アクア山の麓
ソフィア「で、アクア山に一体何しにいくの?」
・・・・そんなことも知らずについてきたんかーい!
といった突っ込みを、もはやする気にならなくなってから久しい。
レイ「あの山に昔から巣食ってる魔族の集団がいるだろう。その魔王・・頭に王様から渡された書状を渡しに行くんだ。」
ソフィア「へぇ~そうなんだ。でも魔族だから人間の文字が読めるか心配だよね~」
・・・・書状の内容が奴らに理解出来るか出来ないかは問題じゃない。
ここで一番肝心なのは二人とも"殺される"事だ。
地平線まで続く広い美しい平原に不釣合いな異形の生物が散在している。
奴らは何をするのでもなく、さ迷っているかのようにただブラブラしているようだ。
徒党を組むこともできず、また魔王と名乗ることもできない。
魔族として最底辺に位置する連中だ。
レイ「う~む、見かけない顔が結構多くなったな」
大自然の中に魔族が溶け込んだ異様な風景はもう見慣れている。
奴らはあまり遠くには移動しないんで古株はその位置まで覚えてしまったほどだ。
もはや愛着すら感じてしまうぐらいだが、ある程度近づくと機械的に襲ってくるのだからその時はやるしかない。
この辺りの魔族は魔術を使うことが出来ず、ただ力こなしに突進してくるだけだから魔術を使わずとも剣で楽勝だ。
数時間は歩いたか。倒した魔族も数十体ほど。
ソフィアのやつはある程度身構えながらただただ俺の後ろについて来る。
レイ「・・・おい、お前どうして戦わない」
ソフィア「だって魔術子がもったいないじゃん」
レイ「おまえ・・・・一体ここに何しに来たんだ?」
ソフィア「ほら、能ある鷹は爪を隠すっていうじゃん」
突然の強敵に備えて魔術子の消費を押さえておこうと言いたいのか。気に入らん。
魔術も無制限に使えるわけではなく、目に見えない何かのパワーが切れたとき使用不可能になる。
誰が命名したのかは不明だが、一般的にはそのパワーは魔術子と呼ばれている。
魔術子を回復させる方法は魔術子の元と呼ばれている薄緑色の気体を吸い込むか一日経過するのを待つ。
教育すれば人間なら誰でも魔術を使えるようになるが魔術の規模と耐久力には生まれ持った個性に左右されるようである。
アクア山の麓にたどり着いたのは太陽がちょうと頭上に昇ったぐらいか。標高差100メートルぐらいの小さな山だ
。
山自体は木々で覆われているが麓部分は岩場になっている。
ソフィア「あ、洞窟だ!何か凄いアイテムが隠れてるかも。」
と言って突然駆け出した。
レイ「・・・・全く子供のお守りか俺は。」
とりあえずソフィアの後を追った。
ソフィアはそのままの勢いで洞窟に突入した・・・・と思ったらすぐに出て来た。
ソフィア「レイ!あれ見て!」
洞窟の中を指差すがここからでは何も見えない。
ソフィアに引かれて洞窟の中に入るが、突然暗い中に入ったので何も見えない。
だんだん目が慣れて中の様子が分かってきた・・・・・が
魔族が横たわっていた。