第三十一話
NOAの出入口は二重扉になっていて、内側の自動ドアと外側の自動ドアの間には縦2メートル横4メートルくらいの長方形のスペースがある。
警備員さん達は、外側の自動ドアの前で待機している。取り決めでは、ターゲットが外側の扉をくぐるまでは、犯行は成立しない。
しかし、明らかに万引きしていると内側のドアを通過した時点で判断した場合には、警備員さん達も無視することはできない。
NOA内のどの店舗でも、大概の商品には出入口に取り付けられているゲートを通過すると、ブザーがなる防犯タグというものが取り付けられている。
透羅の着ている服も例外ではない。
もし、防犯ゲートが反応したら、警備員さん達は外側の自動ドアを開けて透羅を捕まえにくるだろう。
その前に止めなきゃならない。
Θ出入口を越えるまであと、50センチメートル。
イチかバチか
オレは、床についた左手と両足に渾身の力を足にこめる。
小走りに過ぎ去ろうとしている透羅めがけて、前のめりにジャンプして左肩から体あたりをする。
無理な体勢からのなので、吹っ飛ばすことはできないけどそれで十分だ。
「うっ。」
小さな呻き声をあげて透羅が半歩だけ左側によろける。
その瞬間に、Θ出入口の前に取り付けられた防犯ゲートが点滅して店内にけたたましい音が鳴り響いた。
「ピリリリリリリッ。」
出入口近くにいたお客さん達が驚いてこちらを見ている。
外側の自動ドアから2人の警備員さんが入ってくるのが見える。
透羅は疲れた顔をして両手を下にして突っ立ている。
よし!
オレは、両足を踏ん張り、右腕を思いっきり横一直線に振る。左足を軸にして半円状に振り回した腕をプロレスのラリアットの要領で透羅の腰のあたりにぶつける。
「かはっ。」
透羅はオレの体重ののったタックルを受けて苦しそうな声をあげた。
腰を狙ったつもりだったけど、ズレて腹に入っちゃったかな。まあ、ちょっと痛かったかも知れねえけど、友達をないがしろにした報いだ。我慢しやがれ。
勢いのついたオレの体重を支えきれずに、透羅はそのまま尻から床に崩れ落ちた。
これで何とか保護したことにはしてもらえるだろう。
重なって倒れているオレ達の元に警備員さん達が駆け寄ってくる。
透羅の親父さんもやってくる。
透羅は押し倒されて仰向けになったまま動かない。
チラッと表情をみると上をむいたまま泣いている。
昔もこんな風に声を殺して泣いてたっけか。普段、強がって張りつめてばっかりいるから、緊張の糸が切れた瞬間にこうなるんだろう。
まあ、間に会ってよかった。認めたくはないけどスポーツだって遊びだって実力じゃあ、お前の方がいつだって上だった。それでも勝てる時があったのは、オレの往生際が悪いからだ。諦めの悪い俺に比べてお前はいつも潔い。サッカーでもバスケでも試合終了のホイッスルと同時にいつも動きを止めてたからな。
パターンを読んでるのはお前だけじゃないんだぜ。透羅。
弾む息を整えてオレは言う。
「児童防犯自治体だ。キミの身柄を拘束する。」
腕につけたチェイサーからボイスチェンジャーで変換された機械的なオレの声が流れる。




