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[01-20] 逃走

 血走った目で凶器を振り回し、森を破壊しながら迫り来る大豚(ポーク)2匹を相手に、僕らは命がけの鬼ごっこをしていた。


「ブオー! ブオー!(おのれ、よくもブロンを!)」

「ゴブゴブゴブゴブーッ!!(てめーら、まとめて喰ってやる!!)」


 さっきまで敵対していたはずなのに、いつの間にか和解したらしい。肩を並べて追ってくる赤鬣と片牙。

 どうやら真っ黒焦げになった傷豚の姿を目の当たりにして、確執やわだかまりの一切合財が吹っ飛んだみたいだ。あとついでに鉑輝竜(ぼく)を喰うっていう当初の目的も見失っているぽい。


 この騒ぎに慌てて巣穴から出て逃げようとした三メートルはありそうな六本腕の阿修羅熊が、ただ進路上に立ち塞がっていたというだけで一瞬にしてミンチにされていた。


 これはマズイ。完全に理性を失っている。

 てか、一番弱そうな奴を最初に倒したのは失敗だったかも知れない。


 どこぞの国には『殺一警百(シャーイー・ジンパイ)』とかいう言葉がある。「一人を殺して百人に見せしめにする」とい言う意味なんだけど、一般ピープルならともかく、もともと極悪凶暴な相手にはこれって逆効果だよなー。単に火に油を注いだだけだわ。


 そうしみじみ思う僕は、相変わらず半人化したジークに小脇に抱えられていた。

 動こうとしたら途端に目眩がして身動きがとれなくなったので、しかたなくこの形になったんだけど、もうちょっと丁寧に運べないものかなー。

 お姫様抱っことかされるよりはマシだけど、なんか上下運動と高速で後方へ流れる景色を見ていると、酸っぱいものがせり上がってくるくる気がする。


「にしても、あいつらこの暗闇でよくこっちの位置がわかるわね」


 翔ぶと光魔術の弊害でLEDみたいな光が漏れる仕様のソフィ。だから目立たないようにジークの肩にとまって一緒に逃げているんだけど、自然に優しくない破壊音は常に一定間隔でこっちに向かってくる。


 ジークの素早さをもってしても引き離せないとか、どんだけあの豚も俊足なんだろう?


「ん? 相手のステータス知りたいの?」


★★★★★★★★★★★★★★★★★★

・名前:タロン

・種族:豚鬼王(オーク・キング)

・生命力:6503/10055

・魔法力:3321/3629

・攻撃力:710

・防御力:883

・素早さ:489

・精神力:118

・スキル:統率レベル8、頑強レベル7、刀槍術レベル7、毒無効レベル6、臭覚強化レベル5

・天恵:悪食

★★★★★★★★★★★★★★★★★★


 ちなみにもう一匹のほうは『豚鬼卿オーク・ロード』という種類で、能力は精神力以外は豚鬼王(オーク・キング)の廉価版って感じとのこと。


「えっ!? あいつらってポークじゃなくてオークだったの!!」

「アンタそこから間違ってたの!? てか、いま驚くポイントそこなの?!」


 僕が驚いたことに驚くソフィ。なんかややこしいけど、いやー、素でポークだとばっかり思ってたわ。恥ずかしいな。

 やっぱり思い込みはよくないね。普段からきちんとお互いに意見の交換をしていれば、こういうこともおきないだろう。そう深く反省する僕。


「だからここはきちんと対策を話し合おう。三人寄れば文殊の知恵。三本の矢は折れないって言うしさ」

「矢の三本くらいなら“光刃(ライト・エッジ)でバターみたいに切れるけど?」

「僕も三本くらい束ねても、いっぱつでへし折れる」


 この苦境を脱するために協力して頭を絞る必要性を力説したんだけど、空気を読まないふたりによっていきなり話し合いは暗礁に乗り上げた。

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