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[00-05] ゴールドドラゴン

プロローグが終わらない・・・。

 今日は朝から妙にお城と聖域内が慌ただしいです。

 乳母役の竜人族の巫女さんたちはもちろんのこと、聖域内のドラゴンどころか近隣のドラゴンのおっちゃん、お兄さんたちも顔を出して雁首を揃えて、うろうろと落ち着きなく室内や廊下を歩いています。


 なぜか各自気合の入った正装をしていますが、パーティでもあるのでしょうか? とは言え全員の趣味や生きてきた年代などがバラバラで、なおかつ天上天下唯我独尊、他人に合わせる気ゼロなドラゴン同士のこと。

 装飾過多な鎧兜をまとった竜人形態のドラゴンの隣に、フォーマルのタキシードを着た人間形態のドラゴンがいて、さらに隣で派手な羽飾りと民族衣装を着けたドラゴンと、ご当地キャラみたいな着ぐるみを着た多分中身はドラゴンなんだろう謎の物体が談笑していたりします。


 傍目には、ほとんどハロウィンか夏と冬に行われる某イベントのコスプレ行列みたいです。


 で、さらに珍しいことに今回は雌――というか女性のドラゴンもちらほら姿を見せてます。

 こちらはさすがに男性陣ほど極端に奇抜な服装ではなく、だいたいがドレス姿(でも多分、流行とかなんとかは各自の好みでズレてるんだろーな。原色で見分けが付かないけど)なんだけど、これがまた女同士でお互いに競い合うようにして全身に装飾品をじゃらじゃらぶら下げ、派手なリボンとかフリルとか満載で、どこの歌合戦の大トリやねん!? と、ツッコミを入れたいような、ある意味仮装にしか思えない見かけでした。


 そんな女性陣の周りで、男たちがさり気なく自分の魅力をアピールしたり、高価そうな宝石だの貴金属だのをプレゼントしたり、中にはお目当ての女性を巡って殴り合いなんかしていますが、誰も彼も、竜人族の人たちも気にした風もなく平常運転です。


 まあ、そっちはそっちで好きに競ったり、ナンパしたりしていればいいと思いますけど、ほぼ全員が確実に一度は僕のところにやってきて、「おおっ、これが!」「なるほど伝説の通りね」「う~~む、確かに鉑輝竜(プラチナドラゴン)」「まさか実在したとは」と、珍獣を見る目でじろじろ眺めては、難しい顔でひとしきり唸って去っていく……これが十回くらい繰り返されたところで、最初の当惑がどんどんど不安に塗りつぶされてしまいました。


 なにこの反応? 絶対に“美麗”“眼福”“感動”って感じじゃないよね。

 なんていうか、得体の知れないモノを見て、どう反応していいのか戸惑っているって感じ。


 ……おかしいな。僕って超希少種中の希少種で、約束された勝利のドラゴンじゃなかったの? なにこの奥歯に物が挟まったような微妙な反応は?


 考え込んでいたら、

「あらあらレア様、難しい顔でどーちました? うんうんでしゅか? しーしーでしゅか?」

 と、いつもの竜人族の巫女さんがおしめを持ってやってきた。


 ちゃうわい!


 ひとしきりおしめを確認して首を捻る巫女さんだけど、彼女も今日は普段の動きやすい格好から、もっとひらひらしたいかにも本格的な正装って感じに着替えていた。


「どー? ふー? ひらひー?(どうしたの今日は、服がひらひらだけど?)」


 思いを込めて指さして尋ねると、どうやら通じたらしい。


「これですか? これはですね、ずっと隠遁なさっていた金煌竜(ゴールドドラゴン)の“老師”がいらっしゃるので、皆でおめかしして待っているんですよ。楽しみにしていてください、レア様にお会いするためにわざわざ月の裏にある庵から500年ぶりにお見えになるのですから」


 ――へっ? ゴールドドラゴン!? 月の裏ァ?! 500年ぶり!?!


 一度にまくしたてられた情報量が多すぎで、頭が真っ白になった僕は、ぽかんと口を開けて巫女さんを見つめ返すだけ。


「驚きましたか。なにしろご存命のゴールドドラゴン様は老師ただおひとりだけですから。拝謁の栄を賜るなど私たち巫女にとっても生涯の誉れです」


 はー……、それはまた。どーりで朝から皆落ち着かないわけだわ。


 それにしても普段は月に住んでるって、なんかもうレベルが違うね。

 いくらドラゴンとはいえそう簡単に何十万キロを行き来できるとも思えないけど、魔法かなんかで移動するんだろうか?


 そんな僕の疑問を読んだのか、巫女さんがうっとりと夢見るような瞳で説明してくれた。


「ゴールドドラゴン様は別名『シャイニングドラゴン』とも呼ばれているんですよ。その速さは下級竜最速の飛竜(ワイバーン)はもとより、電光石火と呼ばれる蒼雷竜(ブルードラゴン)様を遥かに上回とも言われています」


 へーっ、と思って僕は隣でおやつ(でっかいカブト虫)を食べているジークをチラ見する。

 ゴールドドラゴンってそんな特技があるんだ。なら同じ金色系統の僕も将来的には、「サラマンダー……じゃなかった、蒼雷竜(ブルードラゴン)より、ずっとはやい!!」と、ジークを置いてけぼりできる可能性があるってことだよね!?


 おーっ。俄然テンションが上がってきた!!


 と、思ったところでにわかに周囲が慌ただしくなり、

「むっ――! この魔力は!?」

「来たっ!!」

「いらしたぞ、皆の者っ!」

 この場に詰めかけていたドラゴンたちが一斉に天井を見上げた。


 なんだなんだと思う間もなく、魔法なんて欠片もつかえない僕でもわかるくらいの巨大な、まるで天が落ちてきたような莫大な魔力の気配が、上空から凄まじい勢いで近づいてくるのが感じられた。


「こ……!?」

 あまりの凄まじさに、咄嗟に口に出しかけた言葉が続かない。


「「「「「「みょみょみょっ?!」」」」」」


 僕の周りにいた仔竜たちも、その気配に右往左往するばかりだ。


 そして、晴天の空がさらに眩しく輝き、まるで太陽が落ちてきたような光が周囲を真っ白に染め、その場にいる全員が息を詰めた刹那――。


 轟音とともに聖域のそばにあった山脈が消し飛んだ。


 ………………。


 きのこ雲が成層圏まで立ち上り、ばらばらと周囲に雨のように大小さまざまの岩石が降り注ぐ。


 ………………。


 誰もが呆然とその光景を眺めるだけの中、

「ほぎゃ!?」

 目の前に落ちてきた物置小屋くらいある岩の塊が、城の防御結界に阻まれてかろうじて弾き返されたのを見て、僕は思わず反射的に悲鳴をあげていた。


 と、作動不能になっていた周りの面々が、はっとスイッチが入ったかのように再起動した。


「た、大変だ――――っ!!」

「落ちたぞーーーっ!!!」

「老師が――金煌竜(ゴールドドラゴン)様が着地をしくじったの!?」

「バカな、なぜ減速もしないで地面にダイレクトアタックを!?」

「何者かの妨害か?!」

「いや、そんな気配も魔力もなかったぞ。自爆だ!」

「もしかして、地上に来るの500年ぶりだから加減がわからなかったんじゃないのか?」

「いや、単にもうボケてるんじゃ……」

「だから普段からきっちり飛行訓練をしておけとあれほど……」


 途端、蜂の巣をつついたような大騒ぎになる聖域内。


「それで、老師はご無事か!?」

「……駄目かも知れんな、さすがにあの速度で、あの勢いでは」

「連龍山脈が消滅してクレーターになってるぞ、おい」

「最後の金煌竜(ゴールドドラゴン)が亡くなられたか」

「なにしに来たんだ老師も、俺らも?」

「とりあえず、手の空いている者で掘り出してみるか」


 そう言って一斉に溜息をつく面々。


 さっきまでのお祭り騒ぎから一転して、御通夜ムードになった周囲の雰囲気になんとなく口を挟めないまま、僕は赤ちゃんサークルの手すりに掴まって、黒雲と降石に包まれこの世の終わりのような外の景色を眺めながら心に誓った。


 将来、どんなに早く飛べるようになっても、絶対に調子こいて飛ばさないようにしよう。安全運転に努めなければ!

ゴールドドラゴンは光速で飛べるとか、ブルードラゴンは電光と同じマッハ220出せるとか、そーゆー設定を考えたりしましたけど、どう考えてもオーバースペックぽいので明確に速度は出さないことにしました。


ところで作品の更新時間っていつごろが適切なんでしょうね。

いままでは早朝に予約投稿してましたけど、今回は区切りよく0時にしてみました。

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