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第一章:始まりと終わり・其の二

       《 第一章・始まりと終わり・其の二 》



 時間は、深夜二時すぎ。

 眠い目をこすりつつ、月光に照らされた青白い病院の廊下を忍び足で歩く。足音を殺し、見回りの看護師に見つからないように細心の注意を払い、千鶴との待ち合わせ場所――中庭へと、急いだ。

 いつもは土足厳禁の廊下を、靴を履いて歩く。悪いことをしているのに、何故か、少しわくわくしてきて――ふと、学校に通っていた頃を思い出してしまった。

 笑って、つまらないことで怒って、泣いて、笑って。走って、飛んで、友達と一緒に自由に伸び伸びと過ごしていた記憶が蘇り――無性に寂しくなる。

「……あ」

 待ち合わせの中庭に着くなり、車椅子の女性と目が合った。

「――ユーくん、こんばんは。誰にも見つからなかった?」

 相変わらず小さな声で訊く彼女は、降り注ぐ月の光を浴びて、淡く輝いていた。

 深夜、いつもとは違う表情を見せる中庭の影響もあったかもしれない。月光の神秘的な光が必要以上に効果的に働いたせいもあるかもしれない。

 しかし、それだけではない何かが、千鶴を淡く儚く輝かせていた。今にも消えそうな、灯火。線香花火が落ちる直前の、赤い火花。

 それはまさに、死を直前にした生命が放つ、最後の輝き――。

 彼女を一目見た瞬間、由宇は直感した。

(……千鶴さんは、もうすぐ死んじゃうんだ)

 それは、彼女自身、理解しているようだった。もの言いたげな由宇の視線を受けた千鶴は憂いの表情を浮かべ、立ちどまったままの由宇から視線を外した。

「…八九さん、そろそろ行きましょうか」

 八九は、東雲と共に千鶴から少し離れた場所にひっそりと立っていた。木陰に身を隠すようにしていたため、由宇には目を凝らさなければ見えなかったが、きちんと集合していたようだ。

「東雲さん、車椅子を押していただけますか?」

 八九の傍にいた東雲は無言で頷き、一度だけ、冷やかな眼差しを由宇に投げつけて、背を向けた。

「! ま、待てよ、オレも行くってば!」

 由宇が慌てて千鶴の車椅子の隣に並んで歩く。

「……」

 近くで見れば見るほど、彼女の生命力のなさがわかる。色白な肌は、ますます青白く染まり、透明な瞳はどこまでも澄みきっていて、まるで冷たい蝋人形みたいに映る。

(……何だろ、嫌な感じがする…)

 今夜の千鶴は、どこかがおかしい。何かが、足りない。昼間見たときとは、別人のように冷たく映るのは、何故なのか――。

 由宇は、どことなく話しかけづらくて、他の二人の様子をこっそり窺った。

 千鶴の車椅子を無言で押している、東雲という男。彼は、相変わらず冷たい目で正面を見つめている。ただ、その唇は笑みの形を刻んでいて、ぞっとするような悪意を感じた。

 八九はというと、千鶴の車椅子から十歩ほど離れた後方から、鼻歌まじりに軽い足取りでついてきている。長いしっぽみたいな黒髪を揺らしながら歩く様は、遠足に行く子供のよう。それなのに、ときおり前方へ投げかける視線は鋭く獰猛で、凶暴な肉食獣を思わせた。

(……こ、怖くなんかないぞ!)

 月の光が明るければ明るいほど、影が濃く落ちる。ざわざわと不気味に騒ぐ黒い木々や、耳を掠める風の音、自らの足音さえ恐怖を増長させる。

 引き返したいような気分になってきて、思わずぐっと手を握りしめていると、不意に千鶴が口を開いた。

「…ユーくん。私、絶対に神様を見つけてみせるから」

「……え?」

 車椅子の一番近くにいる由宇にだけ聞こえる声で、彼女が言う。

「…あのね、私たちが探してる神様は、見つけた人の願いを叶えてくれるらしいの。だから、私――ユーくんが元気になれるようにってお願いするわ」

「……はあ? 何だよ、それ? そんなの、どうでもいいよ。それより、自分の病気を治してもらえばいいじゃん。千鶴さんが元気になったほうが、オレも嬉しいしさ」

 やや声を大きくする由宇のすぐ背後から、低い笑い声が響いた。

「くくくくっ。子供というのは、本当に無欲ですねえ」

 いつの間にか近くに忍び寄っていた八九の声は、やけに粘っこい。脳味噌を溶解させる毒素でも含んでいるみたいに。

「な、何だよ、馬鹿にしてんのかよ?」

 即座に腕を払って、背後にいるであろう八九を追い払おうとしたのだが、腕には何の感触もなかった。

「――あ、あれ…?」

 八九の声は確かに耳元で聞こえたのに、彼は五メートル以上も後方にいた。腕を払われて逃げたにしては、距離が離れすぎている。

 八九は、不思議そうな顔をしている由宇をにやにやと見つめ、細長い指で前方を指差した。

「…ふふ、ほぉーら、お客様、前方をご覧くださぁーい! 祠への道が開きますよぉー」

 バスガイド気取りで上機嫌に言う八九の瞳は、鋭く研ぎ澄まされている。まるで、極上の獲物を前に、爪を研いでいる獣みたいに。

(――? 何か、寒くなってきたような…)

 別に、気温が低いわけではない。冷たい風が吹いているわけでもない。むしろ、緊張しているせいか、少し暑いくらいだ。

 それなのに、足が、かすかに震えている。

 心なしか、すぐ傍で、巨大な獣が息を潜めているような気配がする。

(………もう、帰ったほうがいいんじゃ…)

 これ以上進むと、とりかえしのつかないことになる。

 そんな予感がして、ぐっと千鶴の車椅子の肘置きをつかむ。すると、安心させるように、細い手が添えられた。

「…大丈夫。ユーくんは、何があっても私が守ってあげるから」

 優しい声。でも、そこには強い決意が込められていて、由宇はぎこちなく頷いた。頷くことしかできなかった。

 今から思えば、ここで引き返すべきだったのだ。

 本能の発する警告に、耳を傾けるべきだった。

 しかし――二人は、進んだ。

 ゆっくりと、着実に。

 進んでいくうち、いつしか、足元を明るく照らしてくれていた月光が消えているのに気づいた。

 わずかに、風が吹く。

 頬を撫でる、刃物のように鋭い風。

 他者の訪れを拒む空気が、周囲を覆い始める。

(…何か、変だ)

 ここは、病院の中庭のはずだ。

 ずっと真っすぐ進んでいるのに、どこにも突き当らないなんておかしい。

 普通なら、五分としないうちに病院の別棟にぶつかるはず。それなのに――十分以上歩いても、景色は変わらない。

 月光すら届かない、深い森。そこを、ひたすら前に進んでいる。

(…森? 森なんてあったっけ?)

 いや、そんなものが病院の中庭にあるはずがない。

「…千鶴さん、ここ、どこ?」

 小声で訊いてみる。情けなくも、不安のせいで声が小さく震える。

 千鶴は、前方を見つめながら、

「――…よくわからないけど…もしかして、神様の庭だったりしてね。だって、病院とは空気が違うもの。ユーくんも感じない? すごく、空気が澄んでるの」

「……空気が違う…?」

 言われてみれば、吸い込んだ空気はいつもと違う気がする。もっとも、それが澄んでいるかどうかはよくわからないが。

「…ねえ、八九さん。もしかして、この先に神様のいる祠があるんですか?」

 前を向いたまま、千鶴が訊く。しかし、返事はない。

 不思議に思って由宇が振り返ると、何故か、そこには誰もいなかった。

「…あれ? おじさんいないよ? あの、東雲って奴も」

 由宇が立ちどまると、千鶴の車椅子も停止する。

「え? いない? でも、さっきまで、車椅子を押してたはずなのに」

 千鶴が肩越しに振り返り、首を傾げる。

「…本当に、誰もいないわね。どうしたのかしら?」

「さあ? っていうか、オレたち、どうすればいいの?」

 八九がいないのなら、祠とやらに用はない。

 このまま引き返してもいいはずだ。

 そう思ったが、千鶴がそれを許さなかった。

 彼女は、言った。

 由宇が帰ろうと言い出す前に。

「…とにかく、先に進みましょう」

 託宣を下すかのような厳かな声が、静かな森のなかに響き渡った。

 その声に応えるように、どこからともなく風が吹く。その柔らかな風に乗って、白い花弁が一片舞った。

 ひらり、と――。

 それがゆっくりと地上に落ちて消えたかと思うと、再び、弱い風が吹く。

 今度は、優しく、二人を包み込むように。

 それに合わせて、一片、また、一片と。

 白い雨粒のように、あるいは、桜の花びらのように、無数の花弁が舞いながら散っていく。

 由宇が、前方を見る。

 白い花弁の幕の向こう側。

 暗闇に閉ざされている、森の奥深く。そこに何があるのか、誰がいるのか、わからない。だが、目を凝らしてよく見てみると、その深淵なる闇の先に、わずかな光明が見えた。

 それは、針の先ほどの小さな光。

 しかし、目に痛いほどの強い輝きを放っている。

 それこそ、目の前に一等星が降ってきたかのように。

「…あれが、神様?」

 不安の渦のなか、暗闇に輝く、たった一つの確かな輝き。周囲の黒に呑まれることなく、清純な光を放つ、絶対的な存在。

 それを感じた瞬間、由宇の足は自然と前へと動き始めた。

 千鶴もまた、進む。押してくれる人がいないはずなのに、導かれるようにして、大きな車輪が音もなく回る。

 それから、一分も歩いていない。

 闇を抜ける瞬間、ぱっと視界が白く発光し、気づけば、よく知っている病院の中庭に出ていた。

「――え? もしかして、戻ってきたのかしら?」

 月明かりのなか、きょろきょろと周囲を見渡す千鶴の傍で、由宇はある異変に気づいた。

「ねえ、千鶴さん。祠って、あれのことじゃないの?」

 由宇の指先が、一点を指し示す。

 視界の先には、高さ三十センチにも満たない、小さな木の社が低い石の台座の上にちょこんと載っていた。

「――あそこに、八九さんの言っていた神様がいるのかしら?」

 ぽつりと、千鶴が呟く。

 忘れられたという表現がピタリと嵌まるくらいに、その祠は無残な姿をさらしていた。

 木の祠は、ところどころに穴が開き、周囲の草木の根に侵された台座は、今にも壊れそうだ。

「……確かめてみましょう」

「…う、うん」

 千鶴の声に、由宇がごくりと唾を飲み込んで頷く。

 さく、と草を踏みしめる。

 一歩進むごとに、何の香りだろうか。甘い花の芳香が二人を包み込む。

 砂糖菓子のような、この甘ったるい匂いは――どこかで嗅いだ覚えがある。

「…クチナシの花の香りだわ」

 千鶴が呟く。

「…クチナシ……?」

 言われて、思い出した。甘ったるい香りを放つ、白い花。それは、この町の至るところに植えられている常緑低木だ。近くを通るたびに匂いがするので、一度、母親に訊ねたことがある。

 これは、何の匂いなのか、と。

 すると、母親は小さく笑って答えた。

『これは、クチナシの花よ。とても甘くて優しい香りを放つけれど、その果実は、熟しても口を開くことはないの。まるで、頑なに心を閉ざしているみたいにね。だから、クチナシっていう名前がついたのよ』

 そう言って、白い花を慈しむみたいに微笑む母親の姿が思い浮かんだ。

 千鶴も、何かしらの思い出があるのか、白い花の姿を目で探している。

「…どこから匂ってくるんだろう?」

 くんくんと、犬のように鼻を鳴らしながら、周辺を捜索してみる。

 捜索の結果、どうやら、香りは祠のなかから漂っているらしいことがわかった。

「…祠のなかってことは、クチナシの花が忘れられた神様ってことなのかしら?」

 千鶴が言って、由宇が首を傾げる。

「花の神様なんて、聞いたことないけど」

「そうよねえ。私もないわ」

 二人は顔を一度見合わせてから、祠を見やった。

 木製の扉は一部壊れていて、開いたが最後、祠ごと崩壊してしまいそうだ。

 覗き込んで内部を確認しようにも、今は夜で、月明かりだけでは覗き見ることは不可能。

 そこで、何か閃いたらしい千鶴が小さく手を打った。

「そうだわ! お祈りしてみたらどうかしら。神様がいれば、きっと何かしらの反応があるはずよ」

「――でも、お祈りって、どうやればいいの? 初詣のときみたいにすればいいのかな?」

「よくわからないけど、とりあえず、神様がいるなら出て来てくださいってお願いすればいいんじゃないかしら?」

「…そんな、適当な」

 家に閉じこもった友達を呼び出すんじゃあるまいし、そんなことでいるかどうかもわからない神様を呼び出すなんて、荒唐無稽な話だ。

 しかし、千鶴は至って真剣で、手を合わせてうんうんと唸りながら拝み始めた。月光の下、ぶつぶつ呟きながら一心不乱に祈る姿は、悪魔召喚でも行っているのではないかと疑いたくなるような不気味さがあった。これでは、神様どころか、そこらで気持ちよく寝ているであろう小動物や虫たちもうなされそうだ。

「…あ、あのさ、千鶴さん。とりあえず、壊さないように扉を開けてみるっていうのはどうかな?」

 おずおずと切り出した由宇の手を、ちょいちょいと誰かがつついた。

「?」

 草で撫でられたようなくすぐったい感触。由宇がそちらを見やると、そこには見知らぬ少女が立っていた。

「…ん? 誰だ、お前…?」

 由宇の手をつついていたのは、一人の女の子だった。由宇と同じくらいの年頃の少女は、白いおかっぱ頭で、純白の着物を身に纏っていた。その白い袖部分に朱色の斑点が描かれているのが、やけに鮮やかに目に映った。

「…あら、迷子かしら?」

 千鶴が祈るのを中断して、少女の頭を撫でる。

「どうしたの? 貴女、一人? 道に迷っちゃったの?」

 千鶴の心配に、少女は不思議そうにまばたきした。

『…おかしなことを言う娘じゃ。迷子はそちらじゃろうに。ここは、われの庭。小さき神域。人間が迷い込むのは、いつぶりじゃろうか』

「はあ? 何言ってんだ、こいつ?」

 愛らしい容姿に似合わないおかしな口調に、由宇が眉をひそめる。

 千鶴は、少女の言葉をゆっくりと頭のなかで反芻するだけの時間を置いて、訊いた。

「……もしかして、貴女が私たちの探していた神様なの?」

 千鶴の疑問に、少女がちょこんと首を傾ける。

ぬしらが誰を探していたかは知らぬが、いかにも、我はこの地の神じゃ。ただし、見ての通り、神域は綻びかけ、誰の信心もない、神もどきに堕ちつつあるがの。それで、娘。主らは、どうやってあの森を抜けたのじゃ?』

「どうやってって、ねえ?」

 千鶴がこちらを見てきたので、由宇が説明する。

「何か、光が見えたんだ。小さい星みたいな。そこ目指して歩いてたら、ここに着いたんだよ。そんで、お前は、本当に神様なのか? ただのチビスケじゃないか」

 由宇の歯に衣着せぬ言葉を、少女は神様らしく寛容に笑って受け流す。

『ふふっ。なかなか、元気な小僧じゃ。子供はそうでなくてはの。しかし、星が見えたということは、主らの死期は定まっておるということじゃな』

「シキ?」

 よくわからないでいる由宇を気遣うように見やり、千鶴がこっそり教えてくれる。

「…いつ死ぬのかわかってるって意味よ」

「ああ、そういうことか」

 由宇は、二十歳まで生きられるかどうかわからない。千鶴は――おそらく、もうすぐこの世からいなくなる運命。

「けど、それが何だっていうんだよ? お前が本当に神様だっていうなら、オレたちの病気を治すくらい簡単なんだろ? だったら、いつ死ぬかなんて、関係ないじゃん」

 それを聞いた少女は、細めの眉をギュッと寄せた。

『――死とは、即ち、世の理じゃからの。それを曲げて延命するには、相応の犠牲が必要となる。第一、それは、神にとっては忌むべき行為。主らでいうところの、倫理に反した人体実験、というところじゃろうか。たとえ成功したとしても、奇跡とは呼べぬ』

「…つまり、相応の犠牲があれば、ユーくんは助かるってことね?」

 千鶴が訊く前に、由宇が強引に割って入った。

「難しい話はいいから、早く千鶴さんの病気を治してよ。そのために、ここまで来たんだからさ」

 由宇の言葉に、千鶴が力なく微笑んだ。

「…私は、いいのよ。未来なんて、私には必要ないもの」

「そんなことない! 元気になったら、いっぱいいろんなことができるようになって、毎日が楽しくなるんだよ!」

「…そうね。でも、いいのよ。私が生きていれば、東雲さんに迷惑がかかるし、それに……八九さんに言われたもの。私は、もうすぐ死ぬんだって」

 そのセリフに、おかっぱ頭の少女の目つきが変わる。

『――ヤク、じゃと?』

 先ほどまでの穏やかな空気はどこへやら、少女の瞳に強い警戒の色が浮かぶ。

『ヤクとは、あのヤクのことではあるまいな?』

 少女に詰め寄られた由宇は、気迫に負けて一歩後退した。

「よ、よくわかんないけど、とにかく胡散くさいおじさんだよ。自分は神様だとか言って、祠を探してるって言ってた。忘れられた神様に用事があるんだって」

『っっ!』

 少女が顔色を変え、蒼白な顔で空を睨む。

「? お、おい、何だよ。急に、そんな怖い顔して」

 少女が何を恐れているのか。由宇にも千鶴にもわからない。ただ、ひどくよくない出来事が起ころうとしていることだけは伝わってきた。

 少女は一つ息を吐いてから、ぐっと由宇の腕をつかんだ。

『――とにかく、逃げるのじゃ、主ら。このままでは、生贄にされてしまうやもしれぬぞ』

「イケニエ?」

 生贄。それは、これまで読んだ本で何度か出会った言葉だ。

 たとえば、村を水害から守る代償として、神様に差し出されて殺された娘の話。

 たとえば、大事な人を助けるために、神だか悪魔だかに自分の生命を捧げた、勇敢な男の話。

 つまりは、誰かを守るために殺される人のこと。

「…って、何でオレらがイケニエになるんだよ? 意味がわからな」

『意味など、わからなくてもよい。とにかく、早くここから出るのじゃ。奴が我の元へ辿り着く前にの』

「…んなこといっても、どこから出ればいいのかわかんないし」

 周囲を見渡しても、森が広がるばかりで出口らしきものはない。

 千鶴と二人、おろおろとしているうちに、事態は悪いほうへと転がり始めていた。

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