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[01-29] サンダー・ブレス

【星魔法レベル1『メテオ・フォール』着弾します。耐熱・耐衝撃・耐閃光防御――光魔法レベル2『ディバイン・バリア』展開します】


 途端、体の周りを薄明るい光の膜みたいなのが取り巻いて、同時に息苦しさとか肌をピリピリ焼くような痛みが消えた。


「バリアがあるんなら、消化される前にさっさと使えよ! なんか脱皮した皮とか髪の先とかなんぼか溶かされて、豚の栄養にされた気がするぞ!!」


【指示がありませんでした】


「お前は指示待ち人間か!? 自発的に行動しろってば!」


【システムの仕様上不可能です(ヾノ・∀・`)ムリムリ】


「嘘つけーっ! 都合の悪い時だけコマンド入力を建前にしてるだろう、お前!?」


【理解不能】


 なんかだんだんバカにされているような気がしてきた。

 と、なにやら周囲がドタバタと揺れているような……バリアのお陰で衝撃はないんだけれど、明るく照らされた胃壁がグルグルと動いている様子が垣間見える。


「これが『メテオ・フォール』の影響? どういう魔法かわからないけど、結構効果が長いなー」



  ▽ ▲ ▽ ▲


「ブモ―ッ!! ブモモーーッ!?!?」


 突如、腹のあたりを押さえてのたうち回り出した片牙(ジロン)を前に、当惑した顔を見合わせるソフィア、ジーク、豚鬼王(タロン)

 この隙にタコ殴りにしようかと足を踏み出しかけたのだが、出鱈目に振り回される手足の勢いや凄まじく、まるで超大型竜巻のように岩でも大木でも触れるものすべてを瞬時に粉砕して回っているので、迂闊に近づくこともできない。


「思うんだけどさ。小指大の騎士が冒険をする『7センチ騎士物語』ってあるでしょう?」


 世間一般では有名なお伽噺だけど、どうせこのふたりは知らないんだろうな~、と思いながら水を向けるソフィア。


「あ~~、大鬼(オーガ)のお腹の中に入って暴れる話だね」

「ゴフゴフ、ゴフン(なるほど、あれと同じで腹ン中で鉑輝竜(プラチナドラゴン)が暴れてるってわけか)」


 と思ったら、案外あっさりと理解してこちらの言いたいことを察するふたり。


「……そ、そういうことよ」


 こいつらバカだと思って扱うと、意外な察しの良さをみせるわね。迂闊な発言は命取りになるかも。そう内心慄くソフィアであった。


  ▽ ▲ ▽ ▲


「ねえ。いくらなんでも振動が長すぎない? つーか、いつになったら出られるわけ?」


【『メテオ・フォール』は22秒前に現在位置に着弾済みです】


「着弾?! え? 外から攻撃するスキルなの?」


【是。衛星軌道上からランダムに隕石を目標地点へ落下させるスキルです】


「……えらく物騒なスキルだなぁ。ま、衛星軌道上にある程度の隕石ならたいした大きさじゃないだろし、もしかして途中で燃え尽きたんじゃないの?」


【可能性としては45%。再度、現在地――北緯36度46分、東経121度32分。ストゥルトゥス大陸中央部――へ向けて『メテオ・フォール』を実行しますか?】


「――ちょっと待て! ストゥルト(、、、、、)ゥス大陸(、、、、)……?! ここってレェレミータ大陸だよね!?」


【否。システムの計測では現在地はストゥルトゥス大陸中央部。現地時間午前11時。快晴。湿度38%。洗濯指数95%】


「えええっ!! さっきまでレェレミータ大陸にいたんだよ? 喰われたあとに瞬間移動でもしたわけ!?」


 普通だったらありえないけど、この世界なら瞬間移動とか普通にありそうなところが怖いところだ。


【再計測開始…………ピッ! 若干誤差がありました。誤差を修正。現在位置、北緯32度13分、西経118度28分。レェレミータ大陸と確認】


「どこが『若干』で『誤差』だ! まるっきり大間違いの大振りじゃないか!! つーか、さっきの隕石どこに落とした!? 誰か第三者が犠牲になってんじゃないの!?!」


【その確率は0.0000000001%です】


 冷静に反論されて僕も落ち着きを取り戻す。


 そりゃそうか。『メテオ・フォール』って、ランダムの大きさの隕石を落とすスキルみたいだけど、普通の隕石でも地表に到達できるものは1万個だか2万個に1個らしい。

 さすがにスキルで落とすんだから途中で燃え尽きるような9,999個の1個ってことはないだろうけど、それにしたってレベル1の魔法なんだからせいぜい小石か漬物石ていどの大きさだろう(それでも当たれば大砲並みの威力だろうけど)。


 それが間違った座標で落とされたわけで、この広い広い世界の町とか村とか人間とかにピンポイントで当たる確率なんて、ほとんどないだろう。

 仮に当たったとしたら不幸な事故だろうね。


 そう納得した僕だけど、システムメッセージは『確率』を答えたわけで、『どこに』落下して『どれだけ』被害を出したか答えたわけではない――そのことに気づいたのは随分と後になってからだった。


【再度『メテオ・フォール』を実行しますか?】⇒【YES/NO】


「よくよく考えたら隕石攻撃とか、自爆技スレスレじゃないか。するわきゃないだろう! 他はないの、他は?」


【現在の残存魔法力及び肉体耐久力で使用できる攻撃魔法がありません】


「もう終わり!? どんだけ引き出し少ないんだ!」


【現在、『ディバイン・バリア』を展開中により、残存魔法力が106/10921……96/10921】


 うわっ、100切ったってことは『メテオ・フォール』ももう使えないってことか。

 どうすりゃいいのさ!?


 と思った瞬間、急にどこからともなく魔法力に似た何かが僕の体の中に流れ込んできた。

 似て非なる感覚に戸惑ううちに、それは急速に膨らんで、再び僕の中から外へと飛び出る。


「え?! え? えええ――っ!?!」


 バチバチと火花を散らして掌の間に生み出されたのは、忘れもしないジークの『蒼雷』だった。

途中から一人称が『俺』から『僕』へと変化しています。

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