車麩の唐揚げと白象族のクラム
その日 冒険者で白象族のクラムは、冒険者仲間で友人でもあるアルサと一緒に。
故郷を離れてから続く、クラムの長年の悩みを解決出来るかもしれない。ある食堂を目指していた。
「なぁ、アルサ。本当にその食堂は、こんなワガママな頼みを言っても大丈夫なのか?」
「心配すんなって、クラム。この前クラムから相談受けて、その日のうちに弓弦に相談したら、そう言う理由のある頼みなら遠慮せずに言ってもらえたら、いくらでも対応出来るって言ったぜ!
それに朝倉亭の飯は、何を食ってもハズレの無い旨さだから、お前ビックリすんなよ。」
少し半信半疑のクラムとお腹ペコペコで大食いのアルサの2人は、アルサの案内で無事に朝倉亭に着き。
いつものように出迎えてくれた看板息子の猫族のシイとひとしきりじゃれた後、アルサの指定席でもあるカウンター席に並んで座るのであった。
「アルサとクラムさん いらしゃいませ。
どうぞ、こちらコップと水差し、おしぼり、メニュー表です。
それからアルサへの今日のオススメは、お肉③の骨付き鶏もも肉の唐揚げになるよ。
骨付き鶏もも肉を弓弦秘伝の唐揚げタレに一晩漬け込んでいて、それをサクッとジューシーに揚げた。
食べごたえある大きな唐揚げが1羽分の2本セットになってるから、アルサでも満足できる一品だと思うよ。
それからこちらが、クラムさん専用の精進料理風のベジタリアンメニューのメニュー表になります。
種族がら肉や魚、乳製品が食べられないとアルサから聞きましたので、こちらに書かれておりますメニューには、一切肉も魚も乳製品も使われておりませんので、ご安心下さい。
では、ご注文のお決まりの際はテーブルに置いてある呼び出しボタンを押して、お待ちください。直ぐに注文をとりにまいります。」
お肉大好きのアルサには、三種類のお肉メニューの中で一番ボリュームがあり。食べごたえがあるメニューを進めながら、クラム専用のメニュー表の説明をして、接客に戻るのであった。
そうして、あれもこれもと食べたい物ばかりの気になる料理名が並ぶメニュー表を見ながら、何とか注文を終えたアルサとクラムの2人は、腹ペコのお腹をかかえ。
料理が来るのを今か今かと待ち構えていると、ワゴンいっぱいに料理をのせた弓弦や刀弥がやって来る。
「アルサ、クラムさん いらしゃいませ。僕がこの朝倉亭の亭主 弓弦になります。
そして、こちらが2人の注文の品で。
アルサ主菜の
・骨付き鶏もも肉の唐揚げ
クラムさん主菜の
・車麩の唐揚げ~春キャベツの千切り・トマト付き~
副菜3品が
アルサが
・揚げ新じゃがのピリ辛炒め
・焼豚肉サラダ
・春キャベツたっぷり春巻き
クラムさんが
・春キャベツの梅シソ炒め
・山芋とオクラのピリ辛和え
・切り昆布のエスニックサラダ
お漬け物が5品の中から2品
・蕪の蜂蜜レモン漬け
・ミニトマトの生姜マリネ
今日の汁物が
・新じゃがと新玉ねぎの味噌汁
ご飯と汁物、お漬け物は、バイキングコーナーで、おかわり自由の食べ放題なので、お腹いっぱい食べて下さいね。
アルサの追加注文の
・チャーシューと蕪のマスタード炒め
・柚こしょう風味の塩肉じゃが
クラムさんの追加注文の
・揚げ豆腐
お2人の頼んだ
・ビールジョッキ
デザートが
アルサが
・みたらし団子
クラムさんが
・ヨモギ団子
で、食後にお持ちしますね。
それから、こちらがサービス品の
・タケノコと湯葉の煮物
・ヨモギの天ぷら
になります。
どちらのメニューもお野菜だけを使用しておりますので、クラムさんでも安心して食べられるメニューになっております。
ではでは、長々と失礼しました。ごゆっくり、どうぞ。」
配膳しながら注文の品の間違いがないか確認を終えた弓弦達は、ペコリと1度頭を下げ。厨房の方へ帰って行く。
そんな2人を見送ったアルサとクラムの2人は、目の前に置かれた。白い湯気上げる美味しそうな料理の数々を前に、早速食べ始める。
「うめ~~♪やっぱ、弓弦の飯はいつ食ってもボリューム満点で旨いなぁ~!
この骨付き鶏もも肉の唐揚げも皮がパリパリしていて、中の肉は肉汁あるれるジューシーさとスパイシーな味付けで、何本でも食えるぜ!」
鶏もも肉の唐揚げを片手に持ち。もう片手にはビールジョッキを持ちながら豪快に食べているアルサが『美味しい、美味しい』と言ってる前では、クラムも
「私の車麩の唐揚げも香辛料がしっかり効いていて、初めて食べた料理ですが、カリッと揚がっていて食べごたえあり。とても美味しいです。
しかしこのビールと言うアルコール飲料は、普段飲んでいるエールとまったく違い。キンキンに冷えていて喉ごしが良く。何杯でも飲めてしまいますね。」
クラムも初めて食べる車麩の唐揚げの美味しさに感動しながら、唐揚げに合うビールをゴクゴク飲み。2人は心行くまで堪能する。
◆◆◆◆◆
「ふぅー。あれもこれもと、ついつい注文してしまいましたが、注文したどの料理も全て美味しく、満足できました。
それにバイキングコーナーのお漬け物と言う食べ物も、野菜がふんだんに使われていて。あれだけでも十分に堪能できますし、朝倉亭とは本当に素晴らしいお店ですね。
アルサ、あんな素晴らしい店を紹介してくれて、本当にありがとうございます。」
締めのデザートまで堪能したクラムが、ビールで頬をほんのり赤く染めながら、アルサにお礼を言う。
「何 気にすんなよ!旨いものは皆で食った方が更に旨くなるんだから、当たり前の事だろう!
それに長年食事の事で困ってたクラムの悩みが、コレで解決出来と思うと俺も嬉しいし、本当に良かったぜ。」
「アルサ………私もこんなに友達想いのアルサと友達でいれて、本当に嬉しいです。ありがとう。」
「おう!俺もクラム友達で、本当に良かったぜ。
それにしてもクラムも町外れに持家もってるとは、知らなかったぜ。」
「あっ!その事ですか。実はあの一軒家は、昔 冒険者になった記念にと祖父が建ててくれたんですよ。
最初は、ギルド近くの中心地に建ててくれると言っていたのですが、私が人混みや騒がしい雰囲気が苦手な事もあり。静かでゆっくりした雰囲気の町外れに建ててくれたんです。
しかし中心地に建てる予算そのままで、町外れに建ててしまったために、あまりに広い庭や家、部屋数の多さに困っているんですよ。
そのため本当は他の人を巻き込むみたいで嫌なんですが、実家から僕専属の執事家族が一緒に、この町へと来てくれ。自宅の掃除やメンテナンスをしてくれているんです。」
「えっ!なら、あの町外れに不似合いな、でっかい屋敷の主人て、クラムだったのか!?」
今日一番のアルサが驚くなか。クラムが貴族のボンボンだった事などが発覚し。ビールを飲んで、気分が良いクラムがペラペラと饒舌に話だす。
「はい。恥ずかしながら一応、あの屋敷の主人は僕になります。
けど、地区の集まり事などは執事のスシェが出てくれますし、あまり僕が主人とは認識されてないんですよ。
そうだ!スシェと言えば、スシェもスシェの家族も、本当に働き者で良い人ばっかりなんですよ。
もとから、スシェの母上が僕の乳母だった事があり。スシェとは乳兄弟で、その縁で僕の執事になてもらったんです。
僕のせいで勝手に将来が決められ。執事の勉強など大変だっただろうに愚痴一つ言わずに黙々と働いてくれて。
本当にスシェには、頭が下がるばかりです。
だから僕の食事の事で、毎日手をわずらわせてしまうのが、本当に心苦しくて……。
しかしアルサから、あんなに美味しい料理を低価格で提供する朝倉亭を紹介してもらいましたので
さっそく明日、スシェ達家族も連れて食べに行きたいと思います。」
ほろ酔い加減のクラムが普段恥ずかしくて言えない、スシェをべた褒めにした話をアルサにしながら
その両手には、スシェ家族のための朝倉亭自慢の焼き菓子の詰め合わせを多量に購入した手土産を持ち。それぞれの家路へと帰る。
こうして、朝倉亭に新たな常連客が増えるのであった。




