[01-22] 姦計
時間がなくて短いです。すみません><
「いまさらだけど、なんで天翅族の私がドラゴン、それも災厄と謳われる相手と協力しなきゃならないのよ」
「呉越同舟だよ。まさかいまさらひとりだけ逃げようなんて思ってないだろうねぇ……?」
「はあ……。諦めたわよ。命の借りも返してないしね」
ため息をついて観念したらしいソフィ。
「助かるよ。これを成功させるには、全員の協力が必要だからね」
「はいはい。わかってるわよ」
ふて腐れたように、ソフィは半人化しているジークの肩にもたれかかって突っ伏した。
「くんくん。――レア、変な臭いがしてきたよ」
と、ジークが盛んに鼻を鳴らして、前方を指差した。
◆ ◇ ◆ ◇
円形をした一周十kmくらいある切り立った崖に囲まれた天然温泉地。仮称・ドラゴン谷温泉。
成分は腐った卵のような臭いがする単純硫黄泉で、効能は解毒作用に糖尿病・痛風・皮膚病・婦人病・切り傷・糖尿病・高血圧症・動脈硬化症に効果がある上に、飲むと便秘にも効く。
「それってただお腹を壊してるだけじゃ……?」
ソフィの素朴な疑問はひとまずおいて、注意点としてはなにしろ場所が深いボウルの底にある温泉地だから、とにかく臭いと湯気がもの凄い。まして光源のない夜間とあって、鼻をつままれてもわからないくらい視界が利かないので、一歩足を踏み外せばそこらへんの源泉垂れ流しで、摂氏500度くらいありそうな温泉の中にフルダイブすることになる。
ま、今回は僕を抱えているジークの天恵“直感”のお陰でそういう高温の場所とか、地割れのところから蒸気が噴出しているところとかは、余裕で躱して歩いているけど。
「ねえ、レア。お湯って摂氏100度が限界なんじゃ……?」
「――あっ」
ぐぬぬ、まさかお馬鹿のジークにツッコミを入れられるとは。僕の不調もいよいよ本格的になってきたみたいだ。これは早めにポーク…じゃなくて、オークを倒してゆっくりと温泉につかって英気を養うに限るね。
もうもうと湯煙は漂っているけど、まだ本格的な温泉は目に入らない。
まだドラゴン谷の入り口ってところだから、三人で――といってもほとんど僕が決めて音頭を取ったみたいなもんだけどさ――頭を絞った計画を進めるためには、もっと奥まで行く必要がある。
「つまんないことは気にしないで、もっと奥のお湯がたっぷりある温泉を探すんだよ、ジーク! 間違っても足を踏み外したりしないようにね!」
ま、高温って言っても100度以下ならドラゴンの鱗でどーにかなるだろう。半人化してるジークは大火傷するかも知れないけどさ!
あと、さっきも言ったけどここの温泉は硫黄泉だから結構刺激が強い。長時間浸かると肌がひりひりするとか。ついでに金属類、特に純銀とかをつけると真っ黒に変色する。プラチナは平気だけどね!
「そこで勝ち誇る意味が不明だわ」
ジークの肩にとまっているソフィが、ジト目で小馬鹿にしたように絡む。なんだかんだで僕らに協力しなくちゃならなくなったのが、やっぱり釈然としないんだろう。
おっかしいな。予定では10月中に1章が終わって、レアの人化姿と能力の片鱗が出てくるはずだったのに。
【追記】次回の更新は11月3日となります。申し訳ございません。
 




