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突然森でこんにちわ。

大幅に書き換えました。

 父さん母さん、森です。


 あ、森といっても森さんではないので。あしからず。


 ハイキングにきた覚えはない。どちらかというともっと物騒なことをしていたと思う。


 色々と回想してみたいが正直混乱していた。油断するとアイツとアイツがアレしていたのを思い出しそうだ。視覚的に凄くショックでした。


 アドレナリンの出すぎでハイになって、キャハ、ウフフ、な感じで幻覚を見ているのでしょうか。


 俺、森で妖精さんを見たんだ。一緒になって全裸で踊ったさ。とかそんな感じの人になってしまったのか。それは残念な人が行き過ぎってもんでしょう。


 怖いね。それは誰かに正気に戻して欲しいね。俺はここにいるよ!


 不思議と身体が動かないね。全然動かないね。痛くて動かないね。


 観念して仰向けに転がって頭上でザワザワうごめく瑞々しい青葉を眺める。あ、結構いい天気だ。ここは緑が多すぎてどうにも薄暗い。枝葉の隙間から、鳥っぽいものが気持ちよさそうに上空を舞っているのが見える。


 あいつ将来大物になるな。ミーが言うんだから間違いないザンス。


 不思議と鳥というより爬虫類ぽかったけど。ふう、これで俺も竜騎士を目指せるな。よかったよかった。


 今の俺なら妖精さんと全裸でフィーバー出来そうだ。


 父さん母さん、ちょっと俺も現実を見たく思います。


 妄想で見たこともない両親に助けを求めてみたが、どうにも正気に戻してくれそうもない。ここはセオリーどおり、どうしてこうなったか思い出そうと思います。



 俺、高村銀は男である。漢には憧れを感じるがハードルが高い。三十路も近づいた男である。


 職業は説明するのも恥ずかしい。黒い全身タイツのような姿でキーキー言いながら、赤い奴とか青い奴に殴られたりするのが仕事だ。まあ他にも黄色とかピンクとか緑とかもいる。緑のキャラ立ちの地味さには俺も思うところはある。


 簡単に言うと戦闘員というやつだ。一応、悪の組織的なやつ。


 施設から売り飛ばされて色々いじくりまわされた。時速百キロ以上で走れるようになった代わりに、自爆装置つけられてへいこら働いている。


 俺の同僚は似たような境遇の奴ばかりだ。奴らと死線を越え、一蓮托生的に赤いのとか、青いのとかに爆破されたりするのが日常です。


 俺くらいの中堅になると、あ、爆発するな、と気づいた瞬間に逃げられる。爆風に煽られながら綺麗に受身を取れば、仲間内での株がちょっと上がる。


 巨大ロボから逃げるのには一家言あるね。俺は。


 最近の悩みは赤い人がすぐに切れることです。俺は彼のことを密かにキレヂさんと呼んでいる。赤いし、すぐに切れるので。


 そう言えば今日もおかんむりになられていた。


 組織の拠点の一つに採石場跡地を利用した実験施設がある。どういうわけか露見し、攻め込まれてしまったのだ。


 幹部が来るまで時間を稼がなければならない。岩肌がむき出しになり、砂利が転がる広々とした更地で迎え撃った。


 待ち伏せをし、五人組に一斉砲火を浴びせた。


 輝く閃光、迸るプラズマ。大気を焼く灼熱の業火。轟音が響き、たちまち砂塵や白煙が立ち昇る。視界が真っ白に覆い尽くされた。


 白を切り裂くように、信じられない速度で近づいた五つの影。


 いつも通り、ほぼ無傷でやつらはやってきた。


 ただし、キレヂさんは大層ご立腹。一応、熱かったらしい。ところどころに焦げ目が見えた。


 「うぜええええええええええ」と吼えていきなり必殺兵器を構える赤い人。


 黒いバズーカにゴテゴテと謎のアタッチメントを取り付けたような不気味なヤツだ。それは人に向けたら駄目なやつだぞ。と、心の中で叱ったことがある。


 実際、文句の一つも言ってやりたいが、頭部のヘルムに仕込まれたボイスチェンジャーが邪魔をする。我々はキーキーとしか叫べないのである。


 理由は知らない。多分雑魚だから差別されてる。


 キーキー叫びながら動揺しまくる俺たち。親鳥を求める雛のごとくである。


 少しは同情して欲しいが、容赦なしに必殺兵器の引き金は引かれた。


 砲身の発射口から、黒というよりは穴が現れた。世界にぽっかりと穴が開いているような非現実。


 正義の味方が使う兵器じゃない。

 

 穴は、砲身から弾丸を超える速度で吐き出された。


 有象無象のごとく、俺たちは散り散りに逃げ惑う。改造された神経の反射で地面を這うように走り、全力で飛び退く。運よく誰も呑み込まなかった穴は岩壁に直撃する。


 爆発もしないで膨張し、ごっそり空間だけを残した。空気すらも消し去って、おかしな風か吹き荒れる。


 盛大に抗議の声が採石場に鳴り響いた。今のは洒落ではすまないと。


 当たらなかったことが不満らしく、赤い人は聞こえよがしに舌打ちを鳴らした。他の四色は必殺兵器が出た時点で観戦モードである。


 阿鼻叫喚の地獄はここからが本番だった。どんな改造を施したのか、二発目がすぐさま発射されたのだ。


 あれって単発式のはずだよな。脳裏にやけに冷静な言葉が浮かんでいた。


 遠くで同僚の誰かが消し飛んだのが見えた。


 三発目。四発目。五発目。多くの仲間は改造された神経と運動能力を持って、ギリギリで避け続ける。 


 続けて砲身がこっちを向いた。近くには最近配属されたばかりの藤井君。俺がフォローを担当している。


 明らかに腰が抜けていた。色々と悟った俺は、反射的に藤井君を全力で蹴り飛ばした。



 そこから先の記憶がございません。記憶がない。だから思い出しようもない。


 全身に痺れを伴う虚脱感。あと何か痛い。具体的には説明できないが、骨と臓腑が仲良く軋んでいるような痛みがある。身体がさっきから動いてくれない。


 戦闘スーツには何故だかダメージはないようだ。気を失っている間に修復機能が働いたのだろう。


 まあ、結論は出た。


 つまり、ここはヘヴンか? もしくはヘル? どっちにしろ緑化運動が盛んらしい。印象を良くするために全力で植樹に協力せぜるを得ない。今の俺なら全力でゴマをするなど容易いことさ。


 妖精さん、俺に盆栽をお与えください。立派な松を育てて見せます。


 ため息を一つ吐いた。肺が痛んだので後悔。


 気を取り直して、何とか右腕を動かす。左腕に装着されている腕輪を操作。ヘルムの内側に各種機能の選択画面が表示され、おもむろにGPS機能を使って現在位置を調べてみた。


 真っ赤な文字でエラー画面。


 さすがあの世だ。衛星なんてあるわけないか。


 おうまいごっど。再び天を仰いだ。

 

 ――目が合いました。


 人が腰掛けられそうなほどの太い枝の上に何かいた。


 憧れのエンジェルか。


 恐怖のデビルか。


 緑化運動なら俺にお任せだぜ!


 声に出してみたいが、どうせ「キーキー」としか叫べない。


 こんな距離まで気づかないなんて、本格的に弱りきっているらしい。臆病なのでその辺敏感なのだ。


 改造済みの俺の視力にかかれば、改めて見るまでもない。


 そいつは天使でも悪魔でもなかった。どうやらここは天国でも地獄でもなさそうだ。聞き覚えのない言葉がそこら中から響いている。


 耳が長い人だ。驚嘆するほど福耳の人は見たことあるが、そういう意味ではない。


 耳長怪人なんて造る酔狂な組織はあるのだろうか?

  

 見目麗しく端整な顔つきをしたそいつは、原始的な弓を構え、矢を引き絞ってこちらに向けていた。


 緑化運動が好きそうなやつらだ。なんかファンタジー。


 身体が動かないので好きにさせることにして、俺は場違いな感想を抱いてそいつを見ていた。あ、盆栽くれれば立派な松に育てて見せます。 

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