洞窟探索
ソフィア「ほぇ~綺麗な人だよね~。スタイルもすんごくいいし」
レイ「・・・・まったくお前って奴は」
肌が若干褐色なのと耳がとんがっている以外は人間だ。99パーセント以上は人間だ。
ここまで人間にそっくりな魔族は見たことがない。
本当は人間なんじゃないかと疑ってしまうほどだが雰囲気、オーラからして紛れもなく魔族だ。それは間違いない。
ソフィア「でもこんなところで寝てたら髪とか服とか汚れちゃうよね。いいのかな」
レイ「そりゃあまぁ魔族だから・・・!?」
洞窟の奥の方から魔族が数体現れた。
レイ「(この魔族が呼び出したのか・・・?)」
俺とソフィアはとっさに身構える・・・が、こいつらはそこに横たわっている魔族を狙っている。
レイ「(一体どうなっているんだ。仲間割れか?)」
洞窟の奥から現れた魔族達はじわりじわりと忍び寄る。
???「・・・・まったく鬱陶しい連中だねぇ」
横たわっている魔族が突然言葉を発した、と同時に人差し指を天にかざした。
その刹那、洞窟の奥から現れた魔物たちが業火の炎で全身を包まれた。
しばらくして魔族達は咆哮を伴って炎と共に消滅した。
レイ「(!?・・・・なんていう出力だ。しかも魔導ホールを6つも同時に!?こいつは一体・・・)」
魔導ホールとは魔術によって引き起こされる事象が出現する穴のようなものを言っている。
炎や吹雪などは、どこか別の空間から出現するのだからそこに繋がる穴があるのだろう、という考え方に基づくが目に見える穴が現れるわけではない。
ソフィア「ほぇ~すごい」
俺とソフィアは横たわっている魔族に歩み寄る。
レイ「立てるか?」
???「立てん・・・腹が減りすぎた。食い物のあるところへ連れていけ」
確かにこの魔族は衰弱しているようには見えるが単なる怠け者に見えなくもない。
レイ「・・・まったくしょうがないやつだな」
特に臆することもなくこの魔族を背負って洞窟の外に出る。
ソフィア「ねぇ貴方名前なんていうの?」
???「エレナだ」
ソフィア「エレナさんか~。素敵な名前~」
レイ「エレナか・・・。人間みたいな名前だな。」
エレナ「そうなのか?人間のことはよくわからん。・・・お前たちの名前は?」
ソフィア「私はソフィア=フランコニア。ソフィアって呼んでね」
レイ「レイモンド=リウドルフィングだ。呼び名はレイでいい」
ソフィア「エレナさんなんであんなところで寝てたの?」
エレナ「洞窟の日陰で休んでいたら急に眠くなってきてな。横になったらそのまま寝入ってしまった」
レイ「で、さっきの連中の殺気で目が覚めたと」
エレナ「そんなところだ。私たちは殺気には敏感だからな」
レイ「洞窟の奥から出て来た連中、お前を狙ってきたな。何故だ?」
エレナ「?何故って、あいつらは魔物だぞ?襲ってくるのは当然ではないか。お前たちはここまで来るのに魔物と一匹も戦わなかったのか?」
レイ「あ、ああ。それもそうだな」
魔族というのは想像してたより複雑なようだ。
人間だろうが魔族だろうが見境なく襲いかかってくる連中がいて、まとも(?)な魔族にとってそいつらは厄介者以外の何者でもないようだな。
エレナ「・・・人間っていうのは魔族を見かけたら問答無用で襲いかかってくるみたいだがお前たちは違うのか?」
レイ「お前は俺たちを襲ってこないだろ。だったら戦う必要なんかない」
エレナ「ははは、そうか、そうだな。面白いやつだなお前」
レイ「・・・変なことを聞くが、お前は魔王なのか?」
エレナ「魔王と言われれば魔王。魔王じゃないと言われれば魔王じゃないといえるな」
レイ「なるほど。分かりやすい」
魔王ってのはつまるところそういうもんだ。
ソフィア「エレナさん。私、サンドイッチ持ってきたから分けてあげるね」
エレナ「いや、それには及ばん。近くに実がなる木がある。そこに行ってくれ。あと、私の呼び名はエレナでいい」
エレナが指示した場所へ行く。そこには青いリンゴ状の実がなっている。
ソフィア「あ、サンサシの実だ。エレナはサンサシの実好きなの?」
エレナ「ああ。よくここに食べに来る」
ソフィア「サンサシはちょっと炙ってバターをつけて食べても美味しいんだよ」
エレナ「そうなのか。今度試したいものだな」
俺たちはサンサシの木の下でそのまま食事をすることになった。
木から実をもぎ取ってエレナに手渡す。
エレナはそのままかじりついて咀嚼し始めた。
エレナ「・・・・何をじっーと見ている」
レイ「・・・魔族が食事をする光景は初めて見た。人間と同じように食べるんだな」
エレナ「魔族によりけりだ。食事をしなくても大丈夫な連中もいる。・・・あんまり見つめられていると食べづらい」
レイ「ああ、すまん・・・それ、すぐになくなりそうだな。もう一つ食べるか?」
エレナ「あと三つは欲しいな。ありがとう気遣ってくれて」
レイ「・・・・・・」
表情、仕草、言葉、考え方、全てがいちいち人間っぽい。
魔族ってこんなものなのか?それともこいつだけが特殊なだけかもしれない。
ソフィア「エレナって何歳なの?」
エレナ「ああ、17になるかな」
レイ「17!?・・・・200か300ぐらいだと思ってた」
エレナ「ははは、そんなに生きられないぞ?」
ソフィア「へ~私たちよりも年下なんだ。でも私なんかよりずっと大人っぽいな~」
エレナ「大人っぽいか。もう大人なんだが」
ソフィア「肌もきれいだし、手入れとか気を使ってんの?」
エレナ「特に何も。一日に一回ぐらいは水浴びするぐらいだ」
ソフィア「あーでも私もそんな感じかぁ。元がいいんだねうらやましー」
日がだんだん下がりつつある。
エレナも歩けるぐらいには元気がついたようだ。(初めから歩けたような気がしないでもないが)
エレナ「さて、私はもう行くぞ。ここまで連れてきてくれてありがとうな」
レイ「そうか。気を付けてな。といってもお前なら心配無用かもしれないが」
エレナ「はは、そうか」
ソフィア「またね~エレナ」
エレナは背を向けた後、そのまま森の中へ消えていった。
ソフィア「さ~で洞窟探索を再開しますか!」
レイ「・・・・やっぱりか」
普段は不平を言うとこだが今日のところは素直にわがままを聞いてやる。
さっきまでエレナが横たわっていた洞窟の奥に進んでいく・・・・がすぐに行き止まりになった。
どうやら洞窟は100メートル程度の長さで一本道のようだ。中にはもう魔物はいない。
最奥部には宝箱の残骸のようなものがある
レイ「もう何もないな。誰かに全て持ってかれたようだ」
ソフィア「え~まだ何か残ってるはずだよ~」
左手の平の灯籠魔術の光を頼りに辺りを物色している。(今日初めてこいつが使う魔術だ)
ソフィア「レイ!これ見て!」
洞窟の壁の方を指差す。
レイ「ん・・・・これは・・」