[01-18] 人化
短くてすみません、、、
背中の翼をバタバタばたつかせる僕。
広げたところで片翼50cm位しかない翼で揚力を得ることはできないのはわかっている。無駄な抵抗だって事は重々承知している。
だけどこれで1秒でも2秒でも時間が稼げたらなら、たとえタッチの差であっても気付いた竜宮城の成竜たちに助けて貰えるかもしれない。
さっきの輝きと爆発はきっと僕のSOSを察知した竜宮城からの合図だろう。
ならどんだけ無理だと思っていても、悪あがきをするんだ!
と、必死に翼を動かしていたら、なぜか急に頭が痛くなって全身が鉛のように重くなって硬直した。
「――え……?」
ナニコレと思う間もなく、失速して頭から地面へと錐揉みして落ちる。
泡を食って立て直そうとするけど、どう考えても無理! あ、これは死んだわ。頭を熟柿のように潰して。
「短い一生だったなぁ……」
その割りに慌しくも駆け足の竜生だった。
THE END
作者の次回作をご期待ください。
そう覚悟を決めたけど、僕の場合は予想をさらに上回る不運が付いて回るのがデフォみたいだ。
「ゴフゴフゴフッ♪(いらっしゃ~~い♪)」
最初に脱落した傷豚が、元気一杯に大口を開けて元妖精の泉と花畑があった、僕の落下地点に待ち構えている。
そのままワンコそばみたいに喰う気満々だ。
「ここまで不幸か、僕の人生……」
せめて華々しく散るならともかく魔物に喰われて、ンコになるさだめとは。
「こんならまだジークなり、他の仔竜の嫁になってたほうがマシだーーっ!!」
地面というか、待機していた傷豚の口に吸い込まれる寸前、絶叫した――その声に応えるかのように、
「え、ホントに!? やったーっ!」
明るい声変わり前のボーイソプラノが耳に届いた。
そして、一陣の疾風のようにどこからともなく現れた細身の影が、僕を片手で掴んで小脇に抱えるのと同時に、もう片方の手を阿呆みたいに大口を開けている傷豚へと向ける。
「蒼雷!」
気迫を込めた声とともに、掌から青いプラズマ――球雷って奴かな?――が放たれ、躱す間もなく傷豚の口内に吸い込まれると、
「ゴアアアアアアアアアア!!!」
轟音とともに内部から炸裂して、一撃で傷豚を丸焼きの丸焦げにしたのだった。
呆気なく斃されてその場に仰臥する傷豚。
美味しそうな焼肉の匂いにちょっと唾を飲み込みながら、僕はかわるがわる大豚の丸焼きと、やや乱暴な手つきで僕を抱え込む“彼”を見比べる。
11~12歳くらいだろうか。青い髪に金色の瞳をしたやたら整った顔立ちの子供だ。
間違いなく美少年なのに、どこかやんちゃっぽい雰囲気がある。だけど特筆すべきはそこではなくて、耳の生え際あたりから後方へ生えている二本の短い角と、尾てい骨のところから伸びたトカゲか蛇のような尻尾、肩甲骨の辺りからついている翼といったドラゴンの特徴だ。
竜人族でもない、人族でもない、まして真竜族でもない、なんというか全部を足して割ったようなキメラみたいに見える。
困惑する僕に向かって、少年はにっこりと邪気のない笑い顔を向けた。
……はて? この笑顔、このタイミングはどこか覚えがるような?
「大丈夫、レア?」
そしてどこかで聞いたような……ただオクターブがずいぶんと違う声を前に、僕は首を傾げまくる。
浮力と揚力の間違いのご指摘があったので訂正しました。
 




