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第十二話

次の日の放課後、オレはターゲットに接触するべく5年3組の教室に向かった。

鷺沼真帆の第一印象は、思ったよりは明るいだった。

透羅から聞いた話からは、教室で独りポツンと座っているイメージだったのだが、今、自分の机の周りを囲む2人の女子生徒と笑いながら話している様子をみるからにはうちとけている。


オカッパ頭(うちの家庭以外ではボブショートと呼ぶらしい。)から見える下がった眉と眼尻は気弱な印象で、控えめに笑う表情は神経質そうだ。薄いピンクのワンピースの襟と袖口にはフリルがついている。派手すぎず地味すぎず、ボブショートの髪型にうまくマッチしている。パッと目を引くことはないが、すれ違えばそのセンスの良さに気になって振り返る。そんな雰囲気がある。研究の成果なのもしれない。透羅が言うほどクラスに馴染めてないワケじゃあないのかな・・・。


鷺沼が一人になるのを見計らって声をかけられるように帰り道を尾行する。

またもやストーカーのような行為をしている自分に対して、これも人助けのためだと心の中で言い訳をする。学校からダイブ離れて知った顔も少なくなった。オレは、離れていた鷺沼との距離を縮めて斜め後ろから声をかける。


「なあ、悪いんだけどちょっといいかな。アンタ5年3組の鷺沼だろ?同じクラスの早乙女のことで聞きたいことがあるんだけど・・・。」


声をかけた途端に鷺沼は、腕を交差させて上半身を小さくのけ反らせた。身構えながら半歩あとずさり、あと数センチでも近づいたら大声をあげそうに青ざめた表情でこちらを見ている。


なんてこった。狩野先生が自信満々に、あまり親しくない女子に声をかけるなら斜め後ろから声をかけろ。そうすれば相手に絶対に警戒されないからって言ってたのに。あてにならないな。

オレは慌てて話を続けた。


「オッ、オレ、木屋太一(きやたいちっていうんだ。5年1組。風紀委員やってんだけど、朝、校門に立ってるの見たことないかな?アンタと同じクラスの透羅とうら・・・いや、早乙女さおとめとは幼馴染でさ。

こないだアイツが学校にタブレット型のパソコンを持ってきててな。校則違反だって先生に取り上げられた時に友達のための大切なコミュニケーションツールだから返せなんて言いやがったんだ。

その友達って誰なんだろう・・・って気になってね。3組のヤツに聞いたら鷺沼さぎぬまのことを教えてくれたんだ。

で、さっき、たまたまアンタを見かけたから、つい、声かけちまったんだ。アイツは昔から何でも大袈裟に言うところがあるから、本当のところどうなんだろうと思ってさ。アンタにちょっと聞いてみようとおもったわけ。」


あまり親しくない女性に本音を言わせたいと思ったら、まず、共通の知り合いの悩み相談から入って、次第に話題を本人のことにすり替えていくと効果的らしい。

これも狩野先生がすごいドヤ顔で言っていた方法だ。一体、先生は、過去のどんな場面でこんなテクニックを磨いたのか気になるところではあったが、話を聞いて万が一にも尊敬できなくなったら困るので触れないでおいた。

今回は、狩野テクニックが効いたのか、鷺沼の表情は、一転して笑顔になり、うれしそうに話しかけてきた。


「あなたが木屋太一きやたいちくんなのね・・ごめんなさい。私、朝、校門をくぐるとき風紀委員に目をつけられないようにずうっと下向いてるからわからなかった。

透羅ちゃん、いっつも木屋くんのこと話してるよ。あの、バカ太一がって。あんまりバカ太一っていうから、はじめそれが苗字なんだと思ってた。バカって珍しい苗字だねって透羅ちゃんに言ったら大笑いされたけど。」


「まったく、アイツは相変わらず言いたい放題だな。・・・。」


「それだけ木屋くんに心を許してるんだと思う。 透羅ちゃん、ああ見えてすごく周りに気をつかうから・・・。」


「そうかぁ?アイツが気ぃ使ってるとこなんて見たことねえけどな・・・。」


「そうだよ。ワタシがクラスの皆とちゃんと話せるようになったのだって透羅ちゃんのおかげだし。」


「ホントに?初めて鷺沼を見た時は、別にフツーに透羅以外のヤツとしゃべってたよ。

透羅から聞いてたイメージと全然違うから、やっぱりオーバーに言ったんだなと思ったんだけど・・・。」


「そうなれたのも、本当に最近の話なの。透羅ちゃんが自分のことみたいにワタシに似合うファッションとか考えてくれて一緒にお洋服を買いに行ってくれたり、自分の通ってる美容室とかに連れってってくれたの。 自分に自信が持てるようになったから、みんなとも自然に話せるようになったの。前までのワタシだったら、こんな風に男の子と話せなかったと思う。きっと、木屋くんに呼び止められた時点で怖くて全力で逃げ出してた。」


鷺沼は興奮で少し顔を赤らめている。クラスの女子が好きなアイドルの話をするときに似てる。コイツ本当に透羅のこと好きなんだな。

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