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創世の書  作者: 中原 ゆえ
第二章 兵士のお仕事(R15・残酷描写有)
6/21

1

 さっきまで歩いてきた道のりを、慌ててかけ戻るユィノ。

 ちらほらと、走る横目に移るのは平和そのものといった街の人々。

 危機感もなにもなく、ただのんきに歩いていたり、話をしていたり。


(街にはまだ何も起こってないみたいだけど……

非番兵士まで駆り出されるほどの『命令』って、一体何だ……? )


 暑さもまじり、汗だくになりながらも、兵舎へと戻る。

 兵舎の中庭、花も何もない、ただのむき出しの地面があるだけの場所に、ルグと全員ではなかったが、かなりの隊員達が戻ってきていた。

 隊員達から、非番なのに駆り出されるなんてなぁ、とぼそぼそとした話し声が聞こえる。

 つかまらなかった奴ラッキーだよな、なんて声もする。


「おぅ、お前ら悪かったな、非番のところ。見つからねぇ奴もいたけど、この際仕方ない」


 その言葉を多分聞こえているのであろうが無視した形で、ルグが大声を張り上げる。

 それにつられて、周りの空気がたちどころに変わった。

 先生に授業をさぼっているのがばれたかのような、そんな空気に。

 ピンと張ったような糸のような、そんな空気。


「い、一体……『命令』って……なんなんですか……」


 走ってきたせいで、息も切れ切れにユィノが問いかける。

 空気の流れが変わったのを知ってかしらずか、いつも通り発言するユィノ。

 その言葉につられて、他の隊員達もまだ『命令』は聞いていなかったらしく、教えて欲しいとばかりに、全員がルグに目を向けた。


「緊急事態だ。大量の魔物の群れが街道近くまで迫ってきているらしい。

 今いる団員達じゃ手に負えないらしく、非番の隊にまで命令が下った。

 おーっと、これはまだ街には伝えてないから、慌てさせて大混乱が起こっても困る。

 だから、お前ら、装備したらすぐに兵舎の裏の抜け道から外にでるようにな」


 皆の不安を少しでも軽くしようとしてか、すぐそこに散歩に行きますよといった調子で、ルグが命令を下す。

 兵舎の裏には、非常時に兵士をすぐ駆り出せるようにと、勿論見張りの兵士付ではあるが、裏口がついていた。

 一見したところ何もないような石壁なのだが、一箇所が軽い何かで作られているらしく、押し開くようにできていた。


「で、でも……非番の隊まで呼び出しがかかるなんて……そいつら強いんじゃ……」


 だが、そうやってルグが軽い調子で語ったにも関わらず、隊員の不安は掻き消えることがなかった。

 ざわざわとした、喧騒が辺りに広がる。

 そして、まず先にルグに対して口を開いたのは隊の中でも一番弱気な、アイドだった。

 怪我や死への恐怖からか、真っ青な顔色で、恐々といった感じで口を開く。


「そうじゃねぇ。どうにも向こうさんの数が多くて

今いる団員達だけじゃ人員が足りないからの呼び出しだ。

 大丈夫だ、オレたちが担当するのは街に近づいてくる敵の駆除だけだ。

群れ自体は、他の隊がやるらしい。オレらははぐれた奴だけの退治だな」


 だから、心配すんな。と、続けて、ルグは優しく、アイドの肩を叩く。

 それでも、不安そうなアイドではあったが、いくらかは不安はとけたのであろう。

 少し赤みが増した顔で、わかりました、とばかりに頷いた。


(毎度毎度このやり取りかよ、めんどいなぁ)


 ユィノは誰にも気付かれないように、そっとため息を漏らした。

 アイドとルグのやり取りは、毎回出撃命令が出た時、恒例のやり取りだったのであった。

 魔物討伐に怯えるアイドを、なだめるルグ。その後の出撃がいつものやり取り。

 そんなに魔物が怖いものか、とユィノは思うのだが、アイドは違うらしく、いつも怖がっていた。


「さて、じゃあ各自準備を始めてくれ。終わったら、またここに集合だ。

 全員揃ったら、出撃だ」


 ルグがパンパンと手を打ちながら、そう話すと、兵士達は兵舎の武器庫へ散り散りに武器を取りに向かう。

 ユィノもそれにあわせて、兵舎の武器庫へと向かった。

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