ぼた餅とアサシンのニイチ
その日もアサシンのニイチは、護衛対象者のルクホワの跡を本人や周りに気づかれないように付かず離れずの距離をとりながら護衛していた。
実はアサシンのニイチ。元は王都にある有力貴族の表にだせない荒事を密かに処理する。有力貴族お抱えの部署で働いていたアサンシの1人になり。
ある日その家の息子がさる王族のお方を庇い。障害が残るほどの大怪我をおってしまい。
王都での仕事を辞め、兄弟のいるドレッグ町で暮らす事になり。
そのため息子を心配した息子の母親の命により。
部署で1~2番に若く実力が有り。人の印象に残らない平凡な顔立ちや体格のザ・平凡ボーイのニイチが、その息子ことルクホワを無期限に護衛対象者として、本人や周りにバレないように護衛する事が決まったのだ。
そしてニイチが護衛する対象者のルクホワは、元聖騎士だけあり。真面目人間の塊で、朝は仕事場に着いたら仕事の終わる夕方まで真面目に働き。
仕事が終われば、仕事を通じて知り合った友人、知人達の誘いを断り。寄り道1つせずに町外れにある、養い子が待つ家へと真っ直ぐに帰り。
帰りついても、また直ぐに養い子の犬族の少年を連れ。毎日通う朝倉亭と言う食堂に行き、そのまま朝まで過ごす。
護衛対象者として、実に楽で手のかからない人物になる。
始め、この食堂に恋仲の人物がいるのかと、いろいろ調べてみたのだが、その気配も全くなく。そもそも、店の従業員は男性2人に男の子の3人しか居らず。
ただ養い子の友人の家にお世話になっているようであった。
そのため最初は、王都にいる頃と違う平和な毎日に戸惑っていたニイチであったが、ルクホワが町外れに住んでくれた事もあり。ニイチも町外れに住み。
今では、この王都時代では味わえなかった。のどかで、のんびりした充実した日々をすっかり気に入り、満喫しているのであった。
◆◆◆◆◆
そうして今日もルクホワと養い子が朝倉亭に向かったので、ニイチもいつものように跡をつけながら、少し遅れてお店に入る。
カランコロ~ン♪
「「いらしゃいませ。(ニャ。)」」
「あっ!ニイチニャ。今日も来てくれたニャンね♪」
いつものように刀弥とシイに出迎えられたニイチは、毎日通ううちに仲良くなった看板息子の猫族のシイと楽しく話。
ニイチの指定席であるカウンター席に座り。ニイチお得意の魔法の1つを使い。厨房奥にいるルクホワの声が、危険があれば直ぐに察知できる音量にあわせる。
すると仲良しのニイチのお迎えが出来た事に満足気味のシイが、いつものように刀弥が無料の氷の入った木のコップと水差し、おしぼり、メニュー表を持ってくるのと入れ換えに厨房奥に入っていく。
「こんばんわ 刀弥。今日のオススメは何になる?」
「こんばんわ ニイチ。今日のオススメは、春キャベツになるよ。」
刀弥と雑談しながらメニュー表を見て、好みの日替わり定食などを頼む。
そしてほどなくして、お盆いっぱいの料理を持った刀弥がやって来て
「お待たせ。ニイチご注文の品の
主菜の
・春キャベツのミルフィーユ蒸し
小鉢 3品の
・春キャベツの肉巻き
・春キャベツとあさりのペペロンチーノ炒め
・春キャベツのシューマイ
漬け物の
・春キャベツの野菜ロール
汁物の
・春キャベツのポトフ
ご飯とポトフは、おかわり自由になります。おひつ置いておきますね。
デザートの
・苺のミルフィーユ
と単品注文の
・パウンドケーキ
・ミルクプリン・マンゴーソース
は、食後に持ってくるね。
ではでは、長々と失礼しました。ごゆっくり、どうぞ。」
言いながら刀弥は厨房に戻っていく。刀弥を見送ったニイチは、いつものように美味しそうなご飯を食べ始め。
「今日の料理も美味しそうだなぁ。………うゎ!この春キャベツと言う野菜柔らかくて、ほんのり甘くて旨いぞ!
それにこのミルフィーユ蒸し、豚肉の旨味と春キャベツの旨味が合わさり。いくらでも食べれる旨さだ!」
呟き。後は夢中でモリモリとご飯を食べ進める。
そして、お腹いっぱいにご飯や大好きな甘いデザートをゆっくり時間をかけ。堪能したニイチは、かすかに聞こえるルクホワ達の寝息を聞き。
今日の護衛も無事終えた事にどこかホッとしながら、王都に住む母親からニイチの存在を聞いたルクホワの兄で、ドレッグ町の領主が手配してくれた。
ルクホワ達の住む一軒家近くの家の他に、朝倉亭に泊まる事の多いいルクホワを守るため。
朝倉亭近くに準備してくれた2件目の家へと帰るためレジにむかう。
するとレジには亭主の弓弦がおり。
『今日も美味しかったよ。』等の世間話をしながら、いつものようにレジ横に置いてある焼き菓子を2袋を足し。お金を払い帰ろうとすると、弓弦が
「ニイチさん。コレ良かったら食べて下さい。
実は今日は、僕の故郷では昼と夜の長さが同じになる『春分の日』と言う日で、久しぶりにぼた餅を作ったんですけど、故郷でのクセで大量に作ってしまい。僕達だけでは食べきれないほどに大量にあるんですよ。ですから良かったどうぞ、食べてくるませんか。
いちおう、お重自体に時が止まる魔法をかけているので、そのまま置いていても、お重から出さない限りはぼた餅は悪くならないので、日持ちもしますから安心して下さい。」
との説明を聞き。甘党のニイチには嬉しい。お重5段にギッシリ詰まったぼた餅を貰って、いつもより軽い足取りで家に帰るのであった。
◆◆◆◆◆
その後、あまりの美味しさにお重5段にギッシリ詰め込まれたぼた餅を3日で食べきってしまったニイチは、お重を返したさいに更に追加でお重5段にギッシリ詰め込まれたのぼた餅を貰い。
「えっ!また貰っていいの?ありがとう。
ぼた餅 美味しいよね!けど、良く俺が甘い物好きって解ったね。」
普段あれだけ毎日のように朝倉亭での夕食のさいには、単品注文でデザートを2~3品頼んだり。
支払いのさいにも必ず持ち帰り用の焼き菓子を1~2袋買っているのに、弓弦達に甘党とバレていないと思っているニイチの言葉を聞き。弓弦達は驚きながらも、そこは大人の対応をするのであった。
こうして、朝倉亭の甘党の常連でもあるニイチの1日は過ぎていく。




