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[01-16] 蛹化

 今夜はパーティだぜ☆!! のノリでハッチャケている三匹の豚鬼(オーク)から視線を転じて見れば……。


 ドサクサ紛れに倒れた木の棒――サイズ的には丸太にやたら丈夫な蔓で括り付けられていたも同然――から、

「光魔術初級甲三式――構成――魔術回路起動――魔法力伝達――ロード0.5秒――具象化――光刃(ライト・エッジ)――よし、成功っ」

 魔術を使って脱出に成功した天翅族の幼天使であるソフィアは、大きく伸びをして不自然な体勢で硬くなった体の節々をグルグル回して自由を満喫するのだった。


「はあ、連中の注意があっちに向いてくれて助かったわ」


 見上げてみれば、傍らにあった『妖精の泉』が勝ち割られて、吹き上がった水柱が噴水か花火のように夜空に上昇し、さらに目を眇めて見れば、その天辺には鉑輝竜(プラチナドラゴン)の幼生レアがいる。


 どこまでもどこまでも夜空に向かって舞い上がるレアと、それを追って三段跳びに大ジャンプを敢行する三匹の豚鬼(オーク)たち。

 伸ばした手で最初にレアと栄光を掴み取るのは誰だろうか?


 仰け反るようにして見上げながらソフィアは他人事としてそう思った。


「……ま、伝説とか伝聞と違って、あの鉑輝竜(レア)は邪悪でもなければ、話の通じない相手でもなかったけど、好むと好まざるとに関わらずドンドンと厄介事を引き寄せるのは確かな感じよね」


 いわば台風の目よね。悪い奴じゃないんだけど、騒ぎの元凶になっているのは確かだわ。


「――ま、短い付き合いだったけど、結構アンタみたいな子は好きだったわよ。いちおうは命の恩人だし」


 喰われたらお祈りのひとつもあげてあげよう。そう心に誓うソフィアであった。


「ふにゅにゅにゅにゅ……」


 それはそれとして、この場にいると巻き添えで死ねるので、さっさと退避しようとしたところ、同じように縛られていた蒼雷竜(ブルードラゴン)の仔竜が、ぐったりと息も絶え絶えで倒れているのが目に入った。


「ちょ、ちょっと、大丈夫なのアンタ!? 豚鬼(オーク)にやられたの?」


 慌てて駆け寄って、再度、“光刃(ライト・エッジ)”を具現化させて、縛られたままの仔竜の蔓を切る。

 ドラゴンと天使。天敵同士と自分で公言するわりに、困っているとなると後先考えずに行動してしまう。このあたりの人のよさが貧乏くじを引いている原因なのだが、幸か不幸か当人には自覚はなかった。


「怪我してるようなら見せんしゃい。回復した残りの魔法力はせいぜい治癒(ヒール)2~3回程度だけど、やらないよりはマシでしょう」


 うんうん苦しげに呻っている仔竜の周囲を飛び回って、原因を探すのだが目立った傷は見当たらない。


「アンタ、まさか仮病じゃないでしょうね?」

「……ちゃうよ……ふにゅ」


 疑いの眼に対して、弱弱しく答える仔竜――ジーク。それから、急な頭痛にでも襲われたかのように、頭を抱えて体を丸める。


「……ううう、なんか変……」

「どーいう風に変なの?」

「……ボクじゃないボクが中から……うううう……」


 苦しげに頭を押さえるジークの急な発病を前に、腕を組んで原因を思案していたソフィアだが、「あっ!」と不意に合点がいった顔で目を見張った。


「わかったわ! これって子供の時に一度は罹患する病気――厨二病の発作ね!!」


 いわゆる『俺の中の闇が疼くぜ!』状態だろう。

 胸のつかえが降りた表情で、蹲って震えるジークから視線を外すソフィア。


「んなわけあるか、阿呆ーーーーーーーーーーーーッ!!!」


 同時に、打ち上げられたレアが放物線の頂点に上り詰め、たまたま偶然だろうがソフィアの耳にも聞こえるような大声で憤りの声を張り上げたのだった。

当たらずとも遠からずの状態です。

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