表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創世の書  作者: 中原 ゆえ
プロローグ
1/21

プロローグ

少女は詠う。

この世界は一冊の書から生りえる物と。

詠み手の少女は、――――を待っていた。





 暗い世界に浮かぶ一冊の本。


「さぁ、それを手にしてください」


どこからか脳裏に浮かぶ言葉。

この本はなんだろうか?

古びた装丁、黄ばんだページ。

初めて目にするものなのに、前から知っているような感覚。


「その本は貴方であり、私であり、全て」


その声に振り返ると、そこにはおぼろげな少女の姿。

だが、声が終わると姿はふっと、闇へと消えた。


「森も、海も、全てはここから創られました。勿論私も貴方もここから始まった」


今度の声は本の方から。

声がした方を見やると、本は光と共に輪郭を変え、少女となる。

そこにあるのは、淡い透けるような、少女の姿。


(貴方は……誰……?)


 そんな問いかけも脳裏に浮かぶだけで言葉にはならず、声はかすれた音を出すだけ。

 だが、浮かんだだけなのに少女には伝わったようで、笑顔で答えは紡がれた。


「私は守り人。貴方を、本を、世界を守るだけに存在を許された者」


 少女、本、少女。

 その姿は交互に移り変わり、やがて本の姿のまま変わらなくなる。


 答えを聞いてもさっぱりわからなかったが、少女の声がどこか懐かしく、また、昔から側にいてくれたかのような安心感が心をくすぐり、なんとはなしにその本に手を伸ばしてみる。

 すると、本は音もなく光もなく、忽然とその姿を消した。


 気がつけば、いつもの自室の風景。

 細く開けた窓からは、ほのかな月明かりが差込み、風に揺れてカーテンが踊っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ