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スコッチエッグとラビット族の冒険者 紀与高



その日 凄腕の冒険者で、ギルドから貴族のご子息を王都の学園まで安全に送り届ける護衛の指名依頼を無事に終えた。

198cmの高い身長とムキムキの筋肉質の体に、可愛らしい兎の顔をした。ラビット族の紀与高(きよたか)は、町外れにある両親や11人の兄弟達と住む。

少々年期が入ってボロいが、暖かみがある大きな一軒家にギルドの報告を終え、無事帰って来ていた。


「母ちゃん、ただいま。帰って来たぜ。

はぁー。今回の指名依頼は報酬は良かったけど、本当に疲れたぜ。

まったく。これだから貴族の坊っちゃんは、我儘で手間がかかって、いろいろ気を使わなくちゃならねぇから、大変で嫌だったんだぜ。だから、あの依頼は受けたくなかったんだよなぁ。」


ついつい愚痴をこぼしながら、家の中に入る。


「あっ!紀与高 お帰り。今回も無事依頼を出来たみたいだね。さすが父ちゃんの息子だよ!

それから今日の夜は、家族みんなで外食する予定だから、家で大人しくいるんだよ!」


「はぁー!母ちゃん、そんな贅沢しても今月の食費大丈夫なのかよ?」


大家族ならではの節約、節約の日々のなかの外食と言う言葉に、紀与高は思わず心配して母に質問する。


「それが大丈夫なのよ!ギルドで同じ職場の友達にご飯に誘われて、佳雅丸(かがまる)が食べに行ったらしいんだけど。

食べに行った朝倉亭て言うお店は、安くてボリューム満点で!

しかも初めて来店するお客さんは、最初の1回は何を食べても無料になるらしいの!

それに普段の値段も一番高いので、銀貨5枚で安いらしく。

それに紀与高!キンキンに冷えたエールがたった銀貨3枚で飲めるんだよ!

父ちゃんに話したら、今月はいつもより多目に稼いだし、少し贅沢しょうとなったわけさ!

お店にもバッチリ今日の夕方に予約したし。

その時にお店の人が『初めてのお客様ですね。ありがとうございます。初めてのお客様は、日替わり定食のお代が無料になりますよ。』って言葉も、もらったから安心しなよ!

だから、お腹をすかせて待ってるんだよ!」


かなり興奮した様子で教えてくる。


「へぇー!そんな安い店が出来てたのか、知らなかったぜ。

しかし佳雅丸はギルドの窓口で働くだけあって、最新の情報を仕入れてくるなぁ。

なら父ちゃんも兄貴も今日は早く帰って来るのか?」


「もちろんだよ。父ちゃんも莞紗奈(いさな)も、今日は仕事を早く終えて帰って来るって、母ちゃんと約束してから仕事に行ったんだから!」


内職をしている母親と紀与高が話していると庭の畑の手入れを終えた。14才から2才までの弟や妹達がワラワラと紀与高に集まり。


「兄ちゃん お帰り!」


「兄ちゃん お帰り!お土産は?何かお土産ある?」


「紀与高兄ちゃん お帰りなさい。王都はどういう所だった?」


「兄ちゃん お帰り。王様達が住むお城見た?王子様達に会えた?」


「兄ちゃん、兄ちゃん。やっぱり王都の女の人は、綺麗でいいにおいがしたか?」


「紀与高兄ちゃん、王都ではどんなドレスが流行ってた?」


「お兄ちゃん、お帰りなさい。お土産ちょうだい。」


「にいたん おかえりなしゃい!」


「はいはい。ありがとうありがとう。

お前らお土産もお土産話しもちゃ~んと準備してあるから、興奮するな、どうどう、落ち着け、落ち着け。」


紀与高はまとわりつく兄弟達に、王都で買ってきたお土産やお土産話しをしてあげながら、夕方までの時間を過ごすのであった。



◆◆◆◆◆



そして、予約した時間ちょうどに朝倉亭へとやって来た。大家族の紀与高家族は、お店入り口で笑顔で迎えてくれた。

キャラメル色した甘い顔立ちの少年に店内奥の方にある。個室風になった造りの、幼い兄弟が騒いでも、少々の事では他の客さん達へと迷惑がかからないだろうと思える。

子供用や赤ちゃん用の椅子が用意されたテーブル席へと案内される。


そんな自分達家族の事を考えてくれた席へと案内され。お店の気遣いを嬉しく思いながら、紀与高は物珍しさから個室風の部屋を見渡す。


部屋のなかは、テーブル席も面白く。13人が円上に座れる大きな丸いテーブルになり。

テーブルの真ん中には、テーブルより一段高くなった。クルクルと動かす事が出来る円上の台が付いており。

1人の弟が目ざとく発見し。面白そうにクルクルと回して、早速母に怒られ。見た事もない面白い造りの広々したテーブル席へと、大人しく座らされていた。


すると朝倉亭に入店してからガチガチに緊張した様子の残りの幼い弟や妹達が


「と、父ちゃん、すごいなぁ。俺こんなオシャレな店はじめて来たぜ。」


「お母さん、私 緊張で手が震えるわ。高級そうなお店だわねぇ。」


「兄ちゃん、この椅子スゴいよ!フカフカで、私はこんな高級そうな椅子初めて座ったわ。お姫様になった気分だわ。」


「兄ちゃん このお店スゴいなぁ。店内は暖かいし、店じゅうがいいにおいがするよ。」


「ちゅごいねぇ。」


小さな声で両親や兄達に話しかけてくる。

そんな幼い弟や妹達の緊張をほぐしている紀与高も、実はいつも利用する小汚ない飲食店とは、まったく違う。

清潔感あふれる店内に少し緊張していると入り口で迎えてくれた。キャラメル色した甘い顔立ちの少年が、木のコップや水差し、おしぼり、メニュー表をのせたワゴンを押しながらやって来る。


「いらっしゃいませ。本日は、朝倉亭をご予約頂きまして、ありがとうございます。

私は、朝倉亭の副店長 刀弥(とうや)になります。

本日は、佳雅丸さんのご紹介になりますので、佳雅丸さんを含めて、お客様13名様とも日替わり定食の飲食代は無料になります。

朝倉亭では、ご飯、汁物、お水は、何度お代わりされましても無料になりますので、ご遠慮されずに従業員に声をかけて下さいませ。

そして誠に申し訳ないのですが、単品注文や飲み物等の代金はかかりますので、ご容赦下さいませ。

では、こちら当店のメニュー表になります。注文の品が決まりましたら、テーブルのベルを押してお教え下さいませ。」


説明をして戻って行く。そんな初めて受ける丁寧な接客に大家族は、驚き固まりながら刀弥を見送り。

ひとしきり『すごいね!!』、『貴族様が利用するような高級店に来たみたい』とついつい騒いでしまい。母ちゃんの雷が落ち。

少し緊張がほぐれた家族は、1人1冊づつ見れるメニュー表を見ながら、初めて見る料理の名前なのに、何故かイメージできる事を何故か不思議に思わぬまま。

思い思いの食べたい料理を決めていき、無事注文する。



◆◆◆◆◆



そうして紀与高達では、普段めったに口にできない。氷入りの冷えた無料の美味しい水に驚きながら、ぐびぐびとついつい飲み過ぎていると。

刀弥とちまっとした黒髪黒目の少年の2人が、ワゴン2台いっぱいに料理をのせ。紀与高達のテーブルにやって来る。


「お待たせしました。今日は当店をご利用頂きまして、ありがとうございます。私は朝倉亭の亭主 弓弦になります。


ご注文のさいに奥様から料理は大皿でとのご注文を受けましたので、本日は大皿にてご提供しております。

まず、日替わり定食の主菜になるご注文の品が

2人前づつの大皿で

・豚ヒレカツ 胡麻味噌ソース

・鶏むね肉のしっとり香り蒸し

・牛肉の香味焼き

・カジキの和風チリソース

・春キャベツとちりめんじゃこの玉子焼き

・春キャベツの海老シューマイ


小鉢の大皿が

・高野豆腐の鶏ひき肉のはさみ煮

・蒸し鶏の胡麻ソースサラダ

・茹で春キャベツとツナの梅胡麻和え

・新玉ねぎの磯辺揚げ

・人参しりしり


お漬け物が

・春キャベツと大葉の漬け物


汁物が

・かき玉汁

ご飯と汁物は、お代わり自由になりますので、1回目のお代わり用のおひつと汁物の鍋を置いておきますね。

取り皿もコチラに置いておりますので、ご自由にお使い下さい。


デザートの

・バームクーヘン

・プリンアラモード

・シフォンケーキ~生クリームとカスタードクリーム、フルーツ添え~

・ミニシュークリーム

・苺ゼリー

は、食後にお持ちします。


そしてコチラが別注文の

・ビールジョッキ

5杯になります。


それからコチラ、良ければ当店からのサービスメニューになりまして、12人前の

・スコッチエッグ

・ナポリタン

・フルーツヨーグルトサラダ

になります。

ではでは、長々と失礼しました。それでは、ごゆっくりどうぞ。」


弓弦と刀弥の2人は、頭を1度下げて戻って行く。

2人が戻って行った紀与高家族の個室では、12人が思い思いの美味しそうな湯気をはなつ料理をガツガツと食べ始めていた。


「うわー!旨い。母ちゃん スコッチエッグ旨いよ!

まわりはサクサクして、中の玉子が半熟になってるよ!コレどうやって作ってるんだろう。不思議だなぁ。」


「美味しい~!ヒレカツ サクサクして、甘めの胡麻味噌ソースが美味しいねぇ♪」


「春キャベツの海老シューマイも美味しいよ!シューマイも大きくて、海老もプリプリしていて、春キャベツも甘味があって好き!」


「スコッチエッグ 本当に美味しいねぇ♪ご飯の上で割って食べたら半熟の黄身がご飯にかかって、2度美味しくなるよ。」


「かぁー!!父ちゃんも母ちゃんもビールが旨いよ!!」


「本当だね 父ちゃん。いつも飲んでる生ぬるいエールとは大違いだよ。しかもエールより安いし、ビールは良いねぇ~!」


ご飯やかき玉汁、ビール等を何度かお代わりして、安さ・料理の美味しさ・ボリューム・サービスにも満足した紀与高家族は、支払いのさいに弓弦達からお土産として、兎の形をしたクッキーや焼き菓子を貰い。更に大満足で家路へと帰るのだった。



こうして、朝倉亭に大家族で月に2~3回訪れてくれる事になる。紀与高達ラビット族の大家族は、朝倉亭の常連客へと仲間入りするのであった。



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