第七話
ショピングモールNOAは、多田野駅から大人の足で徒歩5分ほどの国道沿いにある。
大小様々なテナントが10くらい入っている中規模型ショピングモールだ。
大まかに分類すると1Fで食料品や日用品、2Fでは服飾や生活雑貨を扱っている。
「先生も、普段からそういうキチンとした格好してれば、もっとモテるはずなんだけどなあ・・・。」
車から降りた狩野先生を見てオレはつぶやいた。
「普段からは、イメージできないような格好していれば、万が一、知り合いにあっても人違いだと思ってもらえるだろう。変装みたいなものだよ。それに、毎日、おまえらのような元気のあり余っている小学生を相手にするのに、スーツなんて着ていけるわけないだろう。ものの一日でボロボロになっちまうよ。」
狩野先生は、後部座席に畳んであったスーツの上着とカバンを取り出すと、従業員入口の方へ歩き出した。
「あとは、信用の問題だな。児童防犯自治体の活動は、そんなにおおっぴらにできるものじゃない。大手の警備会社の偉い人でも名前すら聞いたことないって事は結構ある。そんな人たちに積極的に協力してもらうためには、キチンとした身なりじゃないと信用されないからな。ヨレヨレの白衣にボサボサの髪で、子供の未来を守りたいですっていっても説得力ないだろう。」
と言って、オールバックに整えた髪を撫でつけた。
確かに、今の狩野先生をみれば、一流企業の社員や国の省庁の役人と自己紹介されても違和感はない。
「ふーん、透羅の言ってたこともあながち嘘じゃないってことかあ。アイツ、今のオレの格好見たら、また、喚きちらすんだろうなあ。」
Tシャツに黒いアーミーベスト、ハーフパンツにスニーカー。しゃれているとは言い難い自分の格好を見ながらいった。
「太一の場合は、機能性を重視したファッションだからな。それはそれで、カッコいいと思うぞ。特殊部隊みたいで・・・まあ、早乙女がどう思うかは別としてな。」
お客様用駐車場から、建物の裏手に回り込んで従業員入口から店内に入る。
「こんにちは。よろしくお願いします。」
従業員入口にいる受付に声をかけ、警備員控え室に入れてもらう。
「早速ですが、被害が多くでているポイントを教えてもらっていいですか?」
このショピングモールには、何度か来ているため、警備員さん達とも顔見知りだ。細かい挨拶を省略して、狩野先生は訪ねた。
「最近、頻繁に来る小学生の女の子が怪しいんだけど、まだ、証拠をつかめてないんだよ。
2Fで被害でていると思われるポイントは、主にポーチやリボンなどの服飾小物のコーナー。あとテナントで入っている「テディランド」のキャラクターグッズ売り場何だがね。」
警備主任さんの少し疲れ気味の声を聞きながら、狩野先生はは自分で持ってきたノートパソコンを立ち上げる。モニター画面に場面に店内の地図を展開し、答えられたポイントを赤く色分けした。
「モニターの画像があれば、そちらも確認させていただきたいのですがいいですか?」
「ちゃんと、準備できているよ。」
警備主任さんは、モニターを操作し、録画再生の画面に切り替えた。
「3日前、テディランドのレジ付近のカメラ映像だ。時刻は16:30くらい。」
「太一、確認しといてくれ。」
狩野先生は、自分のパソコンにモニター画面を映しだすために、無線ランを取り付けながら言った。
「了解。」
テディランドに取り付けられたカメラの映像は、レジに対して垂直に作られた棚と棚の間の通り道を映している。通路の奥からレジに向けられているカメラからは、レジカウンターで包装紙の整理をしている店員さんの様子も伺えた。
時間的にそれほど混む時間帯ではないんだろう。レジに並ぶ人もいない。画面下側の棚の前に、片手にぬいぐるを持った小柄な女子が映っている。その女の子は、ぬいぐるみを様々な角度から観察しながら、時折、チラチラとレジの方を盗み見ている。レジにいる店員さんの様子を伺っている。
しばらくすると店員さんがお客さんに呼ばれた。商品の説明を求められているようだ。女の子は店員さんが接客に気を取られた一瞬の隙に、肩から提げた持ったトートバックにぬいぐるみを入れて足早にカメラの画面から姿を消した。
「うーん、かなり手慣れているなあ。動きも計画的だし。」
「あとで現場を確認しよう。太一、そこまで手慣れているなら、ある程度の犯行パターンがあるはずだろ。癖を見つけておいてくれ。・・・よし、できた。」
モニターとの同期化が終了したらしく、狩野先生は、ノートPCに映るカメラ画像のチャンネルをマウス操作で切り替えながら満足そうに眺めている。




