第二十三話
「ええっ、おじさんとおばさんが!?どうしてまた・・・。」
近所ということもあり、小さい頃から家に遊びにいっていたので、透羅の両親のことはよく知っている。
たしかによく口喧嘩はしてたけど、なんだかんだで仲のイイ夫婦だったはず。
「半年くらい前に、パパのお勤めしてた会社が潰れちゃってね。パパ、それまで、ずっと会社を潰さないようにって夜遅くまですごく頑張ってたの。家に帰ってこないことも多かったし、お休みも全然なかった。
だから、会社が無くなってすごくショックだったみたい。
ご飯のとき以外は、自分の部屋から全然出てこなかったし、話し掛けてもボーとしててね・・・。
最初のうちは、ママも心配して、しばらくゆっくりさせてあげようって言ってたの。
でも、パパの次のお仕事が全然見つからなくて・・・。ウチ共働きだから、ママはママで働いてるし、お仕事で疲れた後で家のこともしてたから「なんであたしばっかり!」って怒りだしちゃってね。
そしたら、「オレだって今までお前達のために必死に働いてきたんだから、少しくらい休んだっていいいだろう!」ってパパが言い返して・・・。それ以来、顔を合わせれば喧嘩ばっかりしてた。」
透羅が泣きそうな声でいった。
「でも、最近は、2人とも顔を合わせてもあんまり話もしないの。こないだ、ママが自分のお友達に電話してる時に聞いちゃったの。パパと顔を会わせたくないから、しばらく、おばあちゃんの家に帰ろうかな・・・って。パパはパパで家にいたくないからか、昼間はずっとどこかに出かけてるみたいだし・・・。家の中の雰囲気がすごくピリピリしてて、苦しいの。」
「でも、まだ、離婚するって決まったわけじゃないんだろう。」
「そうだけど、もし、本当に2人が離婚しちゃったら、どっちかとはもう会えなくなっちゃうんだよね。
もし、ママがおばあちゃんの家で暮らすって言ったら、転校しなくちゃいけないかもしれないし。そうじゃなくても、今まで通りにはいかなくなっちゃうのかなって思うと不安で仕方ないの。
それが気になって最近、色んなことがどうでも良くなってきたってのはあるかな・・・。」
「投げやりになんなよ。大丈夫だって。
前にもそんなことあったじゃねか。おばさんが怒って家を出て行って、1週間ぐらい旅行にいってたことがさ。今度も少し他のとこ行って落ち着けばなんとかなんじゃねえかな。」
「そうかな・・・今度は、ちょっと違うような気がするんだけど・・・。」
「大丈夫だって、心配すんな。」
オレは、透羅を元気づけたい一心で断言した。実際、どうなるかはわからないのだったら、少しでも前向きに考えられるようにするのが、今のオレにできる最大限のことだからだ。
「うん、そうだね。パパの新しい仕事が決まれば落ち着くかな・・・。ありがと。少し気持ちが楽になった。」
「ああ、もう、変な度胸試しはやめろよ。」
「・・・わかった。太一、今日の話、誰にも言わないでね。もし、パパが会社にいってないことが、近所で変な噂になっちゃたりしたら、ますます、パパとママの雰囲気も悪くなっちゃうし・・・。」
「言わねえよ。おかしなことになりそうな時は、うちのじいちゃんに言えよ。町内のカオ役らしいからさ。まあ、エライのかな?よくわかんねけど。でも、まあ、なんだかんだで結構、商店街の人とかもよくじいちゃんに相談に来てたりするからさ。きっと、なんとかしてくれるよ。」
「この辺の古い家は、ほとんど、太一のおじいちゃんが建てたっていってたもんね。
家が建って人が住んだ後も住み心地はどうか?とか、不都合はないかって聞きに行ってるうちに、おじいさんのトコに色んな相談事が持ち込まれるようになったんでしょう。前におばあちゃんが言ってた。」
「そう、そう、オレのおせっかいなのも、考え方が古いのもじいちゃんゆずりなんだから仕方ねえんだよ、たぶん親父の影響もあるけど。」
「太一のパパもいろんな人を助けてたもんね。」
「ああ、最後の最後までな。」
「困ってるやつがいたら、必ず助けてやれ。」もうこの世にはいない親父の口癖だった。




