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ねばとろ卵かけご飯と蛇族のビビとビオラ



その日も朝早くからアルサとニッカ、キキの3人は、朝ごはんをお腹いっぱい食べに朝倉亭への道を歩いていた。


すると、何やら後をつけられてる事に冒険者のアルサが気付き。ニッカとキキに教え、警戒しながら後ろを振り向き


「おい!そこにいるのは解ってるんだぞ!おとなしく出てこい!」


アルサが強い口調で呼び掛ける。すると建物影から痩せ細った10才ぐらいの少年とその少年におぶられた3才ぐらいの幼子が出てきて、ニッカに


「あ、あの……こ、コレ、さっきソコで…お、落としたの気づかないで…い、いちゃったから……」


ニッカが落としたハンカチをわざわざ拾い。持ってきてくれ、渡してくれる。

お気に入りの花の刺繍ハンカチを落とした事に気付いてなかったニッカは、少年にお礼を言うと少年は恥ずかしそうに笑い。

片足を引きずりながら、来た道を戻ろうとする。


そんなやり取りを見ていたアルサは、少年に謝り。


「ボウズ。さっきは勘違いして悪かったなぁ。

朝飯は食ったか?俺達、今から朝飯を食いにいくんだけど、一緒に行かないか?さっき脅かしちまったお詫びに奢らせてくれよ。」


声をかけ、突然の事に困惑しいる少年達を連れ。朝倉亭へと、また歩きだした。



◆◆◆◆◆



カランコローン♪


「「いらしゃいませ。(ニャ。)」」


いつものように刀弥と猫族のシイに出迎えられる。


「あっ!アルサにニッカにキキニャ。おはようニャ。隣は誰かニャ。」


アルサ達に気づいたシイが話しかけ、アルサの隣に立つ初めて見る2人の事を聞く。


「あっ!こいつら、わざわざニッカの落としたハンカチを届けてくれた良い奴なんだ。けど、それを知らなくて俺が脅かしちまったから、お詫びに朝飯奢ろうと連れてきたんだよ。」


「2ヶ月かけて難しい刺繍をしたお気に入りのハンカチだったから、すごく嬉しかったし助かったんだ。本当にありがとうね。」


「そうニャン。良い子なのニャン。」


3人が改めて少年を誉めると、少年がボロボロ泣き出してしまった。するとそれを見た背中におぶれた幼子もつられて泣き出してしまう。


驚いたアルサ達3人や猫族のシイに呼ばれた弓弦が、少年と幼子を席に座らせ。刀弥が持ってきた温かなホットミルクを飲ませたり。

暖かいおしぼりで顔や手等を拭いてあげると、おしぼりはすぐに真っ黒になる。

それを見た少年は、申し訳なさそうに幼子を連れ、遠慮して帰ろうとする。

しかし弓弦や刀弥やニッカ達は、そんな事などまったく気にせず。何本もおしぼり等を使い、優しく拭いてあげるのだった。


そうしていると少し落ち着き、泣き止んだ少年がポツリポツリと自分達の事を話し始める。


「ぼ、僕は、蛇族のビビと言います。年は今年で多分17だと思います。一緒にいるのが弟のビオラ5才です。

さっきは、泣いてしまったて申し訳ありませんでした。……産まれて初めて人に誉められたのが嬉しくて………文句を言われたり、殴られる事はなれてるけど……」


話し、また申し訳なさそうに身を小さくする。

そんなヒビの話に、ビビにしてもビオラにしても、年とは違いすぎる体格やあまりに悲しい言葉にかける言葉を失ったアルサ達だったが、刀弥が優しく話を促すと蛇族のビビは、またポツリポツリと自分達の生い立ちを話始める。


「僕達は、それぞれ赤子の時に親から捨てられていた所を旅一座に拾われました。ビオラとは血は繋がってないけど同じ蛇族で、名前も僕のビビからビビの弟と言う意味も込めて、ビオラと名付けました。

それから、僕は汚い錆色(さびいろ)の髪や瞳の色になり。

ビオラも鉛色(なまりいろ)の髪と赤い瞳ため『蛇族は、ズル賢く、おのれの楽しみの為には、人を貶める愉快犯のような奴がほとんどだ。』と日頃から座長に言われ。

嫌われていたので、客の前に出せないと幼い頃から雑用として一座に飼われていました。

けど、前の巡業中の時に訪れた町の領主に一座が裏で行っていた秘密と言うか悪事がバレ、一座は即解散。

座長達は罪に問われて牢屋に入れられしまったそうなんです。」


涙をポロポロ流し、悲しそうに話す。


「それで、僕達も騎士の方々から調べ受けたのですが、日々の雑用や座長達からの暴力から逃れるのに必死で、何が何やら全然解ず。その日のうちに釈放されたんです。

けど、帰る場所も仕事も無くした僕達は、行き場を無くして路頭に迷ってしまい。

ビオラを連れて食べていくために必死に仕事を探したんですけど、僕のような者を雇ってくれる所は無く……いろんな種族が住む王都なら僕でも雇ってくれる所が有るんじゃないかと思い。

ここまで、昔一座にいた亀族のお爺さんに習った薬草や木の実を旅の途中の森で採取しては、売り歩き。なんとかやって来たんです。」


と話してくれる。途中、キキが気になっていた。ビビの引きずって歩く右足の事を聞くと、一座にいた時に先輩から高い所から落とされ。それからこうなったと答えがかえってくる。


「ニャンだそれ!酷い先輩がいるニャ!!

きっと、その時に骨が折れてしまい。適切に処置をしニャかったから、そのまま骨がくっついて、そうなってしまったのニャ。

普通ならそんな障害も残らずにニャおるのに……………う、ぅ、キキは悔しいニャ。ビビの足を治してあげられない、何も出来ない自分自身が悔しいニャ。」


ビビからの返事を聞いたキキは、怒りながらポロポロと大粒の涙を流す。

アルサやニッカも見つけたらただじゃおかないと涙をにじませ話していると刀弥に抱かれた。本当はシイと同い年だった小さなビオラのお腹が鳴る。


「ビオラ お腹すいちゃったね。」


弓弦が話しかけ。ビオラとビビの体に触れながら、何やらブツブツと呟く。

すると次の瞬間、2人の体が一瞬ピカッと光り。汚れていた体や服が綺麗になり。服で隠れていた古傷や弱っていたり、傷ついた体内や怪我が治る。


しかし突然の事にビビもビオラもその事に気づかず。

アルサ達も生活魔法で体と服を綺麗にしたんだろうとしか思っておらず。

刀弥の『ビオラもお腹をすかせてる事ですし、朝ごはんをお持ちしますね。』との声に意識がそれる。


そうして朝ごはんが来るまでの間。薬草の知識が有るのなら、僕達と一緒にパーティーを組もうとキキやニッカが誘ったり。

住む家が無いのなら、俺達の家に弟のビオラと一緒に住んだら良いぞとアルサが誘い。

その場に残ってビオラとお喋りしていた猫族のシイも、ビビがキキ達と薬草採取の依頼をしている間

ビオラは朝倉亭で、遊びや勉強をしに来たらいいニャ等のビビが産まれて初めて体験する。善意の誘いの数々に困惑していると、ワゴンいっぱいに料理をのせた弓弦達が帰ってくる。


「お待たせ。本日の朝ごはん定食になるよ。

主菜の卵かけご飯が

シンプルな卵かけご飯セットの

・卵かけセット

新登場の荒くつぶした長芋とめかぶと生卵の

・ねばとろセット


干物

・子持ちししゃも

玉子焼き

・小ネギと鶏そぼろ入り玉子焼き

小鉢 2品

・ほうれん草とシメジのごま和え

・きんぴらごぼう

漬物

・春キャベツと人参の浅漬け

・焼き海苔

汁ものが

・豆腐とワカメの味噌汁

になるよ。

ご飯もお味噌汁もお変わり自由になるから、ご飯はおひつで、お味噌汁も小鍋で置いて置くね。それじゃあ、お腹いっぱい食べてね。

それからサービスで、食後にデザートのフルーツタルトを持って来てあげるから、その分のスペースを残しておいてね。」


定食の確認をしながら朝ご飯セットを弓弦達がテーブルに並べてくれ。弓弦達はビオラの食事の手伝いをしながら、アルサ達の朝ごはんが始まるのであった。



◆◆◆◆◆



そうして朝ご飯を食べた後に弓弦達の好意で、弓弦家のお風呂に入浴する事になったビビとビオラの2人は、何かあると危ないからと刀弥とシイと一緒にお風呂に入る事になり。

そこで産まれて初めて見る。大人10人はゆったり体を洗える洗い場やかけ流しのお湯が溢れている広々した浴槽を見て。

驚き固まっていていると、猫族のシイが『このお湯は、温泉の湯だから体に良いんだよ♪』と教えてくれ。

いつもは桶半分の水で体を拭くしか許されなかったビビとビオラは驚愕する。


それからは、まるで夢のような時間で、いくらでも温かなお湯が使え。

刀弥やシイの手をかりながら、頭を香りの良いシャンプー、リンスで洗い。更に体を同じく香り良く、気持ちの良いボディソープなる物で洗い。

高級なお風呂を堪能したビビとビオラの2人は、弓弦が用意してくれた真新しい着心地良い服一式に着替え。

アルサ達がギルド依頼の仕事終えて迎えに来てくれるまで、そのまま朝倉亭で待つ事になる。


「ビオラ、眠い?子守唄 歌おうか?」


「………だいじょぶ……」


「そう、それなら良いけど……眠って良いんだよ。」


「………うん。…けど……僕……お兄ちゃん以外で、アルサ達の周りの人達に優しくしてもらった事や……お腹がいっぱいになった事……こんなに立派な服を貰って……まるで王様が寝るようなふかふかのベットで眠るの始めてだから………このまま寝ちゃって、起きたら全部夢なんじゃないかと思うと怖くて……」


「ビオラ………実は僕も緊張してるんだよ。

今まで見た事や食べた事の無い美味しく温かなご飯に、見た事もない手触りの良い立派な服やふかふかのベット……本当に夢のようで、今日は驚くことばかりの1日だよね。

でも、大丈夫だよ。お兄ちゃんも夢なんじゃないかと思って、頬っぺたつねったけど、痛くて目が覚めちゃったんだから。これは夢じゃないんだよ。だから、ビオラは安心して眠って良いんだよ。

………………ビオラ?……あれ、ビオラ寝ちゃった?寝ちゃったのか………………僕の大切な弟のビオラ。何も心配しないで大丈夫だよ。これから先も何があってもお兄ちゃんの僕がビオラの事を守ってあげるからね。」


弓弦宅の何部屋かある客室の一室で、ビビとビオラの2人は、生まれて初めての安心感に包まれ。心地好い眠りに落ちていくのであった。






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