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卵かけご飯と調合師ニッカ



友人のアルサと共同購入した。町外れにある。少々年期の入った庭付き一戸建ての修理や、ここ連日の引っ越し作業をなんとか無事終えた。

エルフと人間の両親の間に産まれた調合師のニッカは、朝からお腹がペコペコで疲れきっていた。


なのに何故か、まだ少し薄暗い早朝の町外れの細道をアルサに問答無用に手を引かれ。早足で歩かされていた。


「アルサ、何処に行くんだよ!

僕引っ越し作業で体も心もクタクタなんだけど、それにこんな町外れに何があるって言うのさ!」


昔馴染みで、大食いの狼族で冒険者のアルサに、少々強めの口調で話しかける。

そんなカリカリしたニッカの様子に、いつもならブツクサ文句を言うはずのアルサが満面の笑みで振り向き。


「まぁ、待て。もう少しで、この世のものとは思えない旨い飯が食える店に着くから。

それに、あの家を買うのに少し金が足りなくて困ってた俺を助けてくれたお前に、俺からのささやかなお返しなんだぞ。」


少し照れ臭そうに苦笑いしながら、更にスタスタと歩みを進める。


「ま、まぁ、アルサがそこまで言うなら、もう少しだけ歩いてあげない事は無いけど……。」


そしてそれから、もう少し歩くと本当にアルサが言っていた。見たことなもないような美しい造りのお店が現れる。


そんな、見た事もない造りの美しいお店に、少しの間 見惚れていニッカだったが

通いなれたアルサにさっさと手をひかれ。心の準備も無いまま、店の扉をくぐる事になるのであった。



◆◆◆◆◆



カラコロ~ン♪


「「いらっしゃいませ。」」


店内にはいると小麦色をしたバンダナとエプロン姿の10代後半の黒髪黒目の小柄な少年と、キャラメル色した髪色の甘めの顔立ちの少年達2人が出迎えてくれ。


「アルサ、おはよう。今日は早いんだね。席はいつもの席でいいの?」


キャラメル色した髪色の刀弥(とうや)と言う少年が、話しかけ。アルサ馴染みの指定席になる。カウンター席へと2人を案内してくれる。


そして案内と同時におしぼり、水の入った木のコップ、水差しを2人の前に出してくれ。

接客を終えた刀弥と弓弦に、アルサがニッカの事を紹介してくれ。軽い自己紹介を終えると朝倉亭・亭主の弓弦が


「アルサとニッカさん。注文は、朝御膳の卵にしますか、納豆にしますか?」


よく解らない事を聞いてくる。するとそれを聞いたアルサが


「そうだなぁー。今日は俺もニッカも卵で、ご飯と味噌汁を大盛りで頼むよ!それから シイはまだ寝てるのか?」


「2人とも卵で大盛りね。

それからシイでしょう。ごめんね。昨日遅くまで起きてて、今日はちょっとまだ寝かせてるんだ。」


またよく解らない注文をアルサがして。今日はいないと言う、シイと言う少年の話もする。


アルサの奢りになるので、隣の席で黙って弓弦とアルサのやりとりを聞いていたニッカであったが。

弓弦と刀弥が奥の厨房に行くのを見送ると、アルサに質問する。


「なぁ、アルサ。さっき話してたシイと言う子や朝御膳や卵や納豆とは、なんの事なのだ?」


「あぁ、シイはなぁ。この店の看板息子で、5才の猫族の男の子になるんだ。それにいつも店に来たら、俺の話し相手になってくれる良い奴なんだよ。

まぁ、あと本当は飯が来てからの楽しみにしてたんだけど……しょうがない教えてやるか!

この店は朝5時から8時の間、朝御膳の1メニューだけを提供してるんだ。

で、そのご飯のお供として、卵か納豆のどちらかを選んべると言うわけなんだ。

俺も最初は知らなくて、徹夜明けの仕事終わり食いに来たら、5時から8時の朝の3時間の間は、朝御膳だけと言われ。ガッカリしたんだ。


けど、こんがりふっくら焼かれた干物、ふあふあしっとりの厚焼き玉子2切れ

小鉢2つ、具沢山の味噌汁、漬物盛り合わせ、焼き海苔、お茶が付いて

ご飯、味噌汁、卵、納豆、お茶がおかわり自由の食べ放題で、銀貨4枚なんだぜ!

しかも日によって干物や小鉢、味噌汁、漬物の具材が変わっていて、毎日食っても飽きないし。

今じゃ、この3時間限定の朝御膳を狙って、食いに来たりしてるんだ。」


最初はもったいぶっていたくせに、最後は何故か得意気に教えてくれ。


「しかも、ニッカ!驚くなよ。ここの店の水は、冷えて氷も入ってるのにタダなんだぜ!

しかもその水差しの水が無くなったら、無料でお代わりも出来て、氷も言ったら無料でくれるんだぜ!」


興奮気味のアルサの話を聞きながら、水を一口飲み。話を聞いていたニッカは


「えっ!嘘でしょう!?王都でさえこんな上質な水や氷をタダで提供してる店なんて、何処を探しても無いよ!」


ビックリしつつ。改めてこの店のクオリティーに驚いていると、弓弦と刀弥の2人が今だけやって来て。

白い湯気がモクモク上がる、お盆一杯にお皿が乗った朝御膳をアルサとニッカの前に置いてくれる。


「お待たせしました。朝御膳、卵セットになります。

アルサは沢山食べるから、直ぐにおひつと生卵が入った籠と急須持ってきますね。

ニッカさんも遠慮しないで沢山食べて下さいね。ではでは、ごゆっくりどうぞ。」


弓弦が2人に話しかけ。ペコリと頭を下げると、また奥の厨房へと帰っていく。



そんな弓弦達を見送りながら、お盆一杯の色とりどりで、美味しそうな匂いと料理の数々に心を弾ませ。

お腹ペコペコのニッカは、さっそくアルサに卵かけご飯の作り方を習い。

一口 卵かけご飯を口にふくみ。食べみると新鮮濃厚(しんせんのうこう)な生卵の旨味と、甘さの効いたまろやかな味わいの卵かけご飯専用のだし醤油が炊きたてホカホカの白ご飯と絶妙に絡まり合い。美味しい事、美味しい事。


いつもは食が細く、あまり食べない痩せすぎのニッカであったが、気がつくと知らず知らずの内に、あっという間に1杯目の卵かけご飯を食べきってしまっていた。


そして、隣で3杯目の大盛り卵かけご飯を勢いよく食べているアルサから、一気にご飯と卵液全部を混ぜてから食べる食べ方と、食べる分づつご飯と卵液を混ぜながら食べる食べ方では、味わいが変わるぞ等の他の卵かけご飯の食べ方を聞いたニッカは、元気よく


「すいませ~ん。ご飯のおかわり大盛りでお願いします!」


ご飯のおかわりを頼むのであった。



◆◆◆◆◆



「ふぅ~食った、食った。これで今日も1日頑張って働けるぞ!

それにボリューム満点で、旨くて安い良い店だったろう。なぁ、ニッカ!」


お腹一杯朝ごはんを食べ。エネルギーをチャージし、元気一杯になったアルサは、ニッカに話しかける。


「そりゃあ、いくらおかわり自由の食べ放題でも、おひつ2回もおかわりした客に、嫌な顔1つせず。まだおかわりを聞いてくるなんて、客に良心的過ぎる良い店だよ。

逆に店が潰れないか心配だよ。」


ニッカの答えにアルサは何やら考え出し始め。


「ありゃ、やっぱり俺、食い過ぎてるかなぁ……。弓弦達の優しい言葉に甘えて、店に迷惑かけちまってるかも知れないよな………。」


落ち込んだ様子で呟く。


「ば、馬鹿!そんな分けないだろう。弓弦や刀弥達もアルサが美味しそうに食べる姿、嬉しそうに見てたし。

まだまだお代わりして食べたとしても、怒ったりとか迷惑そうな様子もなかったぜ。安心しろよ、アルサ。

………………それと店に連れてきてくれた事と奢ってくれて、ありがとう。美味しかったよ。」


アルサを励ましながら、普段から強気な正確で、なかなか感謝の言葉を照れ臭くて言えないニッカが、言いづらそうにお礼を言い。

しかしニッカに慰められ。立ち直った鈍いアルサは、その貴重せいに気づかず。


「おう!今度は、日替わり定食 食いに行こうぜ!

日替わり定食も朝御膳よりボリューム満点で、ボリュームのわりにたった銀貨五枚で安くて旨いんだぜ。」


次のご飯の事に気をとられているのであった。


「…はぁ~、アルサらしいと言えばアルサらしいか。しょうがない。アルサだもんね。」


「えっ?何か言ったか?」


「ううん。何でもない。それより帰ったら、居間のカーテンつけてくれる?ちょっと高くて、僕では手がとどかない。」



そんなこんなの話しをしながら、朝ごはんを食べて元気になったアルサとニッカの2人の1日が、今日もまた始まっていくのであった。



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