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[01-15] エターナルフォース

「ここは私が」

「いえいえ私が」

「今日のところは私が」


 と、会計レジ前で繰り広げられる謙譲の美徳。異世界では珍しくない光景だけれど、こっちの世界の魔物にはそうした一歩引いた思いやりという概念は欠片もなかった。


「ブオーッ! ブフォー!(こんな一口大のドラゴンなんざ、最初に喰ったやつが丸齧りだろうが! だから俺が食う!)」

「ゴオオッ!(俺だっつてるだろー!)」

「グォオオーーッ!(全部、兄貴である俺のモンだ!)」


 咆哮に合わせて、しんと透き通った夜の空気を切り刻み、灼熱の炎で焦がす勢いで三者三様の白刃が翻り、目まぐるしく位置と角度を変えて火花を散らす。


 仲間割れだ。

 いや、殺し合いだ! けっこうけだらけ。

 理想としては共倒れしてくれるのがベスト!――なんだけど、なんでか縛られている僕らを中心にして、巨大な武器と武器が噛み合って、火花がバチバチ全身を襲ってきて――ジークはシャワーでも浴びてるように喜んでるけど――ちょっとでも手元が狂ったら掠っただけでも、僕とかソフィアとかは原形も止めない現代スプラッタアートだよ! 剣呑なんてもんじゃないったらありゃしない。


「なにが起こっているんだ!?」

豚鬼(オーク)語はあんま得意じゃないんだけど、なんかアンタを巡って梃子でも譲らないみたいだから、この場から離れないみたいね。その肉体を巡って逞しい三匹(さんにん)(おとこ)たちが命がけで戦う。魔性の女ね」


 思わず声に出た問い掛けに、刺々しい口調でソフィアが連中の言い争いの内容を通訳してくれた。


「だれが女だーっ! つーか、羨ましいんならいますぐ替われよ、喜んで譲るから!」


 半泣きで絶叫する間にも、スレスレで――絶対、これ手元が滑ったフリをして僕の命を狙っているよね!?――豚たちの刃の先が、縛られている僕の周囲を通り過ぎていく。


「ブオーッ! ブホォーーッ!!(死ねっ、クソ豚っ! 前々から兄貴面してるてめーらを三枚に下ろしたかったんだよ!!)」

「ゴウウウ! ゴフ、ゴフ、ゴフーーーッ!!(それはこっちの台詞だ! 頭カラッポでお山の大将止まりなお前らは、もう邪魔なんだよ!!)」

「ブオオオオオオッ!!(馬鹿が! 兄より優秀な弟なんざ、いやしねえのさ!)」


 どんどんエキサイトして、それに連れてさらに武器を振り回す速度が加速されていく。


「ブオオーーーーッ!!(秘技、脳天一文字斬りッ!!)」


 傷豚の放った閃光のような一撃が、狙い違わず僕を縛り付ける棒の先端に当たり、そのまま一気に僕を両断しようと真一文字に真下へ落ちる。


「ボフッ! ボボボフーッ!(させるかっ! 必殺、烈風正剣突き!)」


 真っ二つにされる寸前、紙一重で片牙の大剣が下から突き上げるようような突きとなって、傷豚の戦斧を弾き飛ばしました。


「た、救かったー!」


 ほっと安堵の声が響いた瞬間。突きの余波が竜巻のようになって、足元の地面ごと僕を縛る棒ごと上空へと吹き飛ばし、衝撃で回転しながら泉のほうへとクルクルと落ちて着水。


「やっぱ駄目かもー!」


 そのまま勢いよく、意外と深い水底まで一気にストライクで沈没しようとしたところで、

「ゴホォォォォォォォォ!!(なんの! 喰らえ究極奥義、エターナルフォース重爆斬!!)」

 僕を追うようにして高々とジャンプした赤鬣豚の重武器が大きくたわめられ、渾身の力で『妖精の泉』へ炸裂。


 豚の体重×武器の速度×腕力×謎パワーの衝撃力が、一撃で満杯の泉を下の地面ごとぶち抜いた。


「あ~~れ~~っ」


 地震と爆発のような轟音とともに、泉は跡形もなく消滅して、飛び散る水とともに僕は再び飛翔して、花火のように夜空へと、高く、高く上っていきました。

必殺技といったらマッ○ルスパークだと思うんですよ。

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