05『あと3週間しか無いのに』
パルスは、4歳の時からエロ本を読みふけっていた。
本屋に行って、立ち読みしていたのだ。
しかし、この時別段、自慰をしたいとは思わなかった。
「うわなんだこれ、ホント見るの楽しいなあ」
パルスは、現在6歳。パルスの前にエロ本がガン積みされていく。
「今日は、このぐらいかな、面白いや」
パルスは、歩いて店を出て行く。
その姿を日頃見ている店主は、あることに気づいていた。
「そろそろカ。坊主が天啓を授かるのハ。カカカ。」
「店主さん、あいつは、本当に面白いね。全然、欲を感じないんだ。」
落語の教科書を手に持ち万引きしようとする少年、それはマックスだった。
「金髪の坊主、お前は、もう十分強くなっただろウ。」
「だからこそだよ、これからあいつは、もっと可笑しくなるよ。
俺は、それについていかないと、この『音』がそう言っているんだよ。」
マックスは、息を吐くように欲を吐き出し、指音を鳴らした。
「正直、これくらいの音じゃあ、『自分を守る』ことすら出来ないよ。
もっと、大きな音を出したいんだ。欲に耐えれる器が欲しい。
だから今日、覚悟を決めたんだ、例のアレ、もらってくよ」
「そうカ。ほらヨ。オートマグ3ってという、ただ音がでかいだけの改造エアーガン、ダ。」
そのオートマグ3は、ずっしりとして、マックスは、重たく感じた。
「試し打ちしてもいいか?そのエロ本コーナーに。」
「ああ、そのためニ、お前を呼んだのダ。」
悲しい鈍い音が鳴り響く、音が止まることはなく、ただ消費されたようだった。
「・・・さてざっと、エロ本コーナーに『詠唱』を仕掛けたぜ。
判定は、『消費』だ。これでいいんだろう?」
『詠唱』、それは、ヒストリカに刻まれた記憶である。
普通、世界の記憶に揺さぶりをかけるほどの欲を人間は、持ち合わせていない。
常にマックスは、人間であり、同時にパルスも人間なのだ。
したがって能力者でも超能力者でもない。
だが、刻まれた記憶がそれを許さないだろう。
そのただ、辿るだけ、漂流していく感覚が、マックスの足を傷つけていた。
これは、モモタロウが漂流してジャングルに辿り着いた、童話である。