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第十三話

「そのファッションの勉強会みたいのって、結構、前からやってんの?」


鷺沼が打ち解けてきたので、オレは少し突っ込んだ質問をしてみる。


「うん、ちょうど半年くらい前からかな。始めは、ずっとワタシん家でやってたんだけど、いつもワタシん家じゃ悪いからって、たまに透羅ちゃんの家に行ったり、両方の家が都合が悪いときは、市役所の図書館とかにも行ってたな。あそこNOAノアが近いから帰りにお店によって服みたりして・・・あとは公園とか河原とかかな・・・。」


「河原って、多田野川ただのがわ沿いの?」


意外な答えにオレは思わず聞き返した。多田野川の土手沿いは釣りや草野球や草サッカーで遊んでるのはよく見るけど、ベンチやテーブルがあるわけではないので、女子がファッションを勉強するにはどうなんだろう。自慢のファッションも泥だらけになるんじゃないのかな・・・。

そんな複雑な心境をオレの顔を見て察したのか、鷺沼が付け足すようにしゃべりだした。


「実は、透羅ちゃん、ファッションのこと以外にもワタシの悩みをきいてくれててね。背が小さいのを気にしてるって言ったら、背筋を伸ばして真っすぐ前を見て歩くだけでも違うよってモデル歩きを教えてくれたり、緊張してうまく声がでない時があるっていったら、お腹に力を入れるといいって発声の仕方を教えてくれたの。そういう練習をするには、人が少なくて大声出せる河原とか、平行棒のある公園とかがちょうどよかったんだ。」


鷺沼は顔をさらに赤らめてうつむいている。


「思い切って透羅ちゃんみたいになりたいって言う前のワタシは、すごく自信がなくて、いっつも下向いてた。ワタシ1年生の頃からほとんど身長伸びてないの。だから、よく男子にも5年生の教室に1年がいるぞってからかわれてたし。でも、透羅ちゃんに色々、教えてもらって自分のことをちょっとづづ変えていったら、クラスのみんなから、明るくなったね。可愛くなったね。っていってもらえるようになったの。私にとって透羅ちゃんは、学校の先生よりも大事なことを教えてくれる先生なんだ。すごく感謝してるし、透羅ちゃんのためだったら私・・・なんだってできる。」


熱っぽく語る鷺沼と、クラスメイトの女子にここまで言われる幼馴染に少しとまどいながらも、オレはすかさず探りを入れてみる。


「じゃあ、もし透羅が小学生には買えないようなすごく高いものを欲しがってたら、アイツのために盗んででも手に入れる?」


鷺沼は少し笑顔になってこたえる。


「透羅ちゃんは、そんなことしても喜ばないよ。欲しいものがあれば自分で頑張ってお金を貯めると思う。幼馴染なら知ってるでしょ?」


確かに知っている。

よくも悪くもアイツは自分のルールで生きている。そのルールの中に自分のことは自分でする。他人に迷惑をかけないというのはある。


「もし、アイツがどうしても欲しいものを盗んでも手に入れようしてたらどうする?手伝う?」


オレからの意地の悪い質問に、さっきまでの表情とは一変して固い表情になった。

「なんでそんなこと言うの?透羅ちゃんはそんな悪い子じゃないよ。欲しいものがあっても絶対に盗んだりしないよ。」


少し早足になる鷺沼にオレは、事前に用意していたセリフを言った。


「ごめん、ごめん、そうだな。もしもの話。悪い事を手伝ったりしてもアイツのためにはならないしな。むしろ、間違ったことしてたら、辞めさせてやるのが友達だよな。」


鷺沼の歩くペースが落ち、顔からは血の気がうせて白くなっている。

表情は固いままだ。


「実はオレの友達がさ。こないだ鷺沼がNOAにいるとところを見たらしいんだ。

で、しばらく観察してたら、アクセサリーか何かの棚の前でカバンに商品入れてたんだって。オレは何かの見間違いじゃねえのかって言ったんだけどな。結構、遠くから見たって言ってたし。でも、ソイツは絶対間違いないって言い張ってんだよ。鷺沼と透羅が仲がいいってこともその友達から聞いたんだけどさ。その、さっき話したタブレットの件の後だったしちょっと気になってさ。」


実際に見たのはオレだけど、警戒心をとるために友達ってことにしておく。鷺沼はすっかり足を止めて青ざめた顔でうつむいている。


「今日、話かけたのも鷺沼がどんなヤツなのか知りたかったからなんだ。もし、万が一、鷺沼が捕まっちゃたりしたら、なんで知ってて何もしなかったんだろうって後悔すると思うからさ。

初めて会ったヤツにこんなこと言うなんて、どうかしてるかもしれないけどどうしても気になっちゃってな。スゲーイイ奴だって魔が差すこととか、出来心とかあるしさ。自分じゃどうしょうもないことにだってあると思うんだ。それに対してオレが何かして、どうにかなるもんかはわからないんけど、何かせずにはいられないんだよな。」


鷺沼は、あいかわらず下を向いたままだ。表情が見えないのでオレの話を聞いているのかわからない。反応が見えない不安から、オレはとにかくしゃべり続けた。


「ガラにもなく風紀委員なんかやってるのも、そんな理由なんだよ。友達とか仲間が間違ってることをやってたら、真っ先に止められるように。自分がちゃんとしてないと相手に言っても聞かないからさ。風紀委員になって、自分が違反できないようにしたんだ。

今日、鷺沼と話せてよかったよ。透羅の友達だから万引きするようなヤツじゃないとは思ってたけど・・・。やっぱり、オレの友達の勘違いだったのかもな。」


鷺沼はあいからず青ざめたままだったが、決心したような表情で今まで伏せていた目をこちらに向けて言った。


「透羅ちゃんとやってる度胸をつける訓練でね・・・万引きするフリをするの。お店の商品をバックに入れて出口のギリギリのところで見つからないように商品をおいてくるの。

たぶん、木屋くんのお友達が見たのは度胸つける訓練してる時なんだと思う。透羅ちゃんも私も盗んだりはしてないよ・・・でも、もう止めるね。やっぱり良くないもの。」


そこまで言うと、逃げるように「さよならっ」と言って走り去ってしまった。

新しく出てきた意外な情報にオレはただ茫然ぼうぜんとしてしまった

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