第一話
「キーンコーン カーーンコーーン」
おなじみのチャイムが鳴って、教室からここぞとばかりに生徒達が飛び出してくる。
さながら、正月の福袋を買い求めて開店と同時に走るおばちゃん達のようだ。
「ちょっと!!もういいでしょ!!返してよ!」
そんな生徒が忙しく行ききする放課後の廊下に、ひときわ甲高い声が響きわたる。
声の主である少女は、顔の左に束ねた髪を走っている馬の尻尾のように振り乱し、細長い手足をバタつかせながら必死に抗議している。
140cmの身長の割に、背が高くに見えるのは、比較的小さめの顔と、体の線が細いモデル体型のためだろう。
「前回見逃してやったろう。今回は、ダメだ。」
断固とした口調でオレは、言い放った。
多々野小学校の5年3組、木屋太一。
この学校の風紀委員として、なんとしてもここはゆずれない。
「ちょっとネットで調べ物してたくらいで大袈裟なのよ。そのドアミニ、パパのなんだから壊さないでよ!」
目の前で喚いている早乙女透羅とは、家が近所で幼馴染。物心つく前からの腐れ縁だ。
「だったら、そんな大事なモン学校に持ってくんじゃねえよ。万が一、なくなったりしたらクラス全員で探さなきゃなんなえじゃねえか。授業に関係のないものは持ち込まない。上級生が守らないと、下級生に示しがつかねえだろ。」
透羅から取り上げたタッチパネル専用タブレット「ドアーズタブレット ミニ(通称ドアミニ)」を手に顔をしかめる。
眉毛を顔の真ん中に寄せて口をへの字に結ぶ必殺の顔だ。
この表情で、何人もの違反者の言い訳を黙らせてきた。
母ちゃんも、「あんたのしかめっ面は、おじいちゃんゆずりね。何一つ人の話を聞き入れないって顔してるわ。」とハンバあきれながらいってたな。
しかし、せっかくのキメ顔も、コイツにだけには効かない。透羅はオレのもっともな意見を見事に聞き流して叫んだ。
「カッッタイ!固すぎるのよ!アンタは!ホントに現代の小学生なの?実は、昭和からタイムスリップしてきたんじゃないの? パソコンもない時代から来たアンタにはわからないでしょうけど、万が一失くしたとしてもドアミニはきちんと設定をしておけば、携帯電話や自宅のパソコンで探すことができるの。ちゃんと設定してあるからご心配なく。」
「それだって、完璧じゃねえだろ。それ以前に持ってこなきゃ失くさねえってことだよ。」
「色々事情があるのよ。それよりも、大体、アンタが風紀委員ってこと自体、説得力がないのよ。そのファッションからして締まりがないんだから。Tシャツの上にバスケットボールシャツ、短パンにバッシュって、ラフすぎるのよ。アンタもネットで人気のファッションでも研究して、もう少しまともな格好したら?」
まるで、自分がの持っている価値観が全て正しいと言わんばかりの強気さ。もはや、ただのイチャモンをつけられている。
「そんなこと今は、関係ねえだろ。別に、服装に関しての細かい決まりはないしいいじゃねえか。この恰好が一番動き易いんだよ。」
そういうと、透羅は、可哀そうなものを見るような目で、一言付け加えた。
「人間見た目の印象も大事なのよ?」




