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新たなる旅立ち

ソフィア「あ、レイ。おかえり~。早かったね」

レイ「ん~そうでもない気がするが」


居間室ではソフィアとエレナがくつろいでいた。


兵士C「お待たせしたところ恐縮なのですが、陛下は今度はソフィア様お一人にお話があると仰られました」


ソフィア「え?私?」

レイ「ソフィアに話か。まぁいい、行ってきたらいい」

エレナ「ああ。私は大丈夫だから行くとよい」

ソフィア「ん~そう?じゃあ行ってくる」


ソフィアは兵士と共に居間室を出た。





エレナ「どうだったレイ?」

レイ「色々と聞かされたさ。詳しいことはアクア山に戻ってみんなに話そうと思う。端的に言えば我が娘エレナを幸せにしてくれ、といったところだ」

エレナ「そうか・・・・・・聞いたのか」

レイ「ここに来るのは辛かったんじゃないのか?言ってくれればいいものを」

エレナ「辛くない、と言ったら嘘になるな。でもレイと少しでも離れ離れになるのは嫌だ。私を連れていってくれると聞いたときは嬉しかったぞ」

レイ「・・・・・・」


もう人間臭い台詞には驚かない。エレナはこういう性格なんだ。


レイ「アストリアを去った理由は国王としての立場が危うくなるのを心配してからだ、と陛下は仰ってたが・・・言っては悪いが俺はそれだけの理由には思えない」

エレナ「そうだな・・・正直なところ私にもはっきりとした理由は分からない。たぶん私の中に宿る魔族の血がそうさせたんだと思う。城での生活に耐えられなくなったんだな」

レイ「魔族の血か・・・・」

エレナ「アストリアを去ってしばらく放浪した果てにアクア山にたどり着いた。そこの頭に出くわしていきなり勝負を挑まれた。当時の頭はロレンスだったな」

レイ「ロレンスというと全身鎧の奴だな。・・・あいつが元頭なのか。意外だ」

エレナ「戦ってはみたものの私の攻撃が全く通じなくてな。こっちは二太刀は食らったか。だんだん意識が朦朧としてもう死を覚悟したんだが、突然あいつは負けたと言い出した。頭を譲ると言い出してそれから私が頭になった」

レイ「攻撃が通じなかった?その時のエレナは魔術は弱かったのか?」

エレナ「いや今と大して変わらん。言い訳がましいが魔術なんて突然強くなるものでもないだろ」


ロレンスは一体何者なんだ・・・・・・。


エレナ「ロレンスが頭だった時はアクア山の魔族も沢山いたんだがな。ほとんどがアクア山を去ってしまった。今や私を含めて四人になってしまった」

レイ「・・・・・・そうか」

エレナ「私の人望のなさが故だ。きっと私の事が気に入らなかったんだろう」

レイ「・・・」

エレナ「・・・・・・駄目だな私は。魔族としてアストリアを出たのにこのザマだ。魔族としても人間としても中途半端な存在だ。自分が嫌になってくる」





魔族としても人間としても中途半端な存在・・・・・・。







俺はエレナを抱き寄せた。



挿絵(By みてみん)






エレナ「なっ、とっ、突然どうした?」


レイ「魔族とか、人間とか、そんな括りはどうだっていいだろ。エレナはエレナだ。それ以上でもそれ以下でもない」

エレナ「・・・・・・レイ」

レイ「今のお前はすごく魅力的だ。俺の妻になんてもったいないぐらいにな。俺が持っていないものをお前は沢山持っている。そんなお前に俺は心底惹かれている」

エレナ「・・・・・・」

レイ「俺だけじゃない。ソフィアやゴンズ、ニキャータやロレンスだってお前を好いているんだ。だから・・・自分に自信を持ってくれ」


エレナは両手を俺の背中に回し、身を寄せた。


エレナ「・・・・・・ありがとうレイ。心が軽くなったような気がする。今日はレイが初めて抱きしめてくれて励ましてくれた日だ」

レイ「・・・」

エレナ「約束してくれ。いつまでも一緒だぞ」

レイ「ああ、約束する」








しばらくしたあとソフィアが兵士に連れられて居間室に入ってきた。


ソフィア「お待たせ~結構待った?」

レイ「待たせ過ぎだ。もう2時間は経つぞ?」

ソフィア「え~ほんとに?・・・・・・ほんとだ。ちょっと王様との思い出話してたら長くなっちゃって」

レイ「思い出話に華が咲くほどお前は陛下と懇親だったのか?」

ソフィア「え~酷いなぁ。王様とは家族ぐるみの仲だよ~」

レイ「ふ~んそうか・・・・・・お前なんだか顔色が悪いぞ?」

ソフィア「え~そんなことないよ~。ほら、ソフィアちゃんはいっつも元気元気!元気一番~。えへへ」



・・・なにか隠しているな。さっき陛下に言われたことか。

こいつは何か隠し事があると右唇が引き攣る癖がある。


これはダイレクトに聞いてもまともに答えそうにないな。バカそうなふりをしてはぐらかされるだけだ。

まぁいい、あとでじっくり探ってやる。



兵士C「エレナ様。会えるなら会いたい、と陛下が仰せです」

エレナ「・・・・今は無理だ。時が来たらいずれ会おうと思う。今まで私を育ててくれてありがとう。今でも貴方を愛していると伝えてくれ。・・・・あと今まで世話になったなレミリア。お前のことは一生忘れない」

兵士C(レミリア)「はい。私も貴方と共に居れた事を誇りに思います」


そう言って兵士は居間室を去った。


ソフィア「キャ~、エレナに愛してるなんて言われたらもうメロメロでドキドキでクラクラだよね~レイ?」

レイ「鬱陶しい」

エレナ「さて、私達も戻ろうか、アクア山へ」



城門を出て、街へ続く一本道を歩く。

ふとアストリア城を振り返った。


レイ「(もうこの地に足を踏み入れることはない。そんな予感がする。改めて見ると威圧すら感じる偉大な城だ。俺もこのような城を一世一代で築けるだろうか・・・。いややってやるさ)」



脱壁許可書を門番に渡し、アストリア平原を歩き出した。






レイ「ソフィア。ひとつ言ってもいいか」

ソフィア「ん~どうしたの?」

レイ「よくも俺をはめてくれたな」

ソフィア「え~なんのこと?」

レイ「陛下とグルになって俺を魔王に仕立て上げたってことだ」

ソフィア「えええ~そんなことしないよ。それじゃまるで悪党じゃん」

レイ「お前ならやりかねん」

ソフィア「もうひどいよレイ~。私だってこ~なるなんて分からなかったもん」

レイ「まったく。さっきの陛下との話も俺をハメるための作戦を長々とやってたんだろ?」

ソフィア「ちょっと~レイったら性格曲がりすぎだよぉ~。王様とは積もる話が沢山あったんだって~。妹のカリンが魔術学校に入った事とか飼い犬のマコに子犬ができた事とか執事のロニシスがスキューバダイビング始めた事とか」

レイ「口から出任せ臭がぷんぷんするわ。それに執事の名前はロニシスではなくてロシニスだ」

ソフィア「う~本当だって~。王様ってば聴き手上手で話が上手いから次から次へと話題が出て収束しないんだよ~。私が話しがってる事をすぐに探り当ててピンポイントに質問してくるから話が尽きないんだよ~。レイも見習ってそ・・」

エレナ「こらこら二人とも。言い争ってると腹が減るぞ。駄弁りあいは帰って飯を食ってからでいいじゃないか」

ソフィア「そうだよレイ。反省しなさい反省」

レイ「・・・はいはい分かりました反省反省」


そう言って俺たちは再び歩き出す。






どうやらとても言えないヤバい事を陛下に言われたらしい。

俺を魔王にするといったしょーもないレベルではなさそうだ。


隠し事を必死で隠そうとするとすぐに焦って饒舌になりボロを出すのだが、今回は今までにないほどの動揺さだ。なかなか手強い。(カリンとイカダを作って、街を抜け出そうとしてたのを隠してたときはすぐにボロを出したのだが。あのときは正直笑えた)

ここは一旦放置するしかないか。


アクア山を登り、ようやく魔王城にたどり着いた。もう日が落ちかけた頃だったか。

留守番の三人に迎えられ、俺は陛下とのやり取りを皆に説明した。



ゴンズ「へぇ~世界の真理を探す旅っすか。随分と抽象的っすねぇ。考えたこともない」

ニキャータ「それにしても王様は回りくどい事しちゃってくれますねぇ」

レイ「色々な思惑があってああいう形になったんだろう。今考えると全てが上手く回ってベストな方法だったと思う」

ニキャータ「しっかし王様も性の悪いとこありますね~。この男を婿にすべき、の一言ですぜあの手紙。こっちの反応想像してゲラゲラ笑ってますよ~確信犯っす確信犯」

ロレンス「世界の真理を求め遥かなる大地へ旅立ちでありますな!実に魅力的な話であります。拙者、胸の奥から熱いものが沸き上がってたまらない所存であります」


レイ「王様の命令だからというわけではない。俺のやりたいことだ。明日、ここを発って新天地を目指そうと思う。世界の全てを知り尽くしてやる。ゆくゆくは国の一つや二つ取ってしまいたい。みんな、着いてきてくれるか?」


ニキャータ「面白いっす面白い。どうせだったら俺たちで世界を征服してしまいましょうぜ」

ゴンズ「魔術の謎と魔族の出生の秘密。あっしらのルーツを探る旅っすね。あっしらだけじゃやろうとも思わなかったすねぇ。こいつぁ胸熱っす」

ロレンス「拙者火の中水の中、どこまでもレイ殿にお供致す」

エレナ「私はレイにどこまでも付いていくぞ。レイがやりたいことは私のやりたいことだ」


レイ「よしみんな。世界の果てを目指そうじゃないか」

ソフィア「ううっ、レイもこんなに立派になって。お母ちゃんは嬉しいぞ」

レイ「・・・毎度毎度なんだそりゃ」









~~~~~アストリア城~~~~~



シャガールⅣ世「レイ達は明日旅立つといったところか」

国王は窓の外を覗き、アストリア城下町の明かりを眺めた。


シャガールⅣ世「勇者とは人々に希望を与える存在。レイよ、そなたは真の勇者。人々の、いや世界の希望なのだ。・・・・・・世界はまもなく混沌の時を迎える。私に出来ることは若者の後ろ姿を見守ることだけだ。・・・つくづく己の無力さが嘆かわしい」

国王は椅子に座り、机の上の写真を見つめている。


シャガールⅣ世「お前は今どこで何をして何を考えている。まだ私の夢を背負っているか?世界を混沌から救う指針を見つけることは出来たか?・・・・なぁ我が友アウグトゥス=レオニアウスよ」

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