ラムチョップステーキと母の日
その日 狼族で冒険者のキュールの家では、祖父母や両親、キュールの兄弟7人の総勢11人の大家族がよそ行きの綺麗な格好をして、久しぶりの贅沢の外食に出掛けようとしていた。
「兄ちゃん!兄ちゃん!久しぶりの外食楽しみだね!」
「僕も僕も!すっ~ごい楽しみだぜ!」
「私も楽しみ!」
と幼い兄妹を両手にまとわりつかせキュールが父親が出てくるのを待っていると母親が近づいてきて
「キュール。今日は、ごちそうを食べさせてくれてありがとうね。けど、一人で11人分の食事代大丈夫かい?
足りなかったら、母ちゃんに言いなね。こそっと足らない分を出してあげるからね。」
「母ちゃん、ありがとう。けど、今日は母ちゃん達に日頃の感謝をする『母の日』なんだよ。
だから、お金の事は心配しなくても大丈夫だ。
それに今日食べに行く朝倉亭は、どの料理も美味しくて、ボリューム満点で腹いっぱい食える激安店だから、財布にも優しいんだぜ。」
「そうなの?なら安心だね。けど、何かあったら母ちゃんに言ううんだよ。」
と昔 異世界からやって来た勇者が広めたとされる母の日を家族全員分をキュールが支払い、ご馳走を食べて祝う事に
キュールの財布の中身を心配した母親のエリエがキュールと話していると、家の戸締まりを確認していた父親が出てきて出発する。
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カラコローン♪
「いらしゃいませ。」
「キュールニャ!いらしゃいませニャ。」
「刀弥、シイおはよう。あの今日11人で予約してたんだけど、もう大丈夫かなぁ?」
と朝倉亭に着いたキュールが、何度か通い顔馴染みになった朝倉亭店員の刀弥とシイに出迎えられながら予約の話をすると刀弥が
「キュールさんで、11名様の予約でしたね。
はい。大丈夫ですよ。それでは、お席にご案内しますね。」
予約帳の確認をして、幼い兄弟がいるからと気をつかってくれ。少々騒いでも大丈夫なように、キュールも初めて利用する個室の部屋に案内してくれる。
そして、刀弥が案内してくれた広々して、心地好い雰囲気の個室にキュール家族がリラックスしていると
最初利用した時にキュールも驚いた、無料で何杯も飲める氷入りの美味しい飲料水や水差し、おしぼり、メニュー表などを持って刀弥が戻って来て、キュール達があれもこれもとなりながら悩みに悩み決めた料理を注文をすると厨房の方に戻って行った。
「ほぉー。この緑茶と言う温かいお茶は初めて飲むが、香り豊かで渋味の中に旨さがあり。実に美味しいのう~。婆さんは、どうじゃ?」
「そうだねぇ。私も初めて飲むが、お茶の香りも良いし。口の中がスッキリして美味しいねぇ。」
キュールの高齢の祖父母にと朝倉亭からのサービスで、温かい緑茶の入った湯飲みとおかわり用の緑茶が入った急須を提供してもらい、祖父母が美味しそうに味わうなか。
隣の席では、幼い兄弟達が初めて飲む氷入りの冷たい飲料水に
「す、す、すげえー!兄ちゃん!水に氷が入ってるよ!」
「うひゃ~!冷たい!兄ちゃん 水が冷たいよ!」
「美味しい~!お母ちゃんお水が冷たくて美味しいよ♪」
「…ガリガリ、ガリ……氷って、こんなに旨いんだなぁ!」
と初めて飲む氷水や氷に大興奮していた。
そうしているとワゴンいっぱいに注文の品の料理を乗せた弓弦と刀弥がやって来て
「お待たせしました。今日は、朝倉亭をご利用頂きありがとうございます。私は、この店の亭主 弓弦になります。」
と弓弦がキュール達家族に挨拶して、注文の品の料理を確認しながら並べてくれる。
「そして今日の料理は、ご注文のさいに大皿でとご注文されたので、全て大皿になっております。
こちらが注文の品の主菜が
・ゆで豚~ガーリックバターソースがけ~
・鶏むね肉のにんにく味噌のはさみ揚げ
・五種野菜入り・ミートローフ
・アサリと野菜の卵とじ~和風あんかけ~
・鰯のメンチフライ
・鰹のたたき~香草野菜のせ~
になります。
次に副菜の
・手羽元と新じゃがのカレー鶏じゃが
・新キャベツと牛肉の焼肉サラダ
・香り野菜のおかか醤油サラダ
・薄焼き卵の生春巻き風
・そら豆のかき揚げ
箸休めのお漬け物が
・春キャベツと胡瓜のあっさり漬け
・春野菜のぬか漬け
・新じゃがといんげん豆のなます風
・カリフラワーとセロリの柚子こしょう漬け
・春人参と大根のナンプラー風味の酢漬け
汁物が
・野菜碗
になります。
ご飯と汁物、お漬け物は、バイキングコーナーで、おかわり自由の食べ放題になりますので、お腹いっぱい食べて下さいね。
デザートの
・苺のトライフル
・プリンアラモード
・フルーツケーキ
・レアチーズケーキ
・レーズンクリームクッキー
は、食後にお持ちしますね。
・ジョッキビールが5杯になります。
それから、こちらのキュールさんから事前に注文された。お母様とお婆様への日頃の感謝の気持ちを込めた特別料理の
・ラムチョップステーキ
になります。
そして、母の日限定の当店からのサービス品の
・鶏の唐揚げ
・ポテトサラダ
・フルーツ盛り合わせ
になります。
ではでは、長々と失礼しました。ごゆっくり、どうぞ。」
と確認を終えた弓弦達は、1度おじきするとお店の奥に戻って行った。
そうして初めて見る美味しそうな料理の数々を前に、キュール達は早速食べ始める。
「このゆで豚旨め~♪じいちゃんや婆ちゃんも食えるように薄く切ってくれてるし。
茹でてるだけのように見えるのに。なぜか肉の旨味がギュッと肉に閉じ込めてあって、風味豊かな熱々のソースが良く合い。
食欲をそそってなん切れでも食べれるよ!」
「こっちのにんにく味噌のはさみ揚げも旨いぜ!
あっさりした鶏肉にニンニクの風味がガッンときて、後味ひく旨さだぜ。」
「僕は、手羽元と新じゃがのカレー鶏じゃががコッテリした甘辛のスパイシーな味で美味しかったよ。
それにじゃが芋がホクホクして、ゴロンと大きく食べごたえあって、ついつい手がのびちゃうよ。」
「ワシは、このミートローフと言うひき肉料理が美味しかったぞ。ソースも旨かったが、野菜が苦手なワシでも気にならないくらいに細かく切られた何種類もの野菜が入っておるが、柔らかくペロリと食べれたわい。」
「私は、新キャベツと牛肉の焼肉サラダがお野菜もモリモリ食べれて美味しかったわ。」
「俺は、このビールが旨い。冷たくてシュワシュワした喉ごしがたまらん!」
「私と義母さんは、キュールが頼んでくれたラムチョップステーキがスゴく美味しかったわ。
香草やスパイスがよくきいてて。昔 里で、母が作ってくれて食べていたお肉を思い出すわ。
この骨の所のお肉が固くて、お母さん昔から好きだったのよね。」
と同じ里からお嫁に来たキュールの母と祖母は、こちらではめったに食べられない里の味に似たラムチョップステーキに懐かしさを思い出しながら、しみじみとかみしながら食べ進めていく。
「へぇー!そんなに美味しいんだ。僕も食べてみたい!」
「私も私も!」
「僕も僕も!」
と母親や祖母が美味しそうに食べるラムチョップステーキに幼い弟や妹達が興味を持ち追加注文したり。
父親が気に入ったビールのおかわりをしたりとキュール家族は、美味しい料理やデザートの数々に舌鼓をうち満足する。
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そして支払いのさいには、初めて朝倉亭を利用するお客様と紹介してくれたお客様は無料になると言われ、11人分の定食代が無料になり。
ビール代と事前に予約した料理代などの支払いでいい事にビックリしながら、改めて朝倉亭のスゴさに驚いたキュール達 家族が帰ろうとすると。
弓弦達から呼び止められ、さらに朝倉亭からの母の日の特別サービスと言われて
祖父母が気に入った緑茶の茶葉や急須と家族分の湯飲みのセットをプレゼントされたり。
幼い兄妹達には、朝倉亭に来店した記念にと一人一人に焼き菓子の詰め合わせが可愛らしくラッピングされた袋を貰い。
母親と祖母には、オシャレにラッピングされた綺麗なスカーフと
明日の朝、母親が楽できるようにと魔法袋に入った食べごたえある11人分のサンドイッチやスープ、果物等をプレゼントされる。
キュール達が驚きながら、なんのお返しも出来ないからと断ると。
弓弦達は笑いながらお返しなんか要らないし、今日だけの限定サービスだから気にせず受け取って欲しいと言い渡してきた。
そうして、何度も断るのも悪いと考えたキュール達は、感謝の言葉を言いながら弓弦達のプレゼントをありがたく受け取り。
心もお腹もポカポカした温かい気持ちになり、大満足で家路へと帰る。
そして、キュール達が感じた暖かいポカポカした気持ちの人には見えない、キラキラした物が空に舞い上がり、少しだけこの世界を癒していくのであった。
こうして、朝倉亭に月に何度か訪れる事になるキュール家族が常連客に仲間入りする。




