービス満点、安くて旨い朝倉亭だったな。
しかし、家近くにあんな良い店があったなんて知らなかったよ。セルリアン知ってたか?」
「ガウ、ガウガウ。」
「そうだよな。知らなかったよな。知ってたらもっと前から通っていたよな。
まぁけど、今回はセルリアンの活躍に感謝だぜ。教えてくれて助かったよ。ありがとうな、セルリアン。」
「ガウガウ、ガウガウガウガウ。」
「そうだな。明日からの食事は朝倉亭で決まりだよな。」
「ガウガウ!」
「よし!なら、腹ごなしに家まで競争だ!
先に家にたどり着いた方が、明日の朝倉亭での食事でプリン1個食べれる権利を獲得できると言うのはどうだ?」
「ガウガウ♪」
「おう!俺も負けないからな!」
ライラックとセルリアンは走り出す。
こうして、ライラックとセルリアンの1日が過ぎていくのであった。
◆◆◆◆◆
ちなみに町外れに少々無理して購入した持ち家にライラック達が住んでいる理由は、街中だと少なからずある。
黒エルフや魔獣への嫌悪の目や差別、悪質な借宿などでの魔獣連れえの高額な請求等がたびたびあり。
街中よりも人も少なく格安で、少々古いが庭付きで一軒家が購入できる町外れに住んでいるのだ。