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第十九話

「コーチ、ターゲットはブローチを持ってΘ方向に向ってる。フォローお願い。」


「了解。」


この通路はバック売場を挟んで吹き抜け横の通路と並行に走っている.。このまま真っすぐ進んで、つきあたりを左に曲がれば、最初に透羅が曲がってきた十字路に出る。同時にイヤホンから狩野先生の声が響く。


「確認した。今、下りエスカレーターに乗るところだ。 そのまま2のエスカレーターで下に降りてくれ。」


「了解。」


エスカレーター2を降りながら、対面にあるエレベーター1を見ると遠目に透羅が降りてくるのが見える。距離があるので余程意識してみない限り、向こうからオレの事を認識することはできないだろう。


うるさがられない程度に他の乗客の横を急ぎ足で降りる。


あと数秒で透羅も1階に降りてくるはずだ。回り込む余裕はないので吹き抜けのあるセンターコートを横切り、透羅が下りてくる下り口のちょうど反対側の上り口で狩野先生からの連絡を待つ。


右と左、どちらに曲がっても対応できるようにじっと息を整えて待つ間に、チェイサーのボタンを押し、もう一度店内地図を頭に入れる。


「キャッチ、左、α方向だ。」


「了解。」


透羅が下りたエスカレーター1の場所からまっすぐにいくとレジカウンターのある少し広め通路にぶつかる。   


もしかしたら、1階のレジで精算をするつもりなのかもしれない。

そうであって欲しい。


レジ前にはカメラがあるので、モニター室から確認できるはずだ。そちらの確認は、狩野先生に任せてオレは移動を開始する。


透羅が下りたエスカレーター1の場所からα出入口に行くための方法は2通り。1つは、エスカレーター1の脇の通路を、オレが今いる上りエスカレーターの乗り口まで来る方法。もう一つは、レジカウンターのある通路を来る方法。そのどちらも今、オレの目の前にある通路と直角につながっている。

どちらから来てもそこで右に曲がればα出入口にたどりつく。


しばらくその場で待機していると、イヤホンから狩野先生の声が響く。


「ターゲットがレジを通りすぎた。」


気持ちを落ち着けるように、静かに息を吐き出しながら移動する。返事はしないで、チェイサーの通話ボタンを一度だけ押して移動を開始する。


(了解。)


透羅が歩いているレジ前の通路は、エスカレーター脇の通路と並行になっているので棚と棚のあいだから透羅の姿を目視できる。


商品棚の側面に隠れながら進み、レジのある通路の様子を窺う。

2つ商品棚を通過した料理器具と洗濯用品の棚に挟まれた通路の間から透羅が通りすぎるのが見える。

その瞬間、オレはその場にしゃがみこんだ。

すぐそばの棚に透羅が入ってきたからだ。


各種洗剤の棚とたわしやスポンジなどの日用品が置いてある棚に挟まれたその場所は、ついこの間、鷺沼が盗もうとしたカチューシャを置いて行ったところだ。


(偶然じゃあないかもな・・・)


心の中で呟いて、対面の棚に移動し、格子状のスチール棚の段と段の間から様子を伺う。

透羅は、棚の前で腕時計を見ながら、何かタイミングを計っているようだ。


しばらくすると肩から提げたトートバックからアクセサリーを取り出して目の前の棚に置きα出入口の方に走りさっていく。


まるで、以前の、鷺沼の行動を再現するかのように。

嫌な予感のしたオレは、周りを警戒しつつその場に動かずにいると、案の定、イヤホンから狩野先生の声が聞こえてくる。


「キャッチ、そのままの姿勢で待機。レジ通路を通り過ぎる男性を確認してくれ、できれば気づかれなように顔も。質問は後で受け付ける。」


男・・・?女じゃなくて?

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