[01-19] パピー・ドラゴン
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・名前:ジークフリート
・種族:蒼雷竜:幼竜:1齢(性比率・雄9:雌1)
・生命力:163/7955
・魔法力:77/4809
・攻撃力:350
・防御力:222
・素早さ:780
・精神力:312
・スキル:雷魔法レベル2、風魔法レベル1、飛翔レベル1、竜闘気レベル1、人化レベル1
・天恵:直感
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なんと僕を助けてくれた美少年の正体は、幼竜へ成長したジークだった!
わーっ、びっくり、言われるまでぜんぜん気が付かなかったー(棒)。
……いや、まあ、なんとなく最初見たときから嫌な予感がヒシヒシしてたんだけどさ。
こいつ本気だよ。本気で体を張って嫁取りに来やがったよ。
僕は痛む頭を押さえながら、続いてソフィアの『鑑定』で教えてもらったジークの各種ステータスやスキルのインフレ具合に、思わず開いた口が塞がらなくなった。
「え、なにこのチートなレベルは!?」
ついこの間まで二桁だったよね、生命力も魔法力も!? なのにいきなり四桁とか、天下一を決める武闘会をすっ飛ばして、宇宙人襲来に備えて特訓した後みたいじゃないか!!
「ん~~、真竜レベルならまだまだ全然子供だけど、1齢になったばかりでこれは結構凄いわね。まあ、生命力が魔法力の倍ある段階で脳筋っぽいけど」
一方、僕ほどには驚愕していないソフィアの歯に衣着せぬ感想を受けて、半人半竜化したジークが得意そうに鼻をひくつかせる。
――いや、褒めてねーから。馬鹿にされてるだけだから!
「んで、なんで半竜半人になってるわけ?」
一目みて感じた疑問を口に出す。……それにしても体が重いなぁ。ストレスが全身に来たかな?
「レアを助けに行くのに、魔法力が足りなかったからだよ!」
快活に答えるジーク。なるほど、毎度の事ながらわからん。
困惑する僕にソフィアが補足してくれた。
「あー、要するにアンタらドラゴンって黙っていても、爪の先から鱗の一枚に至るまで常時ズンドコ魔法力を消費してるのよね。普通に考えてみてもわかるでしょう。雨あられと降り注ぐ攻城兵器にも余裕で耐えて、その気になれば風よりも早く空を飛んで、月まで行けるような生身の生物がいるわきゃない。全部、魔法力でコーティングしているからなのよ」
「ふむふむ。なるほど、それで?」
「だけど角が生えて成長したばっかのこっちの青い子は、まだコントロールが効かないのと、成長でほとんどの魔法力を消費してスッカラカンだったわけ。それでもアンタを救けに行きたいって言って聞かないから、なら人化して行きなさいって教えてあげたのよ」
「……なんで?」
「理由は三つ」そう得意げに言っていちいち指を倒して理由を列挙するソフィア。
「ひとつ。人化すれば竜形態の時ほど魔法力を垂れ流さないから燃費が良くなる。ふたつ。いまのところこの子が使える攻撃魔法はドラゴン・ブレスだけだけど、竜形態で放てるほど魔法力がなかったから、人化してその劣化版の攻撃魔法を使うようにするするため。みっつめがアンタを抱えて素早く動き回るのに適していたから。――どう? ま、今回は慣れなくて半端な人化になったみたいだけど」
「へーっ、意外と考えてるんだね」
僕の忌憚のない正直な感想に、「意外ってどういう意味よ!?」といきり立つソフィアだけど、だんだんと痛みが強くなる頭の痛みに耐えながら、そこで僕はふと気が付いた。
「あれ? そうするともしかして、ジークのさっきの『蒼雷』とかいった魔法って、いまだとそうそう連発できないんじゃ?」
「連発どころか」
「せいぜいもう一発で限界だよ」
あっけらかんと答えるソフィとジーク。いや、待てやこら!
「おいっ。どーすんだよ!」
「「? 何が?」
「大豚はもう二匹いるんだよ! 密造拳銃並みにあと一発しか撃てないんじゃ、一匹余るじゃないか!」
そう怒鳴ると、ふたり揃って「「あ……!」」と間抜けな声をハモらせた。
なんかもう疲れがピークに達してその場に突っ伏したくなったその時、森の木々を体当たりで弾き飛ばしながら、墜落した赤鬣と片牙の豚が猛り狂ってこっちへ一直線に向かってくるのが見えた。
 




