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[00-02] 竜の聖域

毎回1000字程度のはずがなんとなくずるずると長くなりそうな気配が・・・。

 我輩はドラゴンである名前は――


鉑輝竜(プラチナドラゴン)と言えば、希少(レア)中の希少(レア)種であるし、いっそ名前は『レア』でどうじゃ? あとセカンドネームは近日中にお見えになる老師につけていただくことにして」


 僕を抱き上げた誰かさんが、見えてないけど絶対にドヤ顔で周囲を見回してそうのたまった。


「異議なし!」

「良き名です」

「名は体をあらわすとはこのことですわ」


 途端、色めきだって口々に賛成の意を示すその他大勢。


 いやちょっと待てや! そんな安直なネーミングは嫌だーっ! キラキラでもいいからもうちょっと捻れや!!


 必死に抗おうとするけれど、悲しいかな生まれたての身、「みゃあみゃあ!!」と赤ん坊が愚図ついているような泣き声にしかならない。


「おお、喜んでおる喜んでおるわ! いと健やかに育てよ、新しき血族にして貴き仔レアよ。せめてこのひと時だけでも、そなたの人生……いや、竜生に平穏があらんことを切に願わん」


 前半のテンションの高さとはうって変わった、後半のしみじみとした口調に、そこはかとない不安を覚えた僕ですが、生まれたてで体力が完全でないせいか、次の瞬間襲ってきた猛烈な睡魔に抗えずに、スイッチが切れるように、パタリと意識が暗転したのでした。


     ◆ ◇ ◆ ◇


 生まれて七日目の名無しのプラチナドラゴン改めレアです。


 ……ええ、もうこの名前については諦めがつきました。

 所詮、赤ん坊に拒否権はないんや。変な名前なのは僕が悪いんじゃない、全部大人が悪いんや。と、半分やさぐれてますけど。あ、別に名付け親のあのおっさんは実の親でも親類でもなんでもないそうです。


 ぶっちゃけ通りすがりの他人でした。


 それを知った時には、いや、ちょっとまてや! そんな通りすがりのオヤジに赤ん坊――それも超希少種の名前を付けさせるんか!? どーいう種族なんだ、ドラゴンって!? とあまりの理不尽さに憤慨して泣き叫び、

「あらあら夜鳴きかしら? こういう子は強くなるのよね~」

 と、乳母役の竜人族の巫女さんたちを困らせたり、おしめを替えてもらったりしたのもいまではいい思い出です。


 ともあれ、そうしたもろもろの疑問も、三日目に目が開くようになり、聴覚に加えて視覚情報も得られるようになったこの間にかなり解消されてきてます。


 まず現在僕がいるのは『竜の聖域』とか『竜宮城』とか呼ばれている、歴代の力のあるドラゴンによって強力な結界が張られた人跡未踏の深山幽谷に造られた場所でした。


 白い大理石のような石を綺麗に積み上げた建物は、壮麗かつ無意味に巨大ですけど、これはドラゴン形態に戻った時でも普通に歩けるように顧慮しているからでしょう。


 ちなみにここにいるドラゴンは全員、普段は動きやすいように人間形態か竜人形態に術で化けているので、ぱっと見はドラゴンかそれ以外なのか見分けがつきません。一度だけ、50~60メートルはある本来のドラゴン形態でのしのし歩いている関係者がいましたけれど、竜人族の巫女さんたちに滅茶苦茶に怒られていました。


 その際に、物珍しげに覗き込まれた僕が間近に見た成竜の迫力に、ちょっと漏らしておしめを替えてもらったのもいまではいい思い出です。……ええ、それはもう遠い過去の忘れた思い出です。生後一週間だけどさ。


 さて、その『竜宮城』という城なんだか、宮殿なんだかよくわからない場所に、なんで僕がいるのかと言えば、別に僕がドラゴンの王族だとか貴族だからとか、そーいうドラマのあるバックボーンとかは一切なく(そもそもそういう身分制度はない)、ただ単に現在のドラゴンはほとんどが出産・育児をここで集まって行うから居たというだけらしいです。


 つまりぶっちゃけ産院『竜宮城』で生まれたってわけ。

 

 えらく合理的だよなぁ。あんまし数はいないけど、人化しているドラゴンや、下働きみたいなことをしている竜人族も、裸族ではなくてきちんとトーガみたいな服を着ているし――あ、本来のドラゴン形態の時は真ッ()です。こだわりの方向性がわからん――理知的だし。なんというか、こう……ドラゴンに持っていた野生的というか、野放図な王者としての幻想が、知れば知るほどガラガラと音を立てて崩壊する毎日です。


 あと、竜宮城には乙姫様はいませんでした。

竜人族はドラゴンを崇める種族で、直立した2メートル以上のトカゲに角とタテガミが生えている感じです。

魔力、腕力ともに強い種族ですが、ご他聞に漏れず人間の数の暴力に負けて細々と部族ごとに暮らしています。

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