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エンゲージ

 呆けている俺の手を取ったジーナは、昨日とは逆にその両手で俺の両手を掴む。

 その時大きな胸に腕が挟まれる。

 き、気持ち良い……って、今はそれどころじゃない。


「いやでもどうなるか分からないし……」

「構いません」

「いやでも」

「私をあなたのものにして下さい」

「エンゲーーージ!!」


 え、我慢はどうしたって? 

 倫理的にどうかって?

 知った事か!!

 あんな潤んだ目で見つめられたら誰だって理性なんて吹っ飛ぶわ!

 

 高らかにエンゲージを宣言すると、足元とお互いの胸に魔方陣が浮かび上がる。


 俺の胸元の魔方陣からソウルクリスタルが現れる。

 ただし、今回はソウルクリスタルオープンで呼び出したソウルクリスタルよりも大きくて、色も違う。

 色は半透明で全長は大体三十センチくらい。

 ジーナの胸の魔方陣からも、アイコンと同じピンク色のソウルクリスタルが現れる。


「もしかしてこれが現物のソウルクリスタルか?」

「多分、私も見るのは初めてです」


 クリスタルは俺達の頭上でお互いに引かれ合う様に近付き、触れるか触れないかの距離になると、二つのクリスタルをリング状の魔方陣が包み込む。


「で、この後はどうすれば?」

「はい。契約の意思があるのなら、誓いのキスをします」


 ジーナが目を瞑って顎を軽く上げる。

 もちろんすぐに顔を近付けてキスをする。

 はは、我慢なんて出来ませんよ。

 むしろこのさいフレンチではなくディープに行きましょう。


「んあ、ちゅ、あむあっんはぁ」


 濃厚なキスを終えてお互いに口を離す。

 口元から漏れる涎がエロいです。


「あ、見て下さいご主人様」


 ジーナがクリスタルの方を向いたので、俺も目線をクリスタルに移す。

 クリスタルを囲っていたリングが、狭まり、二つのクリスタルが一つになって光り輝く球体になる。

 そして光の球体は二つに分かれそれぞれの頭上へと戻る。


 頭上に戻った球体がクリスタルの形に戻って輝きが止む。

 あれ? なにかある。

 俺のクリスタルの中に小さなハート型のピンクのクリスタルが一つ増え。

 ジーナの方を見るとクリスタルが菱形からハート型になっており、クリスタルの中央に紋章の様なものが浮かんでいた。


「これは、成功なのか?」

「ソウルクリスタルが変わった事などありませんから多分……あっ」


 ソウルクリスタルが自分の体の中に戻り、魔方陣も消えた。 

 ジーナの胸元にソウルクリスタルに刻まれた紋章と同じものが浮かび上がるが、すぐに消えてしまった。


「一応確認するか。ソウルクリスタルオープン」

 


 名前:ソラLV1 種族:魔人族 性別:男 

 ジョブ:調律師LV1 魔人LV1

 使い魔:ジーナ 

 装備:なし

 アビリティ:【エンゲージ】【ラーニング】【サモン】

 スキル:《全属性耐性LV1》《全状態異状耐性LV1》

     《解析》《身体強化LV1》《ジョブチェンジ》《エーテル吸収》

 魔法:なし

 


 名前:ジーナLV1 種族:悪魔族 性別:女

 ジョブ:悪魔LV1

 主人:ソラ

 装備:なし

 アビリティ:なし

 スキル:《雷属性》《魅了無効》

     《光属性》《全異常耐性LV1》

 魔法:『ビーナス・エール』

    『サンダー・ボール』

    『ヒール』



「おお! ちゃんとジーナの情報も出てる。ジーナも見せてくれ」

「はい。ソウルクリスタルオープン」


 ジーナのクリスタルに触れる。

 すると自分のソウルクリスタルでは見れたのに、

 ジーナのソウルクリスタルでは装備までの情報しか見る事はできなかった。

 

 やっぱり見えな……え?

 ジーナのステータスがはっきりと頭の中に浮かび上がる。

 俺が見たいと思ったからか? でもなんで急に。

 頭の中に解析の文字が浮かぶ。

 もしかして解析スキルのお陰か? もしそうならかなり使えるスキルだ。

 ただ、一応今は見えていないフリをしておこう。


「ジーナにはスキルも見えているのか?」

「はい見えています。しかし変ですね、個人スキルと魔法が追加されています」

「そう言えば俺も最初はスキルは五つだったのに、六つに増えていたな。アビリティも一つ増えてる」


 ついでにジョブも増えているが、これも今は黙っておこう。

 取り敢えず他にも色々聞きておきたいが……。


「出ようかジーナ。顔が真っ赤だぞ」

「そ、そうですね。少しふわふわします」

「俺もだ」


 長湯したせいでのぼせたらしい。

 二人して体を軽くぬるま湯を浴びて室内に戻る。


 室内はいつの間にか綺麗になっていた。

 多分俺達が風呂に行っている間に掃除されたのだろう。

 さすがエルメイルさんの店の従業員、素早い対応である。

 籠に置かれていた大き目のタオルで体を吹きつつ、ジーナに尋ねる。


「あのさジ……」

「それにしても調律者のジョブをお持ちだったなんて。きっとご主人様のお爺様はその事に気付いたから、ある程度人を避けて暮らす事にしたのかもしれませんね。優秀なアビリティやスキルもお持ちのはずですから」


 しまった。タイミングを逃した。

 とてもではないがいきなりスキルやアビリティの事を聞ける状況ではない。

 だ、だがスキルもアビリティも使用方法や種類なんて決まっているはず。

 自力で何とかするか、折を見て聞くとしよう。

 となると今の状況で聞けそうなのは魔法くらいか。


「なあジーナ、俺は魔法を持っていないんだが、魔法を使うには何か条件があるのか?」

「魔法ですか? 確かに属性スキルが無いと魔法が使えませんから、魔人族のご主人様が知らないのも無理ありませんね」


 しゅ、種族が関係あるのか?

 例えば魔人族は魔法を覚えられない種族だとか。

 なんかそれは悲しい。せっかく魔法があるのだから使ってみたい。


「魔法を使用するためには属性スキルを持っている事が必須です」

「ジーナのスキル欄にあった雷や光属性ってやつか?」

「はい。属性スキルを持つことで初めて、該当する属性の魔法を使用することが出来るようになります。属性は全部で七つあります。風、火、土、雷、水、光、闇、の七つです。魔人族以外は必ず何かの属性スキルを固有スキルとして持っていますね」


 固有スキル……多分言葉の意味とジーナの説明から、種族固有のスキルって事だよな。

 そして個人スキルが増えているとも言っていた。

 スキルの項目の上が固有スキル、下が個人スキルって事か。

 となると俺の固有スキルは全属性耐性と全状態異常耐性になるのか。

 ふっ魔法が使えないことが確定したって訳だちくしょう!


「なあジーナ、なんで魔人族だけ属性スキルがないんだ?」

「いえまったく無いわけではありません。ただ稀に属性の効果や耐性を上げるスキルや状態異常耐性だけを持って生まれてくることがあるというだけです」


 なにその無意味なランダム制。属性スキルが無いと意味ないスキルも覚えるって事だろ。

 まあ魔法が使えなくて残念だけど。役に立つスキルで良かったとポジティブに考えよう。


 そしてまた新しい単語か。エーテル、俺の世界の意味なら第五元素なんだが……。

 そんな事を考えながら取り敢えず自分の体は吹き終わったので、ジーナの方へ視線を送る。

 するとジーナがタオルで体を拭いている所だった。

 おお、弾んでますなぁ。

 軽く動くだけでも弾む彼女の胸に、つい視線が行ってしまう。

 いかん、話に集中しないと。 

 慌てて目を逸らして昨日の服を探しながら質問する。


「魔法を使うことでデメリットはあるのか?」

「はい。魔法は体内のエーテルを消費します。使いすぎると最終的に気絶します」


 なるほど、エーテルはゲームで言うMPって意味か。

 

 ベッドの脇の籠に綺麗に畳まれた昨日着ていた服を見つけたのでもう一度着る。

 着衣プレイをぜずに隅に置いといてよかった。

 とてもじゃないが行為の残り香が香る服は勘弁願いたい。


「あ、着替えのお手伝いを致します」

「いや、なんかそれは恥ずかしい」


 着替え手伝って貰うとか、どこの王族ですか。

 ジーナもレオタードを身に付ける。

 パンストは無い。俺がプレイで使って台無しにしたからだ。

 後悔は微塵も無い。ただ少し罪悪感はある。


「そう言えばジーナの悪魔ジョブってアビリティが無いんだな」

「ああ、それは種族ジョブです。魔人族なら魔人、天使族なら天使といった感じで、それぞれの種族を表す最初から得ているジョブです。といっても大抵の場合は次に習得したジョブに強制的に変わりますし、アビリティも覚えないのでジョブとしての価値は無いといってもいいでしょう」


 甘いなジーナ。そういうジョブを高レベルまで上げると、大抵何か新しいジョブを習得できたりするものなのだよ。

 などと考えてしまう辺り、俺の脳は間違いなくゲーム脳である。


 さて、楽しくて有意義な時間はここまでだ。

 着替えが終わってしまった以上、今まで後回しにしていた問題に取り掛かるとしよう。


「もうちょっと色々聞きたいけど、まずは俺達の問題をなんとかしよう」


 そう。勢いとはいえ、俺はジーナを使い魔にしてしまった。

 流石にエルメイルさんには伝えないといけないだろう。

 使い魔になった事でどういう問題が起こるのかも分からない訳だし。


「大丈夫です。もし何かあっても、私が全ての積を負います」

「それはダメ、絶対ダメ、俺の傍を離れるな」

「は、はい。すいません。絶対離れません」


 ジーナが腕を組み寄り添って来る。

 うん。微妙に意味が違うんだが。気持ち良のでよし!


 俺とジーナはそのまま部屋を出て館長室へと向かった。


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